国民年金制度(被保険者・保険料)
国民年金の被保険者
日本に住んでいる20歳以上60歳未満の人は、すべて国民年金に加入しなければならない。(強制加入)国民年金では加入者を第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者の3種類に分けている。
第1号被保険者
20歳以上60歳未満の自営業者とその家族、学生、無職の人が第1号被保険者。国民年金の保険料は自分で納付する。
ワンポイントアドバイス
20歳になれば、自分で手続きを取っていない場合であっても、強制加入ですから、厚生年金の第1号被保険者です。
第2号被保険者
国民年金の加入者のうち、会社員や公務員など厚生年金、共済の加入者を第2号被保険者という。これらの人は、厚生年金や共済の加入者であると同時に、国民年金の被保険者となる。(原則65歳まで)加入する制度からまとめて国民年金に拠出金が支払われるので、厚生年金や共済の保険料以外に保険料を負担する必要はない。
ワンポイントアドバイス
18歳で高校卒業後、会社に就職すれば、18歳でも国民年金の第2号被保険者となります。
第3号被保険者
厚生年金保険の被保険者または共済組合の組合員の被扶養配偶者(事実婚も含む)で20歳以上60歳未満の者。収入130万円未満(60歳以上、障害ある場合は180万円未満)、被保険者の年収の2分の1未満(2分の1以上でも総合的に判断される)。
ワンポイントアドバイス
収入130万円未満とは、これからの収入の見込みです。働き始めたなどで、今後、1年間で130万円を超える見込みとなれば、そのときから第3号被保険者には該当しません。所得税のように、過去の所得で判定するのではありません。
第3号被保険者の特例届出
昭和61年4月から平成17年3月までの間で、第3号被保険者の届出をしなかったことによって、保険料未納期間がある者は、特例によりその未納期間を保険料納付済期間として取り扱う。 平成17年4月以降の期間については、やむをえない理由がある場合のみ。
ワンポイントアドバイス
任意加入被保険者(国民年金の任意加入被保険者)
次に該当する人は、希望すれば国民年金に任意に加入することができる。扱いは第1号被保険者と同じである。
@ 日本国内に住所を有し、20歳以上60歳未満で厚生年金や共済組合の老齢年金が受けられる人
A 20歳以上65歳未満で海外に住んでいる日本人
B 日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の人
C 65歳までに受給資格期間を満たせない人

ワンポイントアドバイス
65歳時点で受給資格がない場合は、65歳以降も受給権が発生するまで(原則25年を満たすまで)、任意加入できます。
国民年金保険料
国民年金保険料は、平成16年法改正によって、平成16年度の保険料を基準に、平成17年度から毎年度ごとに、月額280円をアップした額に改定率をかけた金額。
平成29年度に、16900円×改定率の水準になったところで固定することになっている。
平成28年度の保険料は、月額16,260円。
ワンポイントアドバイス
前納制度(1年や半年など)や口座振替を利用すると、保険料の割引があります。平成26年4月より口座振替に限り2年前納が可能となります。2年前納で約1月分に近い保険料が割引になります)
保険料免除制度/法定免除
下記に該当する場合は、届出により、保険料が全額免除される。
@障害基礎年金または被用者年金の障害年金(1、2級)を受けている場合
A生活保護法による生活扶助を受けているとき

ワンポイントアドバイス
3級の障害厚生年金では該当しません。また、届出が必要ですが、期限はありません。忘れていたとしても、さかのぼって免除期間となります。
保険料免除制度/申請免除
所得が一定以下であるなどの要件に該当する場合は、申請により所得水準に応じて4段階の免除制度がある。(多段階免除制度)
本人と配偶者、世帯主の前年所得で審査される。失業したときは、特例がある。
ワンポイントアドバイス
