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知っておきたい年金のはなし    第20号 2003年9月21日発行

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こんにちは。 きびしかった残暑。ようやく感じる秋風にほっとします。
今回は、前回登場した茂さんと幸子さんの相談の続きです。茂さんの相談がひととおりおわって、今度は妻の幸子さんの相談です。

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第20号 年金をもらいはじめる年齢
★★★ 老齢基礎年金、早くもらってお得? ★★★
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幸子さんは3歳年下。結婚してからずっと専業主婦でした。そして一度も国民年金の保険料を払ったことがありません。
「ずっと私の扶養に入っていました」
という夫の茂さん。
つまり、こういうことなんです。幸子さんが25歳で結婚したとき、サラリーマンの妻は国民年金に入ってもいいし、入らなくてもよかったのです。自分で選ぶことができました。だから、幸子さんは入りませんでした。昭和61年に法律がかわって、幸子さんのようなサラリーマンの妻は、手続きをとることによって国民年金の第3号被保険者になりました。そして、現在も第3号被保険者です。第3号被保険者とは、国民年金の保険料を自分で払うことはありませんが、払ったこととなる制度です。
ちなみに、結婚するまでは家業の手伝いをしていて、そのとき、国民年金の保険料は払わないままになっていました。
幸子さんは、年金をもらえますか。もらえるなら、いつからもらえるでしょうか。

●幸子さんは老齢基礎年金をもらえます。

幸子さんは、国民年金の保険料を自分ではおさめたことがありません。でも、老齢基礎年金をもらう権利はできているのです。
なぜなら、昭和61年3月までのサラリーマンの妻の期間と、昭和61年4月以降のサラリーマンの妻の期間をあわせて、25年以上あるからです。
●老齢基礎年金は65歳から

幸子さんは国民年金加入期間だけ。国民年金加入期間だけの場合、老齢基礎年金を65歳からもらえます。
●早くもらうことも、おそくもらうこともできます

老齢基礎年金は65歳からですが、もっと早くからもらうことも、もっとおそくもらうこともできます。
一番早くもらって60歳から、一番おそくもらって70歳から。

●もし60歳からもらったら?

年金額は少なくなります。60歳ちょうどから年金をもらったら、もらう年金額は、65歳からもらう年金の70%に減ってしまいます。
そして、少なくなった年金は決してもとの金額にはもどりません。65歳になっても、少ない年金額のまま。一生続きます。
●早くもらうのと、65歳からもらうのと、どちらがお得?

これは、むずかしい問題です。なぜなら、人の寿命はわからないからです。
たとえば、65歳から年金をもらおうと思っていたのに、65歳になるまえに死亡したとしますね。そうなると、その人はまったく年金をもらえなかったことになります。
でも、反対に長生きしたときのことを考えてみましょう。少ない年金より、多い年金のほうがいいですね。長生きすればするほど、一生で受け取る年金の総額に差がでてきます。

●病気のある人こそよく考えてほしい

幸子さんはこういいました。
「病気をもっているし、長生きしないかもしれないから、早くもらったほうがいいのでは?」
どんなに元気な人だって明日事故にあうかわからないし、病気をもっている人が、かえって長生きすることだってあるし、こればかりは、どんな人にも予想がつきません。
でも、健康に自身のない人こそ、よく考えてほしいことがあります。

●障害年金がもらえない!

病気がちだから、どうせ長生きしないからと、60歳から老齢基礎年金をもらった人。病気が悪くなって、63歳で障害等級1級の状態になりました。63歳なら障害基礎年金をもらうことができるのです。(もちろん、誰でもは、もらえません。障害年金をもらう条件をみたしていることが必要です)
でも、老齢基礎年金を早くもらっている人はもうだめ。障害年金はもらえません。
「障害基礎年金のほうが金額は多いのにもらえない!」ということになってしまいます。
病気があるから早くもらおうと言う場合、障害年金のこともよく考えてくださいね。
●65歳よりもおそくもらったら?

70歳ちょうどでもらうことにしたら、年金額は42%増えます。これも、お得かどうかは人の寿命しだいです。70歳まで年金なしでも生活できる、そして長生きの予定あり!の場合は、おそくもらうこともいいでしょう。
●支給される年金

早くもらうのは60歳以降、いつからでもいいのです。おそくもらうのも、66歳以降70歳までいつからでもいいのです。そのときによって支給率はかわります。早くもらったら、いつでも70%というわけではありません。確認してください。
また、昭和16年4月1日以前に生まれた方は、そもそも支給率がちがいますので、この場合もお問い合わせください。

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私は死んだことがありませんので(あたりまえですね)死ぬときの気持ちはわかりませんが、死ぬときに、「年金もらってなくて損したなあ」とは思わないと思うのです。そんなこときっと考えないでしょう。
でも、長生きしたときには、自分の年金の少なさをなげくかもしれません。こんなことなら、65歳から普通にもらうんだったと。少ない年金では暮らしていけなくなるかもしれません。
早くもらうかどうか迷ったとき、なんとか生活していけるのだったら、65歳まで待ったほうがいいと思うのです。どうしてもこの年金がないと生活していけないというとき、早くもらうことも考えてみましょう。
私はそう思います。しかし、これにはいろいろな考え方があって、自分で選ぶしかないのです。
知らなかったということだけにはならないようにしたいものです。あとになって「知らなかった、こんなことなら早くもらわなければよかった、今までの分を返してもいいから取り消したい」と、どんなに言っても聞いてくれません。

※ ほんとはこの話も続けたいのですが、来年の年金制度改革、いったいどうなるのかと気になっている方も多いと思います。次回はこのお話を!