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知っておきたい年金のはなし    第42号 2004年5月1日発行

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国民年金を滞納していた閣僚がぞろぞろと登場しますね。
「注意していればよかった」などと反省の言葉がありますが、たくさんの所得があるので、国民年金に対する意識がなかったのかなと思います。
老後の生活を心配するから、年金が重要なんです。もし、たくさんお金があって、貯蓄で充分なら、年金の心配はしなくていいですものね。「たった794,500円」と思うかもしれません。
でも、多くの人にとっては、「たった794,500円」ではありません。これでは少ない、少しでも多くの年金がほしいのです。それだけ、老後の生活が不安です。
老後のことも心配ですが、遺族年金についても心配です。
今日は、遺族年金のお話です。

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第42号 シングルマザーの家庭では・・・
★★★ 遺族年金、もらえますか ★★★
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英子さんは38歳のシングルマザー。小学生の娘、かおりちゃんといっしょに生活しています。
出産するまでは教師として仕事をしていましたが、かおりちゃんが病気がちで、結局、退職してしまいました。
その後、いろいろあって、同級生の夫とは離婚。

パートタイマーとして入社した会社で、正社員となり、今は少ないながらも、自分の給料と養育費でなんとかやっています。
別れた夫とは、養育費の約束をしています。家庭裁判所で調停離婚をして、養育費の取り決めをしました。 しかし、毎月振込みがあったのは最初の2年。それ以降は、遅れがち。
そんなとき、元夫が交通事故にあったという知らせがありました。
英子さんはあわてました。
それをみていた会社の上司(男性)は言いました。
「英子さんは別れた夫のことが今でも心配なんだね」
「そんな心配じゃないですよ。死んでしまったら、養育費がもらえないからですよ」
と同僚の女性。
もし、英子さんの元夫が亡くなったら、養育費はもらえませんね。では、遺族年金はどうなるのでしょうか。

●元夫の年金は?

国民年金に加入だったのでしょうか。厚生年金に加入だったのでしょうか。
まず、ここが問題です。
死亡が国民年金加入中であれば、1階だけの遺族基礎年金。厚生年金加入中であれば、遺族基礎年金と遺族厚生年金です。
実は、彼は、数ヵ月前に会社をやめていました。自営業をはじめたのですが、なかなか思うようにいかず、それで、養育費も滞りがちになっていたようです。
つまり、国民年金加入中でした。

●ちゃんと保険料払っていた?

彼は、ちゃんと保険料を払っていたのでしょうか。
大学を卒業してからずっと会社員だったので、退職するまでは保険料の滞納はありません。問題は、この数ヵ月。
しかし、当然支払うべき期間の3分の2以上保険料を納めていることは確実なので、数ヵ月の滞納があったとしても、そのために遺族年金がもらえないということはありません。

●別れた妻は遺族年金をもらえない

英子さんは別れてしまった妻なので、遺族年金の対象にはなりません。
この場合、遺族年金の対象となるのは、娘のかおりちゃん。まだ、小学生ですからね。

●では、かおりちゃんは遺族基礎年金をもらえるの?

条件があります。
いっしょに住んでいる場合は問題ないのですが、両親は離婚していますね。父親とは世帯も別です。
ここでの条件は「生計維持」。
別れた父親が、子どものためにお金を出していて、それで子どもが生活していたということが証明されなければなりません。

●どうして証明するの?

かおりちゃんのために養育費が支払われていましたね。
その養育費の支払いは、生計維持を証明するものになります。
銀行振込なら、その記録がある通帳を用意します。
現金で送ってきているような場合は、現金書留の封筒や手紙など、絶対に残しておきましょう。
証拠をとっておくことが大切なのです。

●かおりちゃんはもらえるの?

生計維持が認められれば、かおりちゃんは、遺族基礎年金をもらえる遺族となります。
必要な書類を用意して、社会保険事務所で手続きをし、支給・不支給が決定されます。
(それぞれのケースによって違った結果になることがありますので、必ず、社会保険事務所で確認を!)

●でも、結局はもらえない

かおりちゃんに遺族基礎年金の権利が発生したとします。
でも、結局はもらえないのです。つまり、手元にお金はこないということです。
遺族基礎年金は「支給停止」となります。支給停止とは、年金をもらう権利はあるけれど、今は年金を支給する条件にあてはまらないから、ストップしておくよという意味です。
なぜ、もらえないか。
それは、おかあさんの英子さんといっしょにくらしているからです。
(おかあさんとも別れておばあちゃんに引き取られたなどという場合は、また、別の話になります)

●別れていなければもらえたもの

別れていなければ、英子さんが「子のある妻」として遺族基礎年金をもらうことができました。でも、別れてしまったので、英子さん自身には権利はできず、また、娘のかおりちゃんにも権利はできるけれど、結果としてはもらえないということになってしまいます。

●何の保障もないのですね

もちろん、死亡してしまったら、養育費は入りませんね。そして、遺族年金ももらえません。つまり、なんの保障もありません。
父親が子どもを受取人にして、生命保険をかけておいてくれたのならいいけれど。
かおりちゃんは父親の法定相続人ですが、マイナスの遺産が多いければ、結局、かおりちゃんには何もないということです。

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幸い、英子さんの元夫は、たいしたケガではありませんでした。
外傷だけで、すぐによくなることがわかりました。また、仕事もできます。
ほっとしたのは、英子さん。
ほんとは、こんなことでほっとする自分に対して、どこかでいらだちを感じています。
自分で選択した離婚だけれど、いったん専業主婦になった女性が、子どもを育てていけるだけの一人前の賃金を得ることは大変です。子育てにもお金がかかります。
約束している養育費は大きな存在です。
それにたよらなくても生活していければいいのですが、英子さんにとっては、たよらざるを得ない現状なのです。
今回は亡くなった夫が国民年金加入の話です。厚生年金加入であればまた話は違いますので、次回にお話しましょう。

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