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知っておきたい年金のはなし     第9号 2003年6月1日発行

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だんだん、真夏のような陽射しになってきました。でも、寒いよりはいいなあと、汗をかきながら歩いています。

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第9号の話題は、年金のむずかしさの秘密です
★★★ なぜ、年金はむずかしい? ★★★
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よく言われます。
「年金ってむずかしいですね」
ほんとに、そのとおりです。私もむずかしいと思います。第1号でもお話したように複雑な「忍者屋敷」なんです。
とにかく、複雑! むずかしい! 「いいかげんにしてよ!」と思います。これは私の本音です。きっと、みなさんもそうでしょう。
では「むずかしいのはなぜか」と考えてみたことはありませんか。「考えたってむずかしいものはむずかしいのだから」と思われるかもしれませんが、実は、その答に、今の年金制度を知る秘密があるのです。

●これは仮の話ですが…

今年60歳の人が100万円の年金をもらっているとします。でも、台所事情が厳しいので、年金額を50万、つまり半分に減らしたいと、支払う側の国が言ったとしますね。
「これからみんな、年金は半分になるんだよ」となったら、今59歳の人はどう思いますか。
困りますよね。来年からあてにしていたのだから、そんなこと急に言われてもひどいといって、怒るでしょう。

●急に変更できないから

だから、こんなふうにします。今59歳の人は年金額90万円、58歳の人は80万円というふうに、だんだん下げていって、若い人は50万円にします。今59歳の人は「90万円ならまあいいいか」と、反対の声も小さくなってしまいます。ほんとは一番困る若い世代は、まだまだ関係ないと思って、何もいいません。そうしているうちに、年金額を下げる法律が通ってしまいます。

●いつまでも古いものが捨てられない

一度に悪くできないからだんだん悪くしていく、すでにもらっている人は、その権利を守る意味から、古い法律のままでいく、ほら、複雑でしょう?
部屋の中を思い浮かべてください。新しい家具を買いました。古い家具は捨てたいですね。でもそれがまだ必要で捨てられないとなったら、どうなりますか。新しいものと古いもの、いろいろあって、部屋の中がごちゃごちゃしますね。たくさんのものがつまった部屋から、その時々に応じて、必要なものをひっぱりださなくてはなりません。

●ごちゃごちゃの部屋(あら、私の部屋みたい?)

そんな状態が今の年金制度です。
生年月日ごとに違いも知っていなければならない、新しい法律と古い法律、両方知っていなければならない。古い法律を捨ててしまうことができないのです。

●年金の金額を上げるなら

反対に、今60歳の人の年金は100万円だけれど、これからみんなの年金を120万円に上げるという法律が通ったとしたら、どうでしょう。もう古い法律は必要ないわけです。古いものはきれいさっぱり捨ててしまっていいのです。

●年金がむずかしいわけ

ここまでくればわかりますね、年金がむずかしいわけ。つまり「改悪」されているからです。「改悪」とは、年金をもらう立場からみてのことです。もらう年金額が少なくなるという意味での「改悪」です。
つまり、変更のたびに年金額が減っていく、しかも、すでにもらっている人はそのままにしておくから、年金はむずかしいのです。

●少しずつ、少しずつ

しかも、一度に悪くはしません。少しずつです。年金では、生年月日が大切なのです。生年月日ごとに条件が違ってきます。だいたい、若い人ほど、条件が悪くなっていきます
だから、生年月日による区分のあるものは、一度に悪くできないから、だんだん悪くしていこうという意味だと思ってください。(例外もありますが)

●5年に1度の見直し

実は年金のしくみは、5年に1回は見直しますよということになっています。5年も同じ家にすめば、どこか修理するところや、不都合なところが出てくる。5年に1回はかならず、修理しますという、約束があるのです。せっかく家を修理するのですが、すみにくくなってしまうのですね。

●毎年の見直しもある

5年に1度の見直しの他に、年金額は毎年変更されることになっています。毎年、物価が上がったり、下がったりしますね。それにあわせて、自動的に年金額を変更しましょうというしくみになっているのです。
今年の4月から年金額がさがったのは、物価が下がったからです。それにあわせて年金も下げたのです。ほんとは昨年も物価は下がっていて年金額も下がるはずだったのですが、特別に下げなかっただけなのです。

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みんなの年金額を増やすなら、もう古い制度は必要ありません。減らすから、「既得権」を守るため、古い制度を残すことになるのです。だから、年金はむずかしいのです。いまだに「旧法」も出てきますからね。
なぜ、こんなにむずかしいのだろうと、ちょっと考えてみることで、年金制度のしくみがみえてくるものです。実はこれ、年金を出すほうからすると、秘密にしておきたいことかもしれません。