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知っておきたい年金のはなし    第22号 2003年10月11日発行

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涼しくなってきましたね。
でも、年金問題は、だんだん「熱く」なってきています。
前回に引き続き、今出されている「年金改革案」を取り上げます。「案」ですから、決まったことではありません。でも、決まったことではないからこそ、しっかりみておく必要があります。知らないうちに「改悪」されてしまったということのないように!

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第22号 これからどうなる? 年金制度(第2回)
★★★ パートタイマーの厚生年金加入は? ★★★
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配偶者の扶養の範囲で働く人… 別に「サラリーマンの妻」とは限りませんが、わかりやすいように、「パートで働くサラリーマン」の妻と表現します。
パートで働くサラリーマンの妻にとって、パートタイマーの厚生年金加入については、大きな関心事です。関心あるのは、サラリーマンの妻だけではありません。パートタイマーが多い会社でも、大きな問題です。パートタイマーが社会保険に加入するようになれば、保険料負担がたいへんだと、心配している経営者の方もたくさんいます。
「65万円を越えたら厚生年金に加入するようになるのですか」という質問をよく受けますが、「改革案」はどうなっているのでしょうか。

●3点セット

まず、これは厚生年金だけの問題ではありません。健康保険、厚生年金、介護保険は社会保険3点セット! (ただし、介護保険は40歳未満の人は関係ありません。2点セットになります)
社会保険に入るときは全部入る、入らないときは全部入らないというのが原則です。
健康保険は入ってもいいけれど、厚生年金には入りたくないとか、そういう選択はできません。
だから、パートタイマーの厚生年金への加入ということは、そのうしろには健康保険と介護保険が手をつないで待っているのですよ。入るときは、いっしょだよと、大きな顔をしています。

●今はどうなっているの?

「私はパートで働いているよ」と言っても、勤務時間や日数が、その会社の正社員の4分の3以上であれば、3点セットの社会保険に加入しなければなりません。4分の3というのは、「おおむね4分の3」。また、2ヵ月以内の契約など、短期の場合は加入しませんので、確認が必要です。
たとえば、毎日6時間、週5日の契約で働いている場合は、いくら名称が「パート」となっていても、社会保険に加入しなければなりません。収入は関係ありません。どんなに少なくても契約時間がそうであれば、強制加入となります。

●でも、入っていない人、たくさんいるよ!

そうですね。入らないといけないのに、入っていないこと、たくさんあります。でも、それは、ほんとはまちがっているのですよ。あとで調査が入って、過去2年間にさかのぼって保険料を徴収されたという事例もあります。そうなると、本人も大変、会社も大変!

●130万円未満というのは関係ないの?

自分が社会保険に加入する条件と、夫(あるいは妻、以下同じ)の扶養からはずれる条件、これは違うのです。自分の働いている会社などで社会保険に加入する条件は、上記のとおり。
でも、ここからが、まちがいやすいところです。夫の扶養に入れるのは、収入が130万円未満(60歳以上や障害者の場合は180万円未満)です。

●具体的にはどういうこと?

たとえば、1日6時間、週5日という条件で働いていれば、どんなに収入が少なくても自分の働いている会社で社会保険に加入。自分の収入が130万円あるとかないとかは関係ありません。
反対に収入が130万円以上あれば、どんなに短時間で働いていても、夫の扶養として健康保険に加入できず、第3号被保険者にもなれません。扶養に入れないからといって、自分の働いている会社で社会保険に加入できるかというとそうでもありません。加入の条件を満たさないと加入できません。夫の扶養にも入れない、自分で社会保険にも入れないとなると、国民健康保険、国民年金に加入となります。

●まぎらわしいけれど・・・

社会保険への加入の条件と、配偶者の扶養の条件とは、まったく別ものだと考えてください。
収入が130万円ないから社会保険に加入しなくていいとか、130万円を越えたら、社会保険に加入できるとか、それはどちらも違いますね。

●改革案では

この社会保険加入基準を変更しようというのです。労働時間が正社員の2分の1以上あれば加入、収入が65万円以上あれば加入ということを案として出しています。両方の条件にあう場合ではなく、どちらかの条件にあえば加入なのです。

●「収入」の中身に気をつけよう

社会保険でいう「収入」とは、もらったもの全部と考えてください。所得税の計算では、バスや電車などの通勤手当は「非課税交通費」といって、税金の計算には入りませんね。
社会保険にはそのような考え方がありません。非課税になる交通費も収入に入ります。だから、遠くから通っていて交通費の多い人は、要注意! 通勤手当をいれて130万円を越えてしまえば、夫の扶養には入れません。

●保険料はどうなるの?

社会保険料の計算は、どんなに給料が低くても、最低、9万8千円給料があるものとして計算されます。7万円しかもらってなくても、9万8千円あるものとして計算されます。つまり、給料の少ない人は、それだけ負担が重くなってしまうわけです。

●年収70万円の人は

この改革案どおりになったら、年収70万円の人も、社会保険加入となります。年収70万円を単純に12月で割ると、1月は5万8千円。これだけしか給料がないのに、保険料は9万8千円の場合と同じ。
なんだか、矛盾がありますね。

●改革案では「下限を下げる」案も

そこで、今のまま9万8千円を最低としないで、7万円にしようという案が出ています。それにしても、年収70万円の人の矛盾は解決しませんよね。

●なぜパートタイマーの厚生年金加入なのか

「厚生年金の支え手を増やす」とか、「多様な働き方に対応する」とかいうと、きれいな言葉に聞こえるかもしれません。
パートタイマーの厚生年金加入の意図は、保険料をたくさん集める、第3号被保険者制度を縮小していくという目的があると思います。
来年の年金改革では、おそらく、第3号被保険者制度を廃止ということには、ならないでしょう。でも、パートタイマーが厚生年金に加入すれば、第3号被保険者の数は少なくなりますね。
少なくなってもそれは数の問題であって、制度の矛盾は何も解決しないのです。

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私は、厚生年金に加入しないほうがいいと言っているのではありません。自分の年金は自分できちんと確保するということが基本だと思っています。だって、これから先の人生、どうなるかわかりませんものね。離婚するかもしれないし、夫に先立たれて、遺族年金がないことだってあるのです。(必ず遺族年金がもらえるとはかぎりません)
厚生年金に加入できるのなら加入して、自分の2階部分の年金をしっかり作っておく、これも方法です。
でも、厚生年金加入の前提として、ひとりの人が生活していけるだけの賃金が条件ではないでしょうか。
パートだからといって、それだけの理由で賃金差別をする、その差別の中で、低い賃金しか得られない人から、ほんとにわずかの収入から、保険料をとるというのは、どうでしょうか。
まだ、厚生年金に加入すればまだ年金としてプラスになるけれど、健康保険、介護保険に独自で入るメリット、少ないです。負担ばかり増えるように思います。
これについては、いろいろなご意見、お聞かせください。