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知っておきたい年金のはなし    第47号 2004年6月21日発行

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暑くなってきましたね。
冬の寒さもどこへやら、早く涼しくなってほしいと思ってしまいます。
しかしながら、もっと熱くなってほしいものは、年金に対する思いです。 年金改革法案が国会を通ったとたん、年金に対する声がトーンダウンしたような気がします。
こんなしくみでは困るよ、こうあってほしいという思いは、
もっともっと熱くならないと、私たちにとって、いい制度にはなりません。
これで終わったのではなく、見えないところで、次への準備が進んでいるのです。
ところで、話はがらりとかわりますが、税法と年金法、どこが違うと思いますか。
それは、「結婚」というものをどう考えるかです。
税法では、法律婚でないと、「夫婦」とは認めてくれません。戸籍上の妻であれば、配偶者控除も受けられるし、相続税にしてもある一定の金額までは、税金がかかりません。
しかし、年金法では、戸籍は別々の「事実婚」であっても夫婦として認める考えです。いっしょに暮らしていた証拠さえきちんとあれば、遺族年金だって、もらえます。

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第47号 誰がもらえる? 遺族年金
★★★ 妻の座はどちらに? ★★★
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久美子さんは、時々、人から言われます。
「なぜ籍を入れないの?」
久美子さん夫婦は、戸籍上の夫婦ではありません。夫婦であることにはかわりないけれど、戸籍上の届出を出していません。お互いに姓を変更したくないからです。
日本の法律では、結婚の届出を出すと、どちらかの姓になってしまいます。夫婦別姓法案は、なんだかんだと理由がついて、なかなか国会をとおりません。
久美子さんは仕事の上でも、これ以上名前をかえたくなかったし、実は、いろいろなわけがあったのです。
久美子さん夫婦はバツイチどおしの再婚。これからも、籍は入れないつもりです。
最近久美子さんは病気で入院しました。ずっと働き続けようと思っていましたが、病気になると、急に将来のことが不安になってきました。そして、年金のことも。
籍の入っていない事実婚の夫婦でも、夫が死亡したときは、遺族年金、もらえますか?

●事実婚でも大丈夫

年金制度では、戸籍上の夫婦ではないからといって、不利益な扱いは受けません。実態をみます。
実質上の夫婦であるなら大丈夫。
加給年金ももらえますし、遺族年金ももらえます。

●しっかり証拠はとっておいて

ただし、夫婦であるという証拠が必要です。住民票で「未届けの妻」あるいは、「未届けの夫」となっていれば、それは動かぬ証拠となります。

●「未届けの妻」ってなあに?

結婚して入籍して、夫を「世帯主」として届ければ、配偶者は「妻」という続柄になります。
戸籍上の届出を出していない場合は「未届けの妻」という続柄になります。
世帯主は別に夫とは限りませんよ。誰でもいいのですよ。妻を世帯主とすれば、夫は「未届けの夫」となります。

●久美子さんは未届けの妻?

久美子さんは再婚するときに、「未届けの妻」と書いて、市役所で住民票の手続きをしました。
しかし、しばらくして、市役所から連絡がありました。
続柄を「同居人」に変更すると。

●「同居人」ってなあに?

その名のとおり、いっしょに住んでいる人。
久美子さんは、あまり言いたくないのですが、実は、再婚した当初、夫には「戸籍上の妻」がいたのです。もちろん、すべてをわかった上でのことでしたが、「未届けの妻」と書いてみました。あとで、やはり「未届けの妻」にもなれないと連絡がありました。その後、夫と元妻の離婚が成立したので、住民票の記載は「未届けの妻」に変更しました。

●同居人の場合、年金はどうなるの?

久美子さんが「同居人」となっていた期間、久美子さんの夫には、戸籍上の妻と、事実上の妻がいたことになります。年金制度では、このような関係を「重婚的内縁関係」と言います。
単に事実婚なら、加給年金も遺族年金も問題ありませんが、このような場合、もし夫が死亡したのなら、遺族年金は誰がもらうのでしょうか。戸籍上の妻でしょうか、それとも久美子さんでしょうか。

●実態をみて

戸籍上の妻とは、まったく夫婦としての実態がないときに、事実上の妻は遺族年金の対象となりますが、そうであるとはいえない場合は、戸籍上の妻が優先されます。
戸籍上の妻とはまったく関係なく、久美子さんが事実上の妻だと判断されれば、久美子さんが年金をもらえます。
ただし、久美子さんが妻として認めれるのは、概ね10年以上いっしょに暮らしているなど、必要な条件があります。(10年以下でも認めらたケースもあるので、あくまでも参考にしてください)

●戸籍上の妻だからといって

ただし、戸籍上の妻が、絶対にもらえるとも言えません。

●たとえ夫が悪くても

夫が妻を捨てて新しい女性といっしょになるような場合、あきらかに夫に原因があるというような場合で、そのことが、「良い」とか「悪い」とかは、関係ないのです。
あくまでも、どちらが妻として認められるかです。

●いったいどっち?

久美子さんの場合、今はもう大丈夫です。「重婚的内縁関係」ではありませんし、住民票でも証明できるのですからね。
しかし、夫の元妻がいつまでも、離婚に応じなくて、その間に、夫が死亡ということになっていれば、これはむずかしい話でした。
元妻に、仕送りをしていた期間もあったので、とくにその間は、どちらが、「妻となるか」となると、それは私には言えません。遺族年金をふたりがあらそった場合、判定はどうでるでしょうか。

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戸籍上の妻でなくても、その実態をみて妻と認め、加給年金も遺族年金も対象となるというのは、考えてみれば、年金もずいぶん進歩的です。
これは、健康保険も同じ。未届けの妻でも、健康保険の扶養家族になれますよ。
税法ではだめ。久美子さんは夫の相続人にはなれません。これは籍を入れない限りだめです。
また、こんなこともあるのですよ。
久美子さんは夫が死亡したら自分が受取人になるような生命保険に加入しようとしました。そのとき、断られました。法律上の夫婦でないと、むずかしいと。(ただし、こういう条件でも加入できると場合があるかもしれませんので、確認してください)
いつまでも古い考え方をもっているような年金制度ですが、こういう点では、意外にも進歩的です。
籍を入れない結婚も、これからはもっと増えると思うのです。
夫婦別姓になればいいのですが、自分の名前、変えたくない場合もあるし、変えると都合の悪いことだって、たくさんありますよね。

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