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知っておきたい年金のはなし    第23号 2003年10月21日発行

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こんにちは。なんだか寒くなってきました。
風邪をひいている人もみかけますが、いかがですか。
ところで、60歳以降、平均的に生きるとして、いったいどれくらいお金が必要だと思いますか。
60歳の夫、5歳年下の妻、それぞれが平均的に生きるとします。毎月平均30万円の生活費、夫死亡後の妻ひとりの生活費はその7割として計算したら、約1億円のお金が必要です。
30万円の生活費を節約して、20万円として計算したら、それでも7千万円弱必要です。
これをどうして用意しますか? 年金はいくら? 貯金は? 生命保険は? 退職金は?
年金が少なくなっていくのであれば、ほんとに問題です。今日は、改革案として出されている「保険料と年金額」のお話です。

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第23号 これからどうなる? 年金制度(第3回)
★★★ 心配な保険料と年金額 ★★★
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新築マンションの案内で、「モデルルーム」ってありますね。あれは、このマンションにはいろいろなタイプの部屋がありますが、代表的な部屋をご紹介していますということでしょう。
では、「モデル年金」とは?
いろいろな人がいるけれど、標準的なタイプを想定して、年金がいくらになるかを計算してみたものです。
私は、どうもこのモデル年金という考え方が好きではありません。モデルどおりに生きている人はどれだけいるのでしょう。私もモデルからは大幅にはずれてしまっています。
モデル的に生きてきていない人の意見はさていおき、モデル年金の中身は?
実はこれが大切なのです。

●現在のモデル年金は?
モデル年金のモデルとは、若いころからずっとサラリーマンで厚生年金に加入してきた夫と、専業主婦の妻です。そんな条件の世帯において、夫婦2人あわせた年金額が、約23万8千円となっています。
つまり、夫は1階と2階の年金をもらい、妻は1階だけという世帯。

●モデル年金の水準は?

くわしい計算の方法まではお話できませんが、厚生労働省の資料によると、現役で働いている男性の推計手取り月収は約40万円。この40万円という月収と、モデル年金をくらべてみます。
約6割です。つまり、平均的な話をすると、年金をもらっている人の年金額は、現役で働いている人の収入の6割ぐらいだということです。
こんなふうに説明すると、そんなに給料もらってないとか、そんなに年金もらってないとか、いろいろ不満が出てきそうですね。現実は違うかもしれませんが、厚生労働省の資料ではそうなっています。

●これからの年金の水準

40%に下げるというのは、このモデル年金と現役男性手取り年収の割合を60%から40%まで下げるということです。最近、言われているのが、50%という数字。これも同じ意味です。
どこまで下げるかということを議論しているのですよ。残念ながら、年金額を上げようという話は、いっこうにありません。

●最初の案は52%

昨年の12月に出された最初の案では52%となっています。ところが、財務省の考え方として40%という数字が出て、それから、また、厚生労働省の坂口氏の「試案」で50%という案が示されました。もともとの案が52%だったのに、いつのまにか、それよりも下がってしまっています。

●ふたつの考え方

なぜ、こんなに年金の給付水準を何%にしようかという話がでているのでしょうか。これにはそのまえの話があるのです。
これから年金をどうしようかというときに、実はふたつの案があります。今のモデル年金の水準をずっと維持していくという考え方と、そんなことをしているとどんどん保険料が上がるから、保険料の上限を決めるけれど、年金額も下げるという考え方です。

●年金の水準をこのままにしたら

今の厚生年金の保険料は13.58%だけれど、この水準を守ろうとすれば23.1%まで上げなくてはならないと言っています。国民年金の保険料は、現在の13300円が20500円に上げるというのです。言葉は難しいですが、これが「現行水準維持方式」と言われる案です。

●それは高い!

たいてい、そう思いますね。だから、どんなに高くても、厚生年金の保険料は20%止まりにしようという考え方が出されています。20%になったら、そこでストップ。そのかわり、年金額は減らすよと言っているのです。これが「保険料固定方式」と言われる案です。

●もうひとつの大事な話

ふたつの方式の中で、厚生年金や国民年金の保険料の話が出てきましたが、あの具体的な割合や金額には、条件があるのです。
「国庫負担を2分の1すれば」という条件です。

●国庫負担ってなに?

またまた、説明のいる言葉が出てきましたね。年金給付には、国もお金を出していて、これを「国庫負担」というのです。現在は3分の1。年金額の3分の1は保険料からではなくて、国が負担していますということなのです。

●ほんとは2分の1に決まっているけれど

現在すでに、国庫負担を2分の1まで増やすということは決まっています。しかし、実施時期は決まっていません。増やすと言ったのに、なんだかんだといって先のばしにしているというイメージです。
約束したけれど、お金、出したくないなあというのが本音かも。
そして、ここがポイント! 国庫負担を2分の1に引き上げなかったら、もっともっと負担は増えます。

●少しずつ

保険料を増やすとか、年金額を下げるとか、改革案では一気にはしません。「来年から一挙に!」ということではありません。何年かかけて少しずつ、変えていくのです。急に痛みを感じない程度に実行していく、一番怖いと思います。

●本音はどこだ?
「保険料固定方式」を入れたい! これが、今回の改革案の目玉商品かもしれません。

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ふたつの案、どちらの案がいいと思いますか。
どちらかなと考える前に、ちょっと、こんなことも考えてみましょう。
どちらにしようかなと考えてしまうのは、年金が少なくなってもいいよ、今より負担が増えてもいいよということを認めてしまうことになると、私は思います。
どちらも「NO」という選択方法があるはずです。
どっちがましかということより、どうすればもっとよくなるのか、そういう発想があってもいいと思います。 ほんとに財源がないの? ほんとにこのままでは年金制度は崩壊するの? もっと違う方法はないのでしょうか。
毎回強調していますが、まだ、決まったことではありません。決まったことではないから、もっともっと意見を言えるのだと思います。
60歳以降、確実にお金はいるのです。長生きすればするほど・・・