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知っておきたい年金のはなし    第31号 2004年1月11日発行

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お正月はいかがでしたか。
私は、ほとんど、お正月らしいこともせずに、すごしてしまいました。
もうすぐ、年金改革についても、いろいろな動きが出てくると思います。4月からの物価スライドも気になります。
今回は、前回に引き続き、配偶者加給年金のお話です。

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第31号 加給年金のしくみをさぐる!
★★★ これは複雑! 配偶者加給年金 ★★★
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63歳の正夫さんが相談に来られました。正夫さんは、長年サラリーマン生活していて、今は、年金生活です。 正夫さんは、年金が減ったと言われます。昨年の4月にも年金額が下がったのに、今度の下がり方は大きいと。かなりお怒りのようす。
いろいろお話を聞くと、わかりました。正夫さんの妻は2歳年上。昨年10月10日に65歳になり、ずっと専業主婦で、国民年金だけだった妻は、すぐに老齢基礎年金の手続きをしました。11月分から年金がもらえるようになりました。
「思っていたより多かったわ」という妻に、
「よかったね」と言った正夫さん。
ところが、今度は、正夫さんの年金が11月分から減ってしまいました。正夫さんはどうしても理解できません。
なぜ正夫さんの年金が減ったのか、それは妻に対する加給年金がなくなってしまったからです。

●加給年金は配偶者が65歳まで

加給年金は「年金の家族手当」のようなもの。原則として厚生年金に20年以上加入していた夫には、扶養している妻がいると、プラスがつくことを、前回のメルマガでお話しました。
でも、これは妻が65歳になるまでのこと。正夫さんの場合も、妻が65歳になったので、加給年金はそこでおしまいになったのです。

●では、年下の妻のほうが得ってこと?

正夫さんは思いました。正夫さんの妻は年上。正夫さんは60歳から特別支給の老齢厚生年金をもらいはじめ、加給年金も最初からプラスされていました。正夫さんが63歳のときに、妻が65歳。正夫さんは3年しか加給年金がをもらっていません。
「では、もし妻が5歳年下だったら、私が70歳までこのプラスはあったのですね」
と正夫さん。そのとおりです。
「同じ保険料を払っているのに、それは不公平では?」
正夫さんはなんとなくすっきりしません。

●加給年金のスタートは?

他にも、正夫さんは疑問に思うことがありました。
「会社の後輩、昨年退職したのですが、妻のプラス分などないと言うのですが」
正夫さんは昭和15年生まれ。60歳から特別支給の老齢厚生年金(1階部分と2階部分)をもらえる世代です。
ところが、昭和16年4月2日よりあとに生まれた男性は、60歳から報酬比例部分の年金(2階部分)しかもらえません。
加給年金は、1階部分と2階部分、両方もらえるようにならないとプラスされないのです。正夫さんの会社の後輩は、60歳から加給年金をもらえない世代だったのです。
加給年金は1階としっかり手をつないでいて、2階とは手をつないでいないのですね。

●今後、加給年金のスタートは65歳になる?

そうですね。1階をもらう年齢がだんだんおそくなっていきます。つまり、それだけ、加給年金の開始も遅くなっていきます。
ゆくゆくは65歳からになってしまいます。

●年金額に差がでますね

特別加算のついた加給年金は、年間約40万円。(昭和18年4月2日以降生まれの場合)
5年分で約200万円。60歳からもらうのと、65歳からもらうのとでは、年金の受け取り総額に差がでます。

●加給年金は変身する!

妻が65歳になったら、加給年金は変身します。夫の年金からは消えてなくなるけれど、今度は、「振替加算」となって、妻の年金に上乗せされます。
正夫さんの妻が「思ったより年金が多かった」というのは、振替加算がプラスされているからです。

●変身するときに金額は減る

加給年金、そっくりそのまま妻の年金に上乗せされるのならいいのですが、そうではありません。金額は減ります。それは、若い人ほど少なくなり、昭和41年4月2日以降に生まれた妻はゼロになってしまいます。

●もし、妻がもっと年上だったら?

正夫さんが60歳になって年金をもらいはじめたときに、すでに妻が65歳になっていたとしましょう。その場合は、正夫さんは一度も加給年金をプラスされることなく、いきなり、妻の年金の「振替加算」となってしまいます。
自分で支払った保険料なのに、自分がもらうことがないなんて!

●熟年離婚

正夫さんの3つ目の質問は、友人が定年退職と同時に妻から離婚を切りだされていることでした。
「離婚したら、やはり、妻に対するプラスなんてつかないでしょうね」
そのとおり。加給年金はもらえません、加給年金をもらっている人が離婚すれば、そこでストップ。もし届出が遅れて、加給年金をもらいすぎていれば、必ず返さなければなりません。

●振替加算はなくならない

加給年金は離婚でストップしてしまいますが、いったんもらいはじめた振替加算は、その後離婚しても、なくなることはありません。

●再婚と加給年金

60歳で離婚。60歳から2階部分をもらい、62歳から1階部分ももらえる人の場合。加給年金は62歳からとなるのですが、60歳時点で妻がいなくても、62歳までに再婚していれば、加給年金はプラスされます。62歳以降に再婚しても、もうプラスはつきません。

●共働きの場合

どちらも厚生年金に20年以上加入している場合、夫にも、妻にも加給年金の権利ができます。では、ふたりとももらえるかというと、そうではありません。
ふたりとも加給年金の権利が発生した場合は、どちらももらえません。
(ただし、年の差や生年月日などの条件によって支給される期間がある場合もありますので、確認が必要です)

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配偶者加給年金は、特別加算も含めると、年間約40万円。(昭和18年4月2日以降生まれ)加給年金は、けっこう大きな金額です。
もらえる期間が限定されますが、離婚、再婚がからむと、知っているのと知らないのでは、ずいぶん、違ってきます。
「加給年金がもらえるうちに再婚したい!」なんて冗談で言われた方もありました。
でも、金額のことを考えると、冗談話ではありません。
しかし、だからといってそれまで離婚をがまんするとか、早く再婚してしまおうという問題ではありませんよね。
加給年金はこれからも続くのですかと、時々質問されます。今の時点で、廃止するなどという案は出ていませんが、実際に、加給年金の支給開始年齢にしても、だんだんおそくなっているのです。
私にとっては、いつまでも残るしくみのようには思えません。

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