★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 知っておきたい年金のはなし 第41号 2004年4月21日発行 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 「それでもやっぱり保険料を払いたくありません」 というメールをいただきました。 どう考えても納得できない年金制度だからというのがその理由。 私は「国民年金の保険料を払いましょうキャンペーン」をしているわけではないのですが、国民年金は強制加入で、そして、保険料をちゃんと支払わないと、困ったときにもっと困ったことになるというのが現実です。 知らないで損をするというのが一番困ったことなので、情報をお伝えしたいと思って、このメルマガも配信しています。 確かに不公平なことはたくさんあると思います。不公平と思われるもののひとつに、厚生年金と共済年金の違いもあるのでしょう。 今日は、その違いをさぐります。 …………………………………………………………………………………………… 第41号 厚生年金と共済年金 ★★★ 私たち、いっしょになれますか? ★★★ …………………………………………………………………………………………… 孝一さんは75歳。公務員一筋で働いてきました。今は、退職共済年金をもらって、妻とふたりで暮らしています。 孝一さんは病気がちなので、病院代がかかります。ひどくなると入院もします。個室でないと眠れないので、差額ベッド代を支払います。 孝一さんの「要介護度」は1。妻も介護保険の認定では「要支援」。介護保険を利用して、ヘルパーさんにきてもらおうかと思っています。 そんな孝一さんは、なるべく節約していますが、年金だけでは不足し、貯金の取り崩しです でも、まわりからは言われます。 「公務員は年金が多くていいね」 確かに、孝一さんの年金は会社員だった人よりは多いです。でも、孝一さんは思います。 「今でこそ公務員は人気があるし、安定していると思われるけれど、昔は安月給だったよなあ。 高度成長時代、民間の会社に勤めていた友人は、たくさん給料をもらっていた。自分とは比べものにならないくらい多かったなあ。 そういうことを棚にあげて、今の年金だけをみて不公平と言われるのはおかしいよ」 ●厚生年金も共済年金も1階は同じ 年金制度は2階建て。どの制度に加入していても、1階は同じでしたね。全国民共通の制度です。 国民年金に加入している人も同じ。国民年金に加入している人は1階だけ、厚生年金、共済年金に加入している人には2階もあります。 ●2階の大きさが違う 共済年金は、厚生年金よりも大きな2階。 計算式は基本的には同じですが、共済年金には「職域加算」というプラスがあります。 公務員の年金が多いといわれるのは、この職域加算があるためです。 ●どのくらいプラスがあるの? 職域加算のプラス部分は、共済年金に加入していた年数によって計算が違いいます。 公務員としての加入期間が20年以上になると、「率」が上って、年金は増えるしくみです。 ●退職一時金を返して年金につなぐ かつて、女性はいったん結婚したらその後働かないだろうと思われていました。結婚退職するような場合に、厚生年金から「脱退手当金」という一時金をもらった女性がたくさんいます。(現在はこういうしくみはありません) 「脱退手当金」をもらってしまうと、年金額にはつながりません。もらわなかったらよかったという女性にもたくさん出会います。 「もらわなかったら、もっと年金が増えていたのに。利息をつけて返してもいいから、年金を増やしたい」 今から返したいといっても、厚生年金では返すことができません。しかし、共済年金には、条件つきですが、いったん受け取った一時金を返して、年金としてもらえるというしくみがあります。(くれぐれも条件つきですから) ●在職中であればいい! 国民年金や厚生年金の場合、障害や死亡ということになった場合、「ちゃんと保険料を払っていますか」と問われましたね。 ちゃんと払っている人にはあげるけれど、ちゃんと払っていないとあげないということです。 しかし、障害共済年金や遺族共済年金では、それは関係ありません。在職中の障害や死亡であれば、いいのです。 ●遺族年金の違い 夫が死亡し、妻と夫の母が残されたとします。遺族年金は妻がもらうことになります。でも、その後、妻が死亡して、年老いた夫の母だけが残されても、夫の母は、息子の遺族厚生年金をもらえません。妻が死亡した時点でそれで終わり。 ところが、共済年金には「転給」というしくみがあって、こういう場合、おかあさんが息子の遺族共済年金をもらうことができるのです。 ●夫に年齢制限なし 厚生年金は男性には冷たくて、妻の死亡時、55歳未満の夫には、遺族年金の権利すら発生しません。 しかし、共済年金にはこの年齢制限はありません。 若い夫でも、若いからといってだめだということはありません。もちろん、その他条件は必要ですが、年齢で「足切り」されるようなことはありません。 ただ、もらう権利はあっても、実際にもらえるのは60歳から。これは、厚生年金と同じす。 ●市長、町長、村長などは、12年で年金が増える むずかしい言葉になりますが、「地方公共団体の長であった期間を有する者に係る退職共済年金の額の特例」というのがあります。 わかりやすくいうと、県知事、市長、町長、村長などは、12年間その職についていると、退職共済年金にプラスがあるということです。 ●60歳で退職、公務員になると 民間の会社で働いていて定年退職。その後、公務員になったとします。厚生年金をもらいながら公務員として働くわけですが、この場合は、働いているからといって、年金のカットはありません。 ●60歳で公務員を退職、民間の会社に勤めると 退職共済年金をもらいながら、サラリーマンになると、年金のカットの方法は厚生年金の場合と異なります。一律2割カットはなし。所得に応じて、カット率が決まっています。 …………………………………………………………………………………………… 基本的に、厚生年金と共済年金のしくみは、ほぼ同じです。 まったく違う家だったのですが、2階建ての制度になって、同じになるように近づけられてきたのです。 しかし、お話してきたように、違いもたくさんあります。全部は説明できませんが、もっともっと違いがあります。 最近「一元化」ということを小泉さんが発言しました。小泉さんのいう「一元化」には、いろいろな深い意味がありますが、厚生年金と共済年金をいっしょにしようという考え方は以前からありました。 だって、同じ2階建ての家なのですから。 でも、ほんとにいっしょになれるのでしょうか。 私はそう簡単になれないと思います。いっしょになるときって、高いレベルにあわせないですよね。レベルが違ったら、レベルの低い方にあわせることの方が多いです。 受け取る年金額では、厚生年金よりは有利な共済年金。共済年金に加入している人にとっては、わざわざいっしょになることはないと思うでしょう。 いっしょになって「くらし」が悪くなるのなら、いっしょにならないほうがいいですものね。 …………………………………………………………………………………………… 前回の学生無年金障害者のお話で、論理がおかしいのではないかというご意見もいただきました。支払っていないのだからもらえない、支払っていないのにもらうのは、それこそ不公平なのではないか、という主旨だったと思います。 確かに、これは「社会保険」です。福祉制度のように、ある一定の条件に該当すれば誰でも対象になりますというしくみではありません。 私が言いたかったのは、学生が任意加入であったこと。その間の障害なのです。 加入していない人はもらえないというのは原則ですが、サラリーマンの妻の期間は「カラ期間」として年金をもらえるかどうかの期間に加えています。 払っていない人だって、もらっているのです。 任意加入中の事故で障害の状態になった人には、救済措置があっておかしくないという思いでした。強制加入中の滞納ではありませんから。 いろいろなご意見、ありがとうございます。 ご意見をいただくと、私も考えるきっかけがたくさんできて、うれしいです。 …………………………………………………………………………………………… みなさまにご報告。 オールアバウトジャパンのスーパーおすすめサイト大賞2004メールマガジン部門にノミネートされていましたが、メルマガ部門大賞を受賞しました。 応援、ありがとうございました。 http://allabout.co.jp/super/2004/page_mail.htm …………………………………………………………………………………………… ■□■ おすすめコーナー ■□■ ★ライフサポートネット主催 年金セミナー★ 4月24日(土)福岡市東区 東市民センターにて セミナーは13:30から 「これからどうなる年金制度」の講師は菅野美和子、「その対策」の講師はFPの岡本啓子さんです。セミナー終了後、個別相談会も開催します。どちらも無料です。 参加ご希望の方は、メールにてお知らせください。定員30名。先着順。 ★モンタン5月号は4月25日に発売★ 「お金と人生のはなし」今回は菅野美和子が執筆しています。 モンタンは「人生を愉しむ九州の大人たち」の情報誌です。1冊500円。 書店でお求めください。 |