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知っておきたい年金のはなし    第52号 2004年8月11日発行

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残暑お見舞い申し上げます。

あちこちで話題に出る、社会保険庁の年金支給ミス! 
社会保険庁も間違うことがあるときくと、ほんとにこの年金額は正しいのかしらと不安になってくる人もいるでしょうね。
年金の計算方法なんて、わからない人のほうが多いです。
年金は加入した期間が長いほど多くなるというのが原則ですが、実は、思いがけない「年金が増えないしくみ」があるのです。
わかりやすくいうと、加入期間がどんなに長くても、ある一定の上限をもうけて、「頭打ち」にするようなしくみがあるのです。

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第52号 60歳から65歳未満の老齢厚生年金
★★★ 37年で頭打ち! ★★★
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清さんはもうすぐ60歳。定年退職となります。
会社には、再雇用制度があって、希望すれば、会社で仕事を続けられます。
清さんの趣味は絵画。スケッチをしたり、油絵を描いたりします。
退職して、絵を描いてすごしたいという気持ちがありますが、妻には反対されています。
自分でも、お金の面で心配です。
働けるときには働いて、収入を得たほうが、老後の暮らしはらくになります。
年金額の見込みも出してもらいました。会社で働き続ければ、年金をカットされますが、それでも、手取りは、働いたほうが多くなることがわかりました。
あと、1年でも、2年でも働こうかなという気持ちに傾いてきました。
働けば働くほど年金も増えると聞いたので、もし、62歳まで働ければどのくらい年金が増えるか、計算してもらいました。
しかし、その結果をみて、清さんにはどうしても理解できないことがありました。
年金は2階建てだというしくみはわかっています。
60歳で退職したときと、62歳で退職したときの年金額を比べてみましたが、2階部分の年金は増えているのに、1階部分の年金は増えません。そこが、清さんには、理解できません。なぜでしょう?

●清さんの年金は

清さんは、今年60歳になります。
22歳から60歳まで会社員。38年の厚生年金加入期間です。
60歳から2階部分の年金(報酬比例部分)をもらって、62歳から1階部分の年金(定額部分)をもらいます。
62歳にならないと、1階と2階、両方の年金をもらえない生年月日の人です。

●1階の年金は「老齢基礎年金」ではないのですか?

1階の年金、全国民共通の老齢年金は65歳からです。
厚生年金に加入していた人は65歳未満であっても、生年月日によって、1階の年金がもらえます。しかし、それは、老齢基礎年金とは言わずに、老齢厚生年金の「定額部分」といいます。

●特別にあげるよ

本来、老齢厚生年金は65歳から。しかし、現在は、60歳の人であっても支給されています。今は、年金のスタートラインが、65歳に移る「過渡期」にあるのです。
だんだんと65歳に近づけられていくのです。
ですから、65歳未満は、「特別に老齢厚生年金をあげるよ」という意味です。
2階の計算式は、最初から最後までずっと同じですが、1階が違います。
特別にもらっている間は、「老齢基礎年金」の計算式ではなく、「定額部分」の計算式という、また、違った方法で計算します。

●計算式が違うと、金額も違うの?

そうです。将来はどちらで計算しても端数の違いぐらいで、同じ金額になりますが、現在は、定額部分の計算式が有利です。
65歳になるまでは、この定額部分の計算式を使い、65歳以降は、老齢基礎年金の計算式を使います。

●じゃあ、65歳になったら、年金は減るの?

最初が有利な計算式ですので、当然、減ります。しかし、そこは、よく考えたもの。
減らないように、差額が支給されるようになっています。

●清さんの年金はなぜ増えないの?

年金は加入期間が長ければ長いほど、増えるしくみ。そのとおり、2階の年金は増えます。
ところが、1階の年金である定額部分の年金は、そうではありません。
ある一定の期間までは、増えますが、一定の期間をすぎると、増えないしくみになっています。

●どうして?

それは、どんなに長く加入していても、37年以上は、カウントされないからです。
38年であっても40年であっても、37年でしか計算されません。

●清さんも37年の頭打ちになるのですね

そうです。22歳から60歳まで、38年間厚生年金に加入。そのあと、60歳から62歳まで、2年加入しても、1階の年金は増えません。
もちろん、2階は増えますよ。

●ちょっと、おかしいよ。保険料はちゃんと払っているのに!

保険料が半分になるのならまだ納得できますが、同じように払っているのに、増えないなんて、どう考えてもおかしいですね。「だまし打ち」のような気もします。
だいたい、37年の頭打ちがあるなんて、わかっている人はどれだけいるでしょうか。
●そこで、法律は変わりました

前から、おかしいよと言われていて、今回の年金制度改革で変更になりました。
ただし、段階的に引きあげていって、昭和21年4月2日以降生まれの人は、上限を40年として計算されます。
40年ない人は、当然、実際の期間ですよ。

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あたりまえのことと言えば、あたりまえです。実際の期間で計算するのですからね。37年の上限を作るほうがおかしいです。
ただし、この上限も、昔はもっと低くて、だんだんと37年まで引きあがられてきたという経過があります。
私が問題にしたいのは、こういうしくみって、なかなか、一般の人には、わからないということです。
40年働いていたのに、40年も保険料払ってきたのに、1階の年金が37年で計算されているなんて、思いもしませんよね。
こんなところで、「損」しているのです。
もっとわかりやすいしくみにする必要があるのに、年金制度の複雑怪奇度は、どんどん上がっていきます。

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