免除のサイクルは、7月から翌年6月までです。手続きを忘れていた場合、7月に申請した場合のみ、前サイクルにさかのぼって、免除期間となります。
学生納付特例制度
対象となる学生は、大学(大学院)、短大、高等学校、高等専門学校、専修学校および各種学校等に在学する20歳以上の学生。本人の所得のみで審査する。該当期間は、原則として申請年度の4月〜3月で、毎年手続が必要となる。
ワンポイントアドバイス
前年度の手続きを忘れていた場合、4月に申請すると、さかのぼって、前年度も認められます。
納付猶予制度
平成17年4月から、他の年齢層に比べて所得が少ない若年層(20歳代)の者が、将来、年金を受け取ることができなくなることを防止するため、保険料の納付が猶予される若年者納湯猶予制度として実施された。
平成28年7月から、対象者が50歳未満に拡大された。
本人と配偶者の所得のみで所得要件を審査する。
ワンポイントアドバイス
申請免除に該当しない場合に、納付猶予制度を利用すると有利です。


厚生年金保険制度(被保険者・保険料)
適用事業所
厚生年金保険に加入しなければならない事業所は、すべての法人、個人事業の場合は、従業員5人以上(サービス業など一定の業種は除く)
ワンポイントアドバイス
法人であれば、社長ひとりであっても厚生年金保険(健康保険も)に加入しなければなりません。
厚生年金保険料率
厚生年金保険料は、標準報酬月額、標準賞与額に保険料率をかけた金額を、事業主と被保険者が折半する。保険料率は、平成16年の改正により、平成16年10月から(平成17年以降は9月に改定)毎年0.354%ずつ、引きあがられ、平成29年度に18.3%に達した時点で固定することになっている。
ワンポイントアドバイス
平成28年9月からは、一般は18.182%となります。
標準報酬月額
厚生年金や共済年金では、毎月の月給及び賞与を基に保険料や年金額を計算するが、各人の給料体系は様々で、かつ変動するため、報酬月額・賞与額を一定の幅で区分して仮の報酬月額・賞与額を決め、計算の基礎としている。これを標準報酬(標準報酬月額及び標準賞与額)という。 標準報酬月額の対象となる報酬の範囲は、基本給のほか通勤手当、残業手当などの各種手当を加えたもので、臨時に支払われるものや3カ月を超える期間ごとに受ける賞与等は除く。
ワンポイントアドバイス
標準報酬月額は毎年1回見直しを行います(定時決定)。4月、5月、6月に支給された給与(総支給額)でその年の9月から翌年の8月までの標準報酬を決定します。
標準賞与額
実際に支給された賞与額から千円未満を切り捨てた額。厚生年金保険料は150万円が限度となる。(健康保険は年度累計540万円)
ワンポイントアドバイス
賞与が正しく年金事務所に届出されているかどうかは、ねんきん定期便で確認できます。
育児休業期間中の保険料免除
育児休業または育児休業の制度に準ずる措置による休業の開始した日の属する月から、最長で子が3歳に達する日の翌日の属する月の前月までの期間、保険料(健康保険料、厚生年金保険料)が免除され、給付額の算定上は、育児休業取得直前の標準報酬月額で厚生保険料納付が行われたものとして取り扱われる。(事業主負担分、本人負担分、合わせて免除)
ワンポイントアドバイス
平成26年4月1日以降は、産前産後休業中についても保険料免除となりました。
3歳に満たない子を養育する被保険者の標準報酬月額の特例
3歳に満たない子を養育し、勤務時間短縮等の措置を受けながら就業する者について、被保険者より申し出が行われた場合、養育特例期間は給付算定上、従前標準報酬月額で保険料が納付されたものとみなす。
ワンポイントアドバイス
共働きの場合、夫婦ふたりとも特例の申し出ができます。妻が専業主婦であっても、夫も子を養育しているという事実があれば、特例の申し出ができます。
育児休業終了時の月額改定
育児休業終了時の配慮措置(月額改定)育児休業を終了した後、被保険者の報酬が低下した場合、被保険者から申し出があれば、固定的賃金の変動にかかわらず、育児休業等が終了した日の属する月以後3ヶ月間の報酬月額の平均が、従前の等級と1等級でも差が生じた場合は、次回の定時決定までの各月の標準報酬月額として改定される。
