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知っておきたい年金のはなし     第12号 2003年7月1日発行

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7月になりました。
新聞紙上でも、年金の話題は多いですね。
6月29日には、「年金給付に下限を検討」という記事もありました。どんどん年金が下がれば若い人の年金離れがおこるだろうから、現役世代の手取り年収の50%をめどにという方向性でした。
でも、ここで注意したいのは、「モデル年金」で考えられていることです。モデルにあてはまらない人はたくさんいますものね。「モデル」で書いてあっても、「自分は?」と考えたほうがよさそうです。

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第12号の話題は、知っておきたい年金額
★★★ 年金っていくらもえるの?(1階編) ★★★
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今日は、夏子さんと冬子さんのお話です。
双子の夏子さんと冬子さんは、昭和13年4月10日に生まれました。
昭和36年4月、国民年金の制度ができたので、23歳になっていたふたりは、将来のことを考えて、国民年金の保険料を払うことにしました。その後、ふたりとも年上の男性と結婚しました。ずっと専業主婦でしたが、ふたりとも国民年金の保険料は払い続けました。
ここまではふたりとも同じ。違うことは、夏子さんの夫は最初からずっと会社員、冬子さんの夫は最初からずっと自営業だったということです。
ふたりは、今年の4月に65歳になって、年金額を調べました。ところがふたりの年金額は違いました。冬子さんの年金が少なかったのです。冬子さんは怒っています。
「なぜ、私の年金少ないの?」
さあ、どうしてなのでしょうか。加入していた期間は同じです。
年金制度は2階建てです。1階は誰でも同じしくみ。基礎年金です。今日は、1階の金額の話、老齢基礎年金の話です。

●1階は797,000円

とにかく、保険料を納めた期間や、免除を受けた期間や、カラ期間が25年ないと、年金はもらえません。
ところが、25年あるから、年金はたくさんもらえるのかなあと思っていると、大間違い。25年で年金をもらえる権利はできるけれど、老齢基礎年金は40年間、1月も欠けることなく、保険料を納めていないと、満額にはならないのです。
1月でも欠けていると、その分減ります。ここがポイント!

●カラ期間は、年金額にはつながりません

カラ期間ってありましたよね。何もしてないけれど、年金をもらえるかどうかをみるときには、入れてあげようという期間。昭和36年4月から昭和61年3月までのサラリーマンの配偶者の期間や、海外にすんでいて加入していなかった期間など、いろいろあります。その期間は、年金額の計算をするときには、1円の年金にもなりません。だから、カラ期間の長い人は、年金はもらえるけれど、年金額が少なくなってしまうので、これは要注意!

●私は25年ちょうどしか、納めてないよ

年金、797,000円の「40分の25」の金額。50万円弱にしかなりません。

●大学卒業後22歳から60歳まで働いていた場合は?

残念ながら、22歳から60歳まで38年間しかないので、1階の年金(老齢基礎年金)は満額の797,000円にはなりません。「40分の38」で、757,200円です。

●私は国民年金の制度ができたときには30歳だったけれど

国民年金への加入は60歳まで。(60歳以降任意加入できますが)
制度ができた昭和36年4月にすでに20歳以上だった人は、どんなにがんばっても60歳まで40年間ありませんよね。そういう人には特例があって、40年なくても、自分が加入できる年数きちんと保険料を納めていたら、満額の年金をもらえます。
すでに30歳だったら、60歳まで30年。30年間きちんとおさめていたら、満額になりますよ。

●夏子さんと冬子さんは?

ふたりは制度ができたときに23歳だったのですが、60歳まできちんと加入していたので、ふたりとも老齢基礎年金は満額です。797,000円です。

●じゃあ、同じじゃない? なぜ、冬子さんのほうが少ないの?

答は、夏子さんの夫が会社員で、厚生年金に加入していたからです。
夏子さんの夫は40年近くサラリーマンでした。20年以上厚生年金に加入していたので、夏子さんの夫には、年金の配偶者手当のようなもの(加給年金といいます)がついていました。
会社のお給料でも、配偶者手当ってあるでしょ。年金制度にも扶養している配偶者への手当があると考えてください。
ところが、そのプラス分は、妻の夏子さんが65歳になると、夏子さんの夫の年金から消えてしまいます。夏子さんの夫の年金は減ります。
すっかり消えてしまったのかなと思っていると、夏子さんの年金にくっついていたのです。(振替加算といいます)

●サラリーマンの妻のほうが、ここでもお得?

夏子さんも冬子さんも同じ専業主婦。夏子さんはサラリーマンと結婚したから1階の年金が多くなったのです。1階の年金が満額の797,000円以上になるのは、この振替加算がプラスされる場合のみです。

●冬子さん、保険料のことでも怒っています

夏子さんも冬子さんも最初は自分で国民年金の保険料払っていました。でも、夏子さんは、昭和61年4月に第3号被保険者の制度ができて、サラリーマンに扶養されている妻は保険料を支払わなくても、支払ったことにしてあげるよということになってから、すぐに手続きして、それから60歳になるまで、保険料は払っていません。
でも、冬子さんはその特典にはあてはまりませんでしたので、なんとかやりくりしながら、自分で保険料を支払ってきたのです。夏子さんよりたくさん保険料を支払って、もらう年金額は夏子さんより少ないなんて、冬子さんは、どう考えてもすっきりしません。

●夏子さんが離婚したら年金はどうなる?

熟年離婚も多いですが、夏子さんもそんなことを考えています。離婚したら、年金が少なくなるのではないかしらと心配です。でも、いったん夏子さんにプラスされた振替加算は、離婚したって、なくなりません。もう自分のものです。
熟年離婚の場合、振替加算のつく人は、65歳になって自分の年金にプラスされてから離婚したほうがいいです。(いいというのは、年金のことだけ考えてです。それまで、がまんできないことだってありますよね)

●ところで、夏子さんはいくらぐらい冬子さんより多いの?

1年間で、155,900円多いです。(平成15年度の金額)
振替加算は、生年月日によって違います。若い人ほど少なくなって、昭和41年4月2日以降に生まれた人には、振替加算はまったくなくなります。そうなると、夏子さん、冬子さんのような違いがおこることもありません。

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1階は満額797,000円。40年間きちんと保険料を支払ってない人は、これから減らされます。何年分支払っているか、また、免除を受けた期間がどれくらいあるかわかると、おおよその年金額、1階部分の計算はできます。
この40年間は昭和36年4月以降の20歳以上60歳未満の期間で、国民年金、厚生年金、共済年金、どの制度でもいいです。
自分の1階の年金額、検討つきますか?
それにしても、冬子さんの気持ち、わかるような気がします。同じようにしてきたのに、夫の職業が違ったということで、年金額が違う、わりきれませんね。もちろん、夏子さんの夫は、冬子さんの夫よりもたくさん保険料を払っていたといえば、それまでですが。