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知っておきたい年金のはなし     第2号 2003年3月20日発行

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こんにちは。

創刊号に、たくさんの感想ありがとうございました。
「年金制度は忍者屋敷」という言葉に、「確かにそうだよね!」という感想をいただきました。
ずっと前に、金沢の忍者屋敷に行ったことがあります。
いろいろなしかけがあって、なかなかおもしろかったですよ。

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第2号の話題は、いきなり、離婚と年金!
★★★ 離婚したい! でも、年金はどうなるの? ★★★

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今回は「離婚」の話題です。
実は、この中には、年金制度を知る「かぎ」がたくさんあるのです。
夫はサラリーマン、年収90万円のパートで働く、ゆみこさんが登場します。
ゆみこさんは、心の中で離婚を考えていますが、将来の年金が心配です。

●年金制度では、夫婦は別居。
年金制度を家にたとえるとわかりやすいと創刊号ではお話しました。
では、夫婦は1軒の家に住んでいるのでしょうか。
実は、年金制度では夫婦は別居です。ゆみこさんの例では、 夫は2階建ての家、妻のゆみこさんは平屋に住んでいます。
同じ敷地に2軒の家が並んで建っているとイメージしてみましょう。
ただし、わかりにくいのは、この2軒の家は二世帯住宅のような造りで、 行き来できるようにつながっているということです。
ほんとは平屋に住んでいるゆみこさんは、夫の家の2階を利用できるので、 自分の家に2階があるような錯覚をおこします。

● 年金は個人のもの
現在の制度では、夫の年金は夫の年金、妻の年金は妻の年金です。
夫が会社で元気に働けるのは主に家事をしている妻のおかげといっても、 夫の年金は妻の年金にはなりません。夫は会社で働いていて厚生年金に加入 しているので、夫には1階部分と2階部分の両方がありますが、 パートで働いていて夫の扶養になっているゆみこさんの年金は、 1階部分しかありません。

● 仲がいいときはいいけれど・・・
そうです! 離婚なんて関係なく、夫婦仲がいいときは、夫と妻の年金、 ふたりあわせていくらあるかということで、生活を考えられます。
1階しかない妻も、いつでも夫の家の2階部分を利用できるというわけです。
でも、離婚してしまうと、二度と夫の家の2階にはいけません。
夫の年金は夫の年金なのです。ふたりの家の間には、しっかり鍵がかかって しまいます。「忍者」でも行き来できないし、「ハリー・ポッターの魔法」で もあけられません。

● 離婚したら、妻の年金はなくなるの?
離婚しても、離婚しなくても、ゆみこさんのようにサラリーマンに扶養され ている妻は、もともと1階部分の年金しかありません。
ゆみこさんは自分で国民年金の保険料を支払っていません。
しかし、サラリーマンの妻の期間は「保険料を払い込んだ期間」として、 きちんと年金額につながるようになっています。この期間を、「第3号被保 険者期間」といいます。
離婚したら、第3号被保険者期間もなくなってしまって、年金がなくなるの ではないかとゆみこさんは心配していましたが、心配ご無用!
サラリーマンの妻として認められた期間は、たとえ離婚しようが、消えてな くなることはありません。

●年金分割という話を聞くけれど・・・
年金分割は、夫の家の2階部分を、わけようじゃないかということです。夫の2階をけずって、平屋だった妻の家の上に、建て増ししようというものです。妻の努力があってこそ、夫は2階建ての家を建てることができたのだから、それを分けないと不公平だ!という意味です。
ただし、検討されていますが、まだ決まったことではないので、どうなるかわかりません。

●年金分割したら、年金が減るじゃないか(影の夫の声)
そのとおり。もし年金分割という制度が法制化されたら、妻を扶養している夫の年金は減ってしまいます。愛する妻に年金をわたしてもいいと思うか、それとも、自分が働いているのに減らされるなんてとんでもない制度だと思うか、男性の気持ちはどうなのでしょう。

●ちょっとまって! 日本の年金制度は世帯単位って聞くけれど?
年金にも、会社のお給料の配偶者手当のようなしくみがあったり、年金制度の考え方には「夫婦2人、子どもがいて」という「世帯」の考え方が基本にあります。シングルで生きる人よりも、夫婦で生きる人に手厚いしくみになっています。
でも、年金をもらうのは個人です。繰り返しになりますが、夫の年金は夫の年金、妻の年金は妻の年金。年金制度がいう「標準的な世帯」にあてはまっているうちはいいけれど、「標準的な世帯」からはずれてしまうと、「この年金では生活していけないよ」ということになってしまいます。

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離婚と年金、むずかしい問題です。
これは「年金制度のあり方」の問題なのですよね。
私は、結婚を選んでも、シングルを選んでも、離婚を選んでも、シングルマザーを選らんでも、働くことを選んでも、専業主婦を選んでも、どんな生き方を選択しても、みんなが納得できるような公平な年金制度であってほしいと思います。公平という意味には、ほんとに困っている人には手厚い制度であってほしいという意味もあるのです。
年金制度という家、これからどんどん探っていきましょう。
そして、どんな家を建てたらいいのかも考えてみましょう。