ワンポイントアドバイス
育児休業終了月が4月15日であれば、4月、5月、6月に支給された月額給与で改定をします。ただし、そのうち、17日以上出勤(有給も含めての月がない場合は改定できません。
脱退一時金
国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間が6カ月以上ある外国人、または厚生年金の加入期間が6カ月以上ある外国人で、年金を受け取ることができない人が帰国後2年以内に請求を行った場合、保険料を納めた期間または加入期間に応じて、国民年金または厚生年金の脱退一時金が支給される。
ワンポイントアドバイス
住民票の登録を抹消し、日本を出国したあとでないと請求できません。(パスポートで確認します)年金手帳は原本を返却することになりますので、後日の問い合わせ等を考えてコピーを取っておきましょう。
脱退手当金
厚生年金の加入期間が5年以上あり、60歳になっても何の給付も受けられないまま加入をやめた人に対し支給された一時金である。昭和61(1986)年の基礎年金の導入によって、国民年金の保険料を滞納しない限り1カ月の加入でも老齢厚生年金が受けられるようになったため、昭和16(1941)年4月1日以前生まれの人を除いて、脱退手当金制度は廃止された。
ワンポイントアドバイス
脱退手当金を受けた期間については、年金額を受給できません。脱退手当金を返還して年金を受給する制度は厚生年金にはありません(共済年金にはあります)。
船員加算
厚生年金の第三種被保険者である坑内員と船員の平成3年3月31日までの被保険者期間については、特例がある。
昭和61年4月1前の期間:実際の加入期間を3分の4倍する。
昭和61年4月1日から平成3年3月31日までに期間:実際の加入期間を5分の6倍する。
ワンポイントアドバイス
老齢基礎年金額を計算する場合は、坑内員・船員の特例はなく、実際の加入期間で計算します。
旧令共済
旧陸軍、旧海軍、朝鮮総督府の一部の部局(交通局・逓信官署)及び台湾総督府の一部の部局(専売局・営林・交通局逓信・交通局鉄道)において、雇員・傭人・工員などの身分で勤務していた方が加入していた共済組合のことをいう。軍人は原則として加入対象者とならない。 旧令共済組合の加入期間は、一定の条件の下に厚生年金の加入期間として加算することができる。


老齢給付/老齢基礎年金
老齢基礎年金
受給資格期間(原則25年)を満たした人が65歳から受給できる年金。受給資格期間とは、保険料納付済期間、免除期間(納付特例等も含む)、合算対象期間を合計した期間。老齢基礎年金額は毎年4月に見直しされる。平成25年10月以降の満額は778,500円。
ワンポイントアドバイス
老齢基礎年金を満額受給できる人は、20歳から60歳までに保険料納付済期間が40年(480月)ある人です。第3号被保険者期間は保険料納付済期間となります。
合算対象期間
老齢基礎年金などの受給資格期間をみる場合に、期間の計算には入れるが、年金額には反映されない期間のこと。年金額に反映されないため、別名「カラ期間」。合算対象期間には、
@ 昭和61(1986)年3月以前に、国民年金に任意加入できる人が任意加入しなかった期間
A 平成3(1991)年3月以前に、学生であるため国民年金に任意加入しなかった期間
B 昭和36(1961)年4月以降海外に住んでいた期間
などがある。
ワンポイントアドバイス
代表的なものに昭和36年4月から昭和61年3月までの会社員や公務員の配偶者期間(いわゆるサラリーマンの妻期間)があります。配偶者期間の証明は戸籍謄本で行います。
加入可能年数
老齢基礎年金は20歳から60歳になるまでの40年間、すべて保険料を納めた場合に満額の年金額になる。40年に不足する場合は、不足する期間に応じて年金額が減額される。しかし、国民年金制度が発足した昭和36年4月当時、20歳以上の人(昭和16年4月1日以前生まれの人)は、60歳に達するまで40年間加入することができない。これらの人は昭和36年4月から60歳に達するまでの期間について、すべて保険料を納めていれば満額の老齢基礎年金が受けられる。その期間を加入可能年数という。
