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知っておきたい年金のはなし     第11号 2003年6月21日発行

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こんにちは! 6月に、福岡近くまで台風がくるというのも、めずらしいことでしたが、台風のためにとまってしまった列車の中で時をすごすというのも、はじめての体験でした。とまった列車の中で、あれこれと考えました。さて、今回のお話です。

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第11号の話題は、名前の違いは大きな違い!!
★★★ フルネームを知っていますか? ★★★
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「老人のお金はありがたい、年をとったら国からお金がもらえるなんて、日本はいい国だね」
これは、90歳で亡くなった、私の「おばあちゃん」の言葉です。孫の私は、よくこの言葉を聞かされました。そして、たまに、おこづかいももらっていました。
ところで、「老人のお金」ってなんでしょう?
当時の私は、年金のことなんて、これっぽっちも知りませんでしたので、「年をとったら、誰にでも国からお金が出るんだな」と思っていました。
あとになってわかりました。おばあちゃんのいう「老人のお金」とは、実は「老齢福祉年金」のことだったのです。

●保険料を払わなくてももらえる年金

おばあちゃんは、年金の保険料なんて払っていませんでした。いえ、専業主婦の女性が入れるような年金制度のなかった時代だったのです。
でも、70歳になってからは、国からの年金をもらっていました。それが老齢福祉年金なのです。

●なぜそんなしくみがあるの?

国民年金の制度がはじまったのは昭和36年。そのとき、もうすでに60歳だったらどうしましょう? 
「みんなが入れる年金制度ができたよ」といっても入れない、入れないから年金はもらえない、そういうことがおこります。
だから、すでに一定以上の年齢になっている人たちのことを考えました。国民年金ができた当時50歳以上の人(例外あり)、そして所得の少ない人には、年金をあげるよということにしたのです。
というわけで、この年金には「福祉」という言葉がついています。

●フルネームを調べてみましょう

「国民年金」と「厚生年金」。国民年金はそのとおりでいいのですが、厚生年金の正しい名前は「厚生年金保険」といいます。フルネームですね。
たいてい「厚生年金」と短く言ってしまいますが、それはニックネームみたいなもので、ほんとの名前は「厚生年金保険」というのです。「保険」という言葉がついています。

●国民年金は国民年金

つまり、言いたかったことは「国民年金保険」とは言わないことなんです。
国民年金に「保険」という言葉はついていません。

●保険ってなんだ?

保険というのは、お金がいることがおこったときのための「魔法のさいふ」。
ほんとはそれほどさいふの中にお金を入れていないのに、いざとなったら、必要なお金を出してくれるしくみです。ただし、保険に入っていないと、「魔法のさいふ」は使えません。

●なぜ名前が違う?

厚生年金保険は、「保険」と名がついているだけに、保険料を払っていない人にはなんの関係もありません。また、必ず保険料を払うことになっています。会社のお給料から、いやおうなく引かれますものね。引いてほしくないよって思っても。
「今は生活苦しいから」といって、保険料を免除してもらうようなしくみは、「厚生年金保険」にはないのです。

●国民年金「保険」でない理由

国民年金も強制加入ですが、生活が苦しいときには保険料を免除してくれるというしくみがあります。
お店ではお金を払わないと,ものは買えませんね。ところが、国民年金の場合は、「生活大変だね、払わなくてもいいよ」と認めてもらったら、その期間はお金を払わないのだけれど、将来自分がもらう年金に3分の1だけつながるのです。
つまり、お金は出さないけれど、3分の1だけ買い物ができるようなしくみです。お金を払わなくてももらえるしくみ、だから「保険」という言葉がつかないのです。

●じゃあ、誰がお金を出しているの?

それは「国」です。むずかしいことばでいうと、「国庫負担」です。
でも、「国」を作っているのは、この国に住んでいる私たちひとりひとり。つまり、もとをたどれば、みんなでお金を出し合っているということになりますね。
それから、この負担割合を3分の1から2分の1へと引き上げることになっていますが、つまり、国がもっとたくさんお金を出すよということになっていますが、現在はまだ3分の1のままです。

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今の年金のしくみをみて「この国はいい国だ」と感じますか。
私のおばあちゃんは亡くなるまで年金をもらっていましたし、そのお金をもらえることに感謝していました。年をとってからは、他に収入もなかったですものね。
今は70歳になっても老齢福祉年金はもらえません。無年金の人は無年金のままです。
国民年金の免除さえ受けておけば、お金を払わなくても、3分の1は年金をもらえるのだから、困った人を助けるしくみは作っているんだと、国民年金は言うかもしれません。でも、
「手続きしないあなたが悪いのよ、知らなかったあなたが悪いのよ、保険料を払わないからそうなるのよ」
とだけ言ってしまって、ほんとにいいのでしょうか。
知らないのが悪いというなら、もっと誰にでもすぐわかる、すっきり、はっきりしたしくみにすべきでしょう。こんなに複雑なしくみにしておいて、知らないほうが悪いとは、それはちょっとひどいような気がしませんか。どう思いますか。