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知っておきたい年金のはなし    第30号 2004年1月1日発行

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あけましておめでとうございます。
少しでも、明るいことがたくさんある年になればいいなと思います。
「なればいいな」ではなく、小さな力を集めて、作っていかなければならないのでしょうね。
年金のはなし、「若い人ほどもらう金額が少なくなる」と、若い人にとってはよくない話題ばかりでした。
年のはじめに何を話そうかと考えましたが、ひとつだけ、若い人ほど増えるものがあります。
年の初めは「増える」話題を選びました。

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第30号 若い人ほど増えるしくみがある!
★★★ 配偶者の加給年金 ★★★
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会社に勤めている場合、「家族手当」がつくこと、ありますね。
扶養している配偶者や親や子などに対しての手当です。家族手当廃止もみられるようになりましたが、まだまだ、取り入れている会社は、多いですね。
どのような基準で給与を支給するか、家族手当はどうするか、それは、それぞれの会社での決定事項。法律上の最低基準を守ることは当然ですが、会社独自に決定できます。
だから、家族手当も、つけるか、つかないかは、会社の自由。
ところで、年金にも、「家族手当」と同じ考え方があるのです。
それは、「加給年金」です。加給年金は、年金の家族手当ともいえるしくみです。
障害年金にも遺族年金にも、加給年金のしくみはあるのですが、今回は、老後の年金にかぎってお話します。

●加給年金に関係ある人は誰?

残念ながら、国民年金だけ、つまり、老齢基礎年金(1階部分)だけの人には、関係ありません。扶養している妻がいても、プラスはつけてくれません。
関係あるのは、厚生年金や共済年金に加入していた人。老齢厚生年金や退職共済年金をもらえる人です。

●厚生年金に加入したことがあれば、誰でもいいの?

そういうわけではありません。厚生年金(以下共済年金も同じしくみ)に、原則20年以上加入していることが条件です。
「20年もの間、保険料をたくさん払いましたね、扶養している家族の分をプラスしてあげましょう」という気持ちかな。
ただし、特例によって、20年なくてもよい場合がありますので、自分はどうなのか、確認して下さいね。

●対象は、配偶者と子ども

扶養している家族がいれば、その家族が誰であっても、加給年金がプラスされるわけではありません。
配偶者か子どもです。その子どもには、「18歳になってから最初の3月31日までの子」という条件があります。わかりやすくいうと、「高校生の子どもがいれば、プラスをつけますよ」ということなのです。
障害等級1、2級の子どもがいる場合は、その子が20歳になるまで、加給年金の対象となります。
しかし、老齢厚生年金をもらっている人で、子どもがそういう条件に該当する人は、多数派ではありません。

●配偶者の条件は?

老齢厚生年金の加給年金、一番かかわりがあるのは、配偶者!
年金制度は、配偶者を大切に思っているらしく、配偶者がいれば、プラスをつけてくれます。「配偶者」だから、夫でも、妻でもいいのです。ただし、収入条件があって、年収850万円未満の配偶者でないと、加給年金の対象にはなりません。
まあ、850万円も年収があれば、年金でプラスをもらわなくても、大丈夫だということなのです。
夫でも妻でもいいといいましたが、きっとこの制度を作ったときは、「サラリーマンの妻」を想定して作ったのでしょう。

●プラス分はどのくらい?

2003年度の金額では、ひとり229,300円。もちろん、配偶者はひとりしかいませんが、子どもについては、人数が増えれば年金額も増えます。2人目までは、ひとり229,300円。3人目からは、76,400円、プラスされます。
そうそう、これは、年額です!(月額ではありません)

●配偶者には特別にプラスがある!

基本は229,300円だといいましたが、配偶者には、特別加算があります。ここが、子どもと違うところ!

●特別加算は、若い人ほど増える

生年月日ごとに特別加算額が決められていて、若い人の方が、金額が多くなるしくみです。昭和18年4月2日以降に生まれた人は、特別加算もふくめると、加給年金額は、398,500円となります。(このあとは、どんなに若くても同じ金額です)
例えば、20年以上厚生年金に加入して昭和19年生まれの男性。扶養している妻がいれば、妻がいるという理由で、いない人よりも、年間約40万円、年金が多くなります。
ただし、このプラスは、一生続くわけではありません。配偶者が65歳になれは、おしまいです。

●なぜ若い人ほど増えるしくみを作ったの?

そうですね。そんな疑問がわいてきます。
年金のしくみをみていると、老齢厚生年金をもらいはじめる年齢にしても、若い人ほどおそくなるし、金額だって、一定の生年月日までは、若い人ほど少なくなる計算になっています。
なぜ、配偶者に対する加給年金にだけ、特別のプラスがついて、しかも、若い人ほど、増えるのでしょうか。増えるのいいけれど、不思議に思いませんか。
そのわけは、法律の条文に書いてあるわけではありません。ただ、若い人ほど、だんだんもらえる金額が少なくなっていく、それに対する「ごめんね」という意味だとも言われています。
「ごめんね」なんて言ってないよと、年金制度から叱られるかもしれませんが、年金額が少なくなっていく世代を補填するという意味で、「ごめんね」と表現しました。

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ここまで読むと、新年から、腹立ちを感じる人がいると思います。
配偶者のいない人は、きっと思うでしょう。同じように保険料を払っているのに、なぜ、配偶者のいる人だけ優遇されるの? 不公平じゃない? それに、若い人ほど年金額が下がることを補うために、加給年金でプラスをするのはおかしいよ。配偶者のいる人はいいかもしれないけれど、結婚していない私には、何の得もない!
そんな声が聞こえてきます。私もそう思います。
それから、国民年金だけの人も納得できないかもしれません。自営業の夫が妻を扶養していても、年金には何のプラスもないのですからね。
年金が増えるのはいいのです。でも、不公平な気がします。
結婚するとか、しないとかは、その人の選択肢であって、それで、年金額がかわってくるというのも、どうでしょうか。

今回は、加入年金の最初の一歩です。この加給年金のしくみは、年金制度の中でも、特に複雑でむずかしいと、私は思います。
「共働きだったら、ふたりとも、加給年金もらえるの?」などと、疑問もわいてきます。続きは、また、この次に。
今年も、どうぞ、よろしくお願いします。

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