ワンポイントアドバイス
これから受給年齢に達して年金を受給する人については加入可能年数は関係ありません。
老齢基礎年金の繰上げ受給
希望すれば60歳から受給することができる。ただし、一定の率で支給額が減額され、減額された額は一生続く。減額率は、0.5%×繰上げた月数となる。
ワンポイントアドバイス
65歳から受給するところを60歳0ヵ月の時点に繰上げて受給すると、減額率は、0.5%×30ヵ月=30%となり、本来の7割の年金額となります。 その他、繰上げた場合のデメリットに注意しましょう。
老齢基礎年金の繰下げ受給
65歳から受給せず、66歳以降70歳になるまでの任意の時点で受給することもできる。増額率は、0.7%×繰下げた月数となる。
ワンポイントアドバイス
65歳から受給するところを70歳0ヵ月の時点に繰下げて受給すると、増額率は、0.7%×60ヵ月=42%となります。
振替加算
特別支給の老齢厚生年金や老齢厚生年金に加算される配偶者の加給年金額は、配偶者が65歳になると自分の老齢基礎年金を受けられるため、打ち切られる。65歳以降、加給年金額の代わりに配偶者の老齢基礎年金に加算されるのが振替加算である。
振替加算の額は生年月日に応じて逓減されていき、昭和41(1966)年4月2日以降生まれからゼロになる。
ワンポイントアドバイス
振替加算は老齢基礎年金として支給されます。いったん加算されると、離婚によってなくなりませんが、離婚時の年金分割によって分割を受けた場合、振替加算がつかなくなる場合もあります。
付加年金
国民年金の第1号被保険者を対象に、国民年金の保険料に加えて付加保険料を納めることで受け取る年金を付加年金という。 月400円の付加保険料を納める。受け取れる年金は「200円×付加保険料を納めた月数」で計算された額。なお、付加年金には物価スライドはなく、国民年金基金に加入している人は付加年金に加入できない。
ワンポイントアドバイス
物価の上昇などを考えなければ、老齢基礎年金受給開始後、2年で元が取れるしくみです。国民年金の免除期間中は付加保険料を納付することはできません。
老齢基礎年金の支給開始月
原則、65歳到達した日の属する月の翌月から支給される。
ワンポイントアドバイス
4月2日が誕生日の人は、5月分から、4月1日が誕生日の人は、4月分からとなります。


老齢給付/老齢厚生年金
特別支給の老齢厚生年金
60歳から64歳まで受ける特別支給の老齢厚生年金は定額部分と報酬比例部分からとなる。老齢基礎年金の受給資格期間とみたし、厚生年金加入期間が1年以上あれば、生年月日により60歳から64歳まで支給される。
ワンポイントアドバイス
厚生年金加入期間が1年未満の場合は65歳から老齢厚生年金が支給されます。
定額部分
60歳から64歳まで受ける特別支給の老齢厚生年金の1階部分が定額部分である。ただし、昭和24年4月2日以降に生まれた男性は、定額部分は支給されない。
定額部分 1,626×生年月日による乗率×被保険者期間の月数(上限あり)
ワンポイントアドバイス
定額部分はだんだんと支給されなくなっていき、やがてなくなることになります。
報酬比例部分
報酬比例部分は次の計算式により支給される。
報酬比例部分 @+A
平成15年3月までの期間
平均標準報酬月額×給付乗率×被保険者期間の月数(平成15年3月まで)…@
平成15年4月以降の期間
平均標準報酬額×給付乗率×被保険者期間の月数(平成15年4月以降)…A
ワンポイントアドバイス
この公式は標準報酬月額や標準賞与額が多いほど、また厚生年金保険の加入期間が長いほど年金額が増えるということを示しています。
加給年金額
厚生年金の被保険者期間が20年(中高齢の特例15〜19年)以上ある人が、特別支給の老齢厚生年金を受けられるようになったとき、その人によって生計維持されている65歳未満の配偶者(事実婚も含む)や18歳の年度末までの子がいる場合に加給年金額が加算される。
