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知っておきたい年金のはなし    第45号 2004年6月1日発行

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ある会社に社会保険事務所から問い合わせの文書が届きました。
「○○さんがそちらに勤めていると言っていますけれど、ほんとに勤めていますか。厚生年金に加入していないけれど、ほんとは、加入しなければならない人ではないですか」
社会保険事務所からの文書に、こんなふうに書いてあったわけではないですよ。
難しい文書をかんたんにすると、こういうことだったのです。
詳しい説明ははぶきますが、しっかり、チェックが入っているのです。
厚生年金に加入しなければならない人が、ほんとに加入しているかどうか、保険料を払いたくないからといって、ごまかしていないかどうか。
今回のケースは、短時間のパートタイマーだったので、「該当しません」とお返事してすんだのですが、チェックはきびしいものだと思いました。
未納問題、ますます、「知らなかった」ですむことではないと思います。
今回は、お話を少し前にもどして、遺族年金のお話をしましょう。

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第45号 遺族年金、もらえる?もらえない?
★★★ いっしょにくらしていた証拠 ★★★
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圭子さんは、40歳。中学生の娘、美鈴ちゃんとふたりぐらしです。
実は、夫が8年前に行方不明となりました。圭子さんは多くを語りたくはありませんが、借金の問題など、お金のトラブルがありました。
美鈴ちゃんは、生まれた時から障害をもっていて、圭子さんが介護しています。その介護のため、圭子さんは働けず、出産後は、ずっと専業主婦でした。
夫の行方不明には困りました。夫は会社員だったのですが、行方不明になる直前に、圭子さんには黙って、退職届を出していました。
圭子さんは夫を探しました。しかし、行方はわかりません。
圭子さんはたちまち、生活に困りました。
結局、家賃の安いアパートに移り、親の援助もうけ、1年後には、児童扶養手当をもらえるようになり、また圭子さん自身も、仕事をするようになりました。
今、美鈴ちゃんはお迎えのバスで登下校していますが、下校してからあとのお世話は、「障害者支援費制度」を利用して、ヘルパーさんにきてもらっています。
若いヘルパーさんがおねえさんのような人なので、美鈴ちゃんもすっかり仲良しになり、圭子さんも少しはらくになりました。
そういう暮らしが続いていたとき、ある人から、夫の死亡を教えられました。行方不明だった夫は、2ヵ月前に、事故で亡くなっていたのです。
圭子さんは思いました。今も苦しいくらし、せめて、遺族年金をもらえないのでしょうか。

●年金はどうなっていたのでしょう?

圭子さんの夫は、死亡当時、会社員ではありませんでした。8年の間、どうして暮らしていたか、圭子さんにもよくわかりませんが、厚生年金加入ではなく、国民年金の保険料も払っていないことがわかりました。

●滞納中に死亡したら、どうなるの?

圭子さんの夫が、当然納めるべき期間の3分の2以上、保険料を納めていたかどうかということがポイントです。死亡当時は夫は43歳。20歳から38歳までは厚生年金加入。
3分の2以上の期間は保険料を納めていたので、遺族年金の条件、まず、ひとつはクリアーです。

●遺族年金は2階分もらえるの?

残念ながら、1階だけ。遺族基礎年金だけです。国民年金期間における事故による死亡ですからね。国民年金に入っていないとはいっても、それは本人の自覚がないだけで、20歳から60歳の人は、みんな国民年金に入っているのです。

●誰がもらえるの?

遺族基礎年金は、子のある妻か、子が対象になります。つまり、圭子さんと美鈴ちゃん。妻も子もいるときは、妻が優先されます。この場合は、圭子さんです。

●よかった、もらえるのですね

ところが、そうはいきません。
遺族年金をもらう条件には、「生計維持」と言う条件があります。
つまり、「亡なくなった人の援助を受けて生活していましたよ」という証明が必要なわけです。

●どうして証明するの?

年金の請求手続きに必要なものは、戸籍謄本と住民票。戸籍謄本で、妻であるとか、子どもであるとかを確認します。そして、住民票が同じなら、「いっしょに暮らしていたよ」と認められるわけです。

●住民票は別でした

圭子さんは、離婚したわけではありません。戸籍上、夫婦のままです。ただし、住民票は別でした。安い家賃の家に移るために、住民票を移しました。また、児童扶養手当は、夫と住民票が同じであれば、もらえません。

●証拠がないよ

圭子さんは実際に夫に扶養されていたわけではありません。確かに、夫が出て行くまでは、扶養されている妻でした。しかし、夫が出ていってからは、夫の援助はまったく受けていません。ほんとは、援助が必要だったのに、不可能になってしまったのです。
どんな事情があったにしても、遺族年金の請求に必要な「生計維持」の実体がないし、証拠もありません。

●遺族年金はもらえないの?

もらえる、もらえないの判断は社会保険庁です。個々のケースによって違ってきますので、絶対にもらえないとはいえませんが、「生計維持」を証明しない限り、もらえません。
圭子さんは、生活費を受け取っていたわけではないので、法律上の妻であるからといっても、それだけではもらえません。

●もし、夫が仕送りしてくれていたら?

住民票が別になっていても、夫が援助していればいいのです。しかし、そのときは、証拠をしっかり残しておく必要があります。
銀行への振り込みなどですね。他人の証言だけでは、むずかしいことが多いです。

●住民票がいっしょになっていたら?

もし、行方不明になっても夫と住民票がいっしょだったら、どうなっていたでしょう。
実体がなくても、書類がそろっていたら、ほんとはもらえない遺族年金が支給されたかもしれません。

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圭子さんとは反対に、事情があって形式上は離婚し住民票も別にしているが、同居しているという場合、その夫が死亡したら、簡単に遺族年金はもらえません。これはまた、同居しているという証拠が必要です。ほんとは一緒に住んで、生活費ももらっていたのに、遺族年金をもらえないということもあります。
ふつうは、夫婦がいっしょに暮らしているという証拠を取っておこうなんて、あまり考えませんね。
戸籍もいっしょ、住民票もいっしょであれば、なんら証拠をとっておく必要はありませんが、そうではない場合は、「いっしょにくらしていた証拠」がいるのです。
圭子さんのケースはどう考えたらよいのか、むずかしいです。生計維持ではないから年金はもらえない、しかし、ほんとは、夫に扶養されているはずだったのに…
扶養されているはずの妻や子が、扶養されていなければ、どんなに困っていても、遺族年金はもらえません。
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