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知っておきたい年金のはなし    第44号 2004年5月21日発行

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年金の未納問題、広がりましたね。
小泉さんまで出てきました。(坂口さんは大丈夫?)
国会議員だけではなく、マスコミに登場する人たちも、「私は未納していました」とおわびしています。
「制度が複雑なのでよくわからなかった」と言う国会議員に、年金法案の審議をする資格があるのでしょうか。みなさんの怒りは、わかってないくせに審議しているということと、議員年金をたくさんもらっておいて、一般の国民の年金を下げようというのが許せないということでしょう。
また、保険料未納期間については、2年をすぎれば、納めることができなくなってしまいますが、それをもっとさかのぼって、納めることができる法案を検討しているということです。(5月18日のニュースから)
これで、未納期間のある国会議員は納付済みとなって「めでたし、めでたし」ということになるのでしょう。 議員年金は不公平だというご意見も、たくさんいただきました。
確かに、国が約7割も負担している議員年金、不公平です。
これはまた別の話になりますが、公的年金の中にも職業による差はあります。国民年金は誰でもみんないっしょですが、厚生年金や共済年金は違います。
職業の違いによって年金はどうなっているのか、お話しましょう。

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第44号 職業による違い
★★★ 年金はみんな同じではない! ★★★
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登美子さんの夫は、長い間、船に乗っていました。
今はもう引退していますが、一度航海にでたら、数ヵ月帰ってこないくらしでした。登美子さんはその間、ふたりの子どもを育て、パートで働きなから、ひとりで何もかもしてきたようなものです。
今は夫も年金ぐらし。いっしょにいない時間が長かったので、これからはふたりの時間も大切にしたいと思っています。
登美子さんの家庭では、夫は粗大ゴミではありません。
自分のことはなんでもできる人なので、登美子さんは大助かりです。長い間海とともにくらしていた夫の趣味は家庭菜園。そこで育った野菜で料理をするのが、夫の楽しみです。登美子さんは近くの「宅老所」で給食の調理員として働いているので、その間の家事は夫がします。
ふたりの楽しみは温泉めぐり。そんなふたりの生活を支えてくれるのは、登美子さんのパート収入もありますが、なんといっても、夫の年金です。
登美子さんの夫は60歳になる前から年金をもらっています。

●どうして60歳以前から?

船員の人も、現在では、厚生年金に加入です。(昭和61年4月に、船員保険は厚生年金に統合されました)
しかし、同じ厚生年金だとはいっても、一般の人とは違う扱いです。年金をもらいはじめる年齢が早いのです。

●どうなっているの?

昭和21年4月1日以前に生まれた人は、55歳からスタート。ただし、その後、スタートラインはだんだん遅くなっていき、昭和29年4月2日以降に生まれた人は、60歳以降になり、将来的には、他の人と同じになる予定です。

●船員だけ違うの?

このしくみは、船員と坑内員に対してです。つまり、船に乗って働いていた人や、炭鉱で働いていた人は、それだけ、大変な労働だし、早く辞めてもいいように、特別になっていたのです。

●厚生年金でも、仕事による違いがあるのですね

そうですね。老後の年金額の計算は同じですが、今ではまだ、このようにもらい始める年齢に違いがあります。

●仕事による違いというと、公務員は年金が多いですね。

公務員には、職域加算という厚生年金にはないプラスがありますから、共済年金に加入している人は、その分、年金額においては有利です。
共済年金は、公務員だけではなく、私立学校の職員も、「私学共済」という共済年金です。
(私学共済に加入していない私立学校もありますが)

●共済年金ならみんな同じ?

そうではありません。
公務員の共済年金には、市長、町長など、一定の条件に該当した場合、割増しがあるなど、違いもあります。

●むかしは…

くわしいことは省きますが、以前は、警察に勤めていた人、消防署に勤めていた人など、他の人よりも年金をもらいはじめる年齢が早いなど、仕事による差がありました。
しかし、その後、移行期間があって、これからもらう人は同じです。
職業の違いによる差はなくしていこうということですね。
もっと過去のことを言うと、戦時加算というのがあって、戦争中、危険な地域に一定の期間以上派遣されていた場合は、年金額が増えるというしくみもありました。そのプラス分に該当している人は、今でもそれをもらっています。これは職業の差というよりも、戦争という特別の条件を配慮したものだと思いますが。

●考え方はかわる

仕事によっては危険で大変だから、そんなに長くは働けないだろうから、せめて年金でなんとかしてあげようという考えにもとづいて、職業による差があったのだと思います。 しかし、今はその考え方もかわりました。どの仕事であっても同じというのが、基本になっています。 ●国会議員の年金、目立ちます

国会の議員の年金、公的年金(国民年金・厚生年金・共済年金)ではないけれど、国からお金が出ているという点では、国の制度と考えていいでしょう。
職業による違いをなくすという方向性なら、いつまでも、おかしいですね。

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体力的にいつまでもできない仕事、ありますね。体力がついていかないから会社を辞めてくださいということではなく、その人にあった仕事にかえて、できるだけ長く働けるようにという配慮が必要なのです。60歳以下の定年制は法律違反です。
年金制度においても、職業による違いはありましたが、これからは「みんな同じ」になっていきます。「一元化」もそういうところからのはなしです。
では、国会議員だけは特別ですか?

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ところで、この未納問題について。
私にはとても不思議に思うことがあります。
なぜ、「○○さんが未納」だとわかったのでしょう。
年金の加入期間を知りたいときは、年金手帳をもって社会保険事務所に行けば、本人なら教えてもらえます。 代理人が行くときは、委任状が必要です。委任状もない人に、勝手に人の年金歴を教えないのが原則です。
じゃあ、どうしてわかったのでしょう。今は自主的に発表している人もいますが、最初の3人は、いったい誰が調べてきたのでしょう。江角マキコさんもそうです。江角さんが自分で「私、未納です」と手を挙げたわけではありませんね。
年金に関することは個人情報です。国会議員の未納は問題ですが、個人情報がどこかでもれているのは、また別問題だと思います。

それから、国会議員になって年金を支払っていないことは本人の自覚がないことで、許されることではないと思いますが、その人の過去の記録をみて、大学時代に未納だったといって、責められることでしょうか。 実は私にも未納期間があります。これは、自分で言っておきますね。
社会保険労務士の勉強をはじめてからはすべて納付済期間ですが、それまでは、まったく
わからなくて、関心なくて、数年未納になっています。
そんな自分の過去があるからこそ、年金のはなし、伝えたいのです。