年金を受ける人が昭和9(1934)年4月2日以後生まれの場合は、配偶者の加給年金額に生年月日に応じて特別加算がある。
ただし、障害厚生年金では、配偶者の特別加算はない。
ワンポイントアドバイス
ここから60歳になるほとんどの男性は、年下の妻がいないと、加給年金額はつきません。加給年金額は配偶者(妻)が65歳にまるまでです。
在職老齢年金
60歳以降在職しながら受ける老齢厚生年金を在職老齢年金といい、賃金と年金額に応じて年金額の一部又は全部が支給停止される。
ワンポイントアドバイス
60歳以降の働き方は、総受取り額で考えてみましょう。年金が一部停止になったとしても、給料が入る方が家計にメリットがあることもあります。
総報酬月額相当額
在職老齢年金は、総報酬月額相当額と年金月額で計算します。
標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額の総額/12
ワンポイントアドバイス
年金支給対象月前1年間の賞与が在職老齢年金に影響するということです。60歳以降の給与がダウンしても、60歳前の賞与が多い場合は、全額支給停止になることもあります。
老齢厚生年金の繰下げ受給
平成19年4月以降に65歳になる人は、希望すれば65歳から受け取る老齢厚生年金を70歳までの5年間に限り、受給開始年齢を繰下げることができる。 65歳以降在職している場合、繰下げ請求の対象となるのは、支給停止されていた額を差し引いた残りの年金額である。
ワンポイントアドバイス
在職老齢年金のしくみで、老齢厚生年金が全額支給停止となっている場合は、繰下げもできません。


離婚時の年金分割
離婚時の年金分割/合意分割
平成19年4月1日以後に離婚等をし、以下の条件に該当したとき、当事者の一方からの請求により、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割することができる制度。原則,離婚等をした日の翌日から起算して2年以内に請求しなければならない。 @ 婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること。 A 当事者双方の合意または裁判手続により按分割合を定めたこと。(合意がまとまらない場合は、当事者の一方の求めにより、裁判所が按分割合を定めることができます。)
ワンポイントアドバイス
年金多い方から少ない方へ分割するという制度ですので、共働きで同じくらいの報酬を得ている夫婦の離婚では分割対象も少なくなります。自営業の夫婦は対象外です。
離婚時の年金分割/3号分割
平成20年5月1日以後に離婚等をし、以下の条件に該当したときに、国民年金の第3号被保険者であった方からの請求により、平成20年4月1日以後の婚姻期間中の3号被保険者期間における相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ、当事者間で分割することができる制度。
婚姻期間中に平成20年4月1日以後の国民年金の第3号被保険者期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があること。
原則,離婚等をした日の翌日から起算して2年以内に請求しなければならない。
ワンポイントアドバイス
「3号分割制度」については、当事者双方の合意は必要ありません。ただし、分割される方が障害厚生年金の受給権者で、この分割請求の対象となる期間を年金額の基礎としている場合は、「3号分割」請求は認められません。
離婚時みなし被保険者期間
第1号改定者(年金を分割する側)から標準報酬や標準賞与を分割された場合、その厚生年金加入期間は、第2号改定者(受け取る側)の厚生年金加入期間であったとみなされる。すなわち、離婚時みなし被保険者期間とは、「実際には厚生年金に加入していないが、離婚分割によって標準報酬の分割を受ける期間」をいう。 しかし、離婚時みなし被保険者期間は、老齢基礎年金の受給資格期間には算入されない。離婚時みなし被保険者を含めて25年以上となっても、自分自身の受給資格期間が原則25年ないと、老齢基礎年金の受給権は発生しない。
