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知っておきたい年金のはなし    第53号 2004年8月21日発行

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時々、海外に住んでおられる方から相談のメールがあります。
年金でわからないことがある場合、日本国内に住んでいれば、社会保険事務所などに電話して聞くこともできますが、遠く海外から電話もしにくいですよね。
海外に住んでいる方にとっては、日本の年金についての情報が身近にあるわけではないし、こういうサイトがお役にたