★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

知っておきたい年金のはなし    第16号 2003年8月11日発行

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

毎日、暑いですね。
クーラーのない部屋で、扇風機まわして、原稿を書いています。でも、夏は暑いもの。このままのほうが健康にはいいのかもしれませんね。

……………………………………………………………………………………………
第16号 ボーナスと年金の関係は?
★★★ 保険料が減ってもよろこべない! ★★★
……………………………………………………………………………………………

先日、こんな話を聞きました。
「うちの社員はボーナスからたくさん引かれた保険料に、実感がないのですよ。話題にもなりませんでした」
なぜかというと、昨年のボーナスは1.5ヵ月、今年の夏のボーナスは2ヵ月。ボーナスの金額があがっています。社会保険料が増えても、前回のボーナスよりは手取りが増えているので、実感がないといういことでした。
ボーナスからの社会保険料負担は増えているのに、「手取り」の増加で、ほんとうのところがみえなくなってしまっているのですね。

●保険料のしくみ、今年の4月からかわりました

今年の4月から健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料のしくみがかわりました。毎月の保険料率は下がりましたが、ボーナスからも毎月と同じ割合で保険料をとることになりました。

●なぜ、そんなふうにかわったの?

いろいろな理由があったことと思います。そのひとつに、ボーナスからも同じように保険料をとらないと「不公平」ということもありました。

●不公平って?

たとえば年間300万円の給料だとしますね。ボーナスがないものとして、12月で割れば、1月25万円です。社会保険料は、25万円をもとにして決まります。
ところが、毎月15万円にして、ボーナスを120万円にすればどうでしょう。毎月の保険料は15万円をもとにして決まります。25万円の給料より、15万円の給料のほうが、保険料はずっと少なくなります。ボーナス分は、特別保険料といって、わずか1%でした。(2003年3月まで)

●たとえばこんなふうに…

給料は毎月15万円、夏と冬のボーナス、1回につき100万円とします。毎月15万円では暮らしていけないから、ボーナスの前仮りを毎月10万円づつしていきます。
つまり、実際には、毎月25万円、ボーナス1回につき40万円をもらっていることになります。でも、毎月の保険料は15万円に対してのみ。(こういうやり方が合法かどうかという問題はありますが、こんなこともあったという話です。)
●こんな矛盾を解消する

ボーナスからも毎月と同じように保険料をとるということで、このように、意図的に保険料を下げることはできなくなります。

●ボーナスも年金額に反映します

かわったのは保険料のしくみだけではありません。今年の3月まで、どんなにたくさんもらっていても、ボーナスはまったく年金額には関係ありませんでした。
ところが、今年の4月からは、ボーナスからも毎月と同じように保険料をとることになったので、今年4月以降のボーナスは年金額に関係してくることになります。
●私の年金どうなるの?

非常にかんたんにいうと、ボーナスが多い人は年金も増える、ボーナスがない人は年金も減る、ということです。
30万円の給料だとしますね。昨年(2002年4月から2003年3月まで)1年間働くと、老齢厚生年金は1年間で約25,000円増える計算となりました。ところが、まったくボーナスがないとすると、同じ条件で今年(2003年4月から2004年3月まで)働いても、1年間の老齢厚生年金は、2万円にもなりません。
なぜって? ボーナス分を含めて年金額を計算するかわりに、計算するときに使う「乗率」を下げているからです。

●私ボーナスなし! 年金の見込み額は減るの?

ここまで聞いた直子さんはあせりました。57歳、小さな会社につとめる直子さんには、ボーナスがないからです。
直子さんのように、いままでと同じ給料で働いていても、今年の4月以降の期間は、年金が少なくなってしまいます。直子さんは、今までと同じ条件で60歳まで働いたらということで、年金の見込み額を計算していました。その見込み額は完全に下がります。予定が狂ってしまいます。
「ボーナスのある人はいいよ、でも、ない人はどうなるの? 年金が減らされることになってしまう、弱いものいじめじゃない!」と、直子さんは怒ります。
確かに保険料の支払い額は下がるのですが…

●今年4月以降の年金の計算

これから年金をもらう権利のできる人は、年金の計算をするときに、今年の3月までの期間と、4月以降の期間にわけて計算します。3月までの期間はこれまであった高い方の乗率を使って計算しますが、ボーナス分は入りません。4月以降は低くなった乗率をつかいますが、ボーナス分も入れて計算します。その結果、ボーナスの多い人はいいけれど、ボーナスがないような人は、給料がかわらなくても、年金額は少なくなります。

●保険料と年金額

1年間の保険料を計算してみてください。昨年と今年、どちらが多いですか。
毎月の保険料は下がっています。ボーナスの保険料は増えています。トータルとして増えましたか、減りましたか?
(ただし、昨年と今年の給料が同じということで計算します)
トータルとして保険料が減ったからといって喜べません。保険料が減るということは、将来受け取れる年金も下がるということなのです。

……………………………………………………………………………………………
気がつかないということは、一番おそろしいことかもしれません。「手取り」だけではなく、明細をよくみてみましょう。「手取り」がふえたらいいじゃないかという問題ではないですね。増えたように見えるボーナスも、実際には手取りが少なくなっているのです。
知らないまま、いつのまにか、どんどんかわってしまって、必要なときに年金が少ないとあわててしまう。こんなことにならないために、制度改訂の動き、しっかりみていきたいものです。
来年は年金制度見直しの年です。

……………………………………………………………………………………………
■□■ おすすめコーナー ■□■
おすすめメルマガ
「中高年になったら自営業!」
「今サラリーマンだけれどこれから自営業を」と考えている方におすすめします。今、掲載中の「年金編」も、私の年金の話とは違う切り口です。
発行 かがみ事務所 代表 鏡味 義房
登録はこちらから→ かがみホームページ http://myweb.to/kagami