ワンポイントアドバイス
自分自身の加入期間等が25年の要件を満たしてはじめて分割した年金を受け取れるということです。
情報提供通知
年金分割に関する情報が記載された通知書。分割対象となる報酬の総額、按分割合の範囲が記載されている。
ワンポイントアドバイス
婚姻期間がわかる戸籍謄本を準備して年金事務所に請求します。按分割合を決定するときに必要です。


障害給付
障害基礎年金
国民年金に加入中に初診日がある病気・けがが原因で障害者になったときに支給される。60歳以上65歳未満で日本に住んでいれば、加入をやめた後の病気・けがによるものでも受けられる。障害の程度に応じて1級と2級があり、1級のほうが障害が重く、年金額は2級の1.25倍。
ワンポイントアドバイス
初診日が国民年金加入中であれば障害基礎年金、厚生年金加入中であれば障害厚生年金も併せて支給と考えてください。ただし、3級に該当する人は、国民年金からは障害給付を受けられません。
初診日
障害の原因となった病気やけがで、はじめて医師または歯科医師を受診した日。
ワンポイントアドバイス
障害年金では初診日が重要です。初診日証明は必要ですので、障害年金を請求する可能性がある場合は、あらかじめ証明を取っておきましょう。あとになると証明を取るのに苦労します。
障害認定日
障害認定日は、原則として初診日から1年6ヵ月を経過した日。傷病が治癒(症状が固定)した場合はその日。
ワンポイントアドバイス
治癒とは、症状が固定し、これ以上療養の効果が期待できない状態をいいます。
保険料納付要件
障害基礎年金の受給要件には保険料納付要件があり、加入期間のうち3分の1以上保険料の滞納がないこと、または直近の1年間に保険料の滞納がないこと(平成38(2026)年4月前に初診日のある傷病による障害の場合)が条件となる。
ワンポイントアドバイス
直近1年間の救済措置は平成38年3月31日までに改正されました。
障害厚生年金
厚生年金に加入している人が、加入中の病気やけがで障害になったとき受けられる。1級・2級の場合は障害基礎年金と障害厚生年金が、さらに程度の軽い障害の場合は、3級の障害厚生年金だけが支給される。障害厚生年金を受けるための保険料納付要件は、、障害基礎年金の保険料納付要件と同じ。
ワンポイントアドバイス
障害厚生年金は3級まであります。3級とは、就労に制限があるような状態です。
障害手当金
厚生年金に加入している間に初診日のある病気・けがが初診日から5年以内に治り、3級の障害よりやや程度の軽い障害が残ったときに支給される一時金。
ワンポイントアドバイス
今度病状が悪くなる可能性があるときは請求しないでおきます。
事後重症
障害年金は初診日から1年6カ月を経過した障害認定日に、障害等級1級、2級(厚生年金は3級)に該当しなければ支給されない。だが、1年6カ月の障害認定日には障害等級に該当せず、その後障害が悪化し、1級、2級(厚生年金は3級)に該当することがある。このような場合、「事後重症による障害年金」を請求できる。
ワンポイントアドバイス
6事後重症による障害年金は、5歳に達する日の前日(誕生日の前々日)までに請求しなければなりません。
20歳前障害
20歳前に初診日がある場合は、20歳に達した日またはその後に障害認定日が到来するときは、その日において障害があれば障害基礎年金が支給される。
ワンポイントアドバイス
子ども時代の病気やケガに対しても障害基礎年金が支給されます。ただし、所得制限があります。
初めて2級
新たな障害と既存の障害とを併せて、障害認定基準2級以上の障害の状態となったときは、障害基礎年金の請求をすることができる。 この制度を「初めて2級以上による障害年金」という。 新たな障害と既存の障害とを併せて、65歳に達する日の前日までに障害認定基準2級以上の障害の状態となっていることが要件である。  したがって、65歳までの症状が軽く、65歳以降に障害認定基準の2級以上の障害の状態になっても請求はできない。
ワンポイントアドバイス
障害年金を請求するにあたっての要件は、既にある障害より後の傷病(基準傷病)でみます。つまり、先発の傷病での初診日要件・保険料納付要件・障害認定日要件は該当していなくてもよいということです。


遺族給付
遺族基礎年金
遺族基礎年金 死亡した者の要件
@ 国民年金の被保険者が死亡したとき。
A 国民年金の被保険者であった者で日本国内に住所を有し、かつ60歳以上65歳未満の者が死亡したとき。
B 老齢基礎年金の受給権が死亡したとき。
C 老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている者が死亡したとき。
※ @とA 保険料納付要件を満たしていること。
受給できる遺族の範囲は、子、子のある妻(子とは18歳年度までに、障害等級1.2級の子は20歳未満。)
生計維持関係が必要。
ワンポイントアドバイス
夫は対象外ですが、平成26年4月1日より、子のある夫も対象となる予定です。(消費税引き上げと連動)
遺族基礎年金額
妻が受取る遺族基礎年金 780,100円+子1人224,500円(3人目から74,800円) 子が受取る遺族基礎年金 子1人780,100円 子2人1,004,600円 3人目から74,800円加算
ワンポイントアドバイス
2人の子どもがいる妻の場合、上の子が18歳の年度末なると、4月以降は子1人分となり、末子が18歳の年度末になると、遺族基礎年金の権利は失権します。(子どもに障害がない場合)
遺族厚生年金の要件
死亡した者の要件
@ 被保険者(失踪の宣告を受けた被保険者であった者であって、行方不明となった当時被保険者であった者を含む。)が、死亡したとき。
A 被保険者であった者が、被保険者の資格を喪失した後に、被保険者であった間に初診日がある傷病により当該初診日から起算して5年を経過する日前に死亡したとき。
B 障害等級の1級又は2級に該当する障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が、死亡したとき。
C 老齢厚生年金の受給権者又は受給権を満たした者が、死亡したとき。
※ @とAは保険料納付要件を満たしていること。
遺族の範囲は、配偶者、子、父母、孫、祖父母(妻以外は年齢要件あり)
ワンポイントアドバイス
遺族厚生年金の受給権が発生する夫は、妻死亡当時55歳以上の夫です(支給は60歳から)
遺族厚生年金額
短期要件
(@+A)×300/全被保険者月数×3/4
H15年3月までの期間
平均標準報酬月額×7.125/1000×被保険者期間の月数(平成15年3月まで)…@
H15年4月以降の期間
平均標準報酬額×5.481/1000×被保険者期間の月数(平成15年4月以降)…A

長期要件
(@+A)×3/4
平成15年3月までの期間
平均標準報酬月額×給付乗率×被保険者期間の月数(平成15年3月まで)…@
平成15年4月以降の期間
平均標準報酬額×給付乗率×被保険者期間の月数(平成15年4月以降)……A
※ 給付乗率は生年月日に応じた率
ワンポイントアドバイス
短期要件・長期要件いずれにも該当するときは、有利な方を選択します。
中高齢寡婦加算
夫が死亡したときに40歳以上で子のない妻(夫の死亡後40歳に達した当時、子がいた妻も含む)が受ける遺族厚生年金には、65歳になるまでの間、中高齢の寡婦加算(定額)が加算される。妻が65歳になると自分の老齢基礎年金が受けられるため、中高齢の寡婦加算はなくなる。
中高齢寡婦加算の支給対象となる妻の要件
@ 夫死亡時の妻の年齢が40歳以上65歳未満で子がいないこと。
A 子のある妻の場合、夫死亡時の妻の年齢が40歳未満であっても、その子が18歳に達した時点で、妻の年齢が40歳以上に達していること。
※ なお、夫が厚生年金に加入していないときに死亡した場合は、それまでの厚生年金の被保険者期間が20年以上(中高齢の特例に該当する場合は15年〜19年)あれば支給される。
ワンポイントアドバイス
遺族基礎年金を受給している間は中高齢寡婦加算は支給停止となり、加算されません。
経過的寡婦加算
遺族厚生年金を受けている妻が65歳になり、自分の老齢基礎年金を受けるようになったときに、65歳までの中高齢寡婦加算に代わり加算される一定額を経過的寡婦加算という。
これは、老齢基礎年金の額が中高齢寡婦加算の額に満たない場合が生ずるときに、65歳到達前後における年金額の低下を防止するため設けられた。生年月日に応じて設定されている。65歳以降に初めて遺族厚生年金(長期の遺族厚生年金では死亡した夫の被保険者期間が20年(中高齢の期間短縮の特例などによって20年未満の被保険者期間で老齢厚生年金の受給資格期間を満たした人はその期間)以上)を受け始めた妻にも加算されます。
ワンポイントアドバイス
遺族厚生年金の受給者が障害基礎年金の受給権も同時に有しているとき(ただし、支給停止になっている場合は除く)は、経過的寡婦加算は支給停止となります。


年金と手続き
裁定請求
年金は受給資格を満たし受給開始年齢に達していても、自動的に支給されるわけではない。受給権者が請求の手続きをしなければならないが、この手続きを裁定請求という。
ワンポイントアドバイス
年金請求書は支給開始年齢になると、誕生月の3ヵ月前に送付されます。
年金支給期間と支払月
受給権が発生した日の属する月の翌月から、受給権が消滅する日の属する月まで、月を単位として支給される。年金の支給日は、原則として偶数月の15日に、前月と前々月の2ヵ月分を後払いする。
ワンポイントアドバイス
年金はあと払いです。死亡したときは、死亡した月まで受け取れます。(本人死亡後は遺族へ)
年金証書
年金を受ける権利の証明として交付されるのが年金証書。
ワンポイントアドバイス
年金額が改定されたときは、改定通知書が送付されます。


制度全般/その他
マクロ経済スライド
年金額は通常の場合、賃金や物価の伸びに応じて増えていくが、年金額の調整を行っている期間は、年金を支える力の減少や平均余命の伸びを年金額の改定に反映させ、その伸びを賃金や物価の伸びよりも抑えることとする。この仕組みをマクロ経済スライドという。
ワンポイントアドバイス
マクロ経済スライドの仕組みは、賃金や物価がある程度上昇する場合にはそのまま適用しますが、賃金や物価の伸びが小さく、適用すると名目額が下がってしまう場合には、調整は年金額の伸びがゼロになるまでにとどめます。賃金や物価の伸びがマイナスの場合には、調整は行いません。したがって、賃金や物価の下落分は年金額を下げますが、それ以上に年金額を下げることはありません。 マクロ経済スライドは現在実行されていませんが、見直しが検討されています。
基礎年金番号
平成9(1997)年1月から導入された1人に1つ与えられた年金番号で、国民年金や厚生年金、共済組合など、どの制度に加入していても共通して使用する。それまでは、加入する制度ごとに年金番号が付けられ、制度ごとに記録の管理が行われていた。
ワンポイントアドバイス
基礎年金番号がわからないときは、基礎年金番号は平成22年度までのねんきん定期便に記載されているので、みてください。ねんきん定期便がないときは、年金事務所でお問い合わせください。
年金手帳
国民年金、厚生年金に加入すると、各人の基礎年金番号が記載された年金手帳が交付される。年金手帳は、年金の各種届出の際に必要となる。転職などによって加入する制度が変わっても、年金手帳は同じものを使い、基礎年金番号も一生かわらない。
ワンポイントアドバイス
年金手帳を紛失したときは再発行できます。


年金と税金
雑所得
老齢基礎年金や老齢厚生年金は雑所得として課税対象となる。障害年金・遺族年金は非課税。
ワンポイントアドバイス
企業年金からの年金も雑所得となります。
公的年金控除
年金所得からまず控除されるのが公的年金等控除である。65歳以上と65歳未満とで控除額が異なる。さらに配偶者控除や扶養控除など該当する各種所得控除を差し引いた残りの額が課税の対象になる。
厚生年金基金や確定給付企業年金、確定拠出年金の年金も、公的年金等控除が行われる。
ワンポイントアドバイス
公的年金控除は65歳未満は70万円、65歳以上は120万円が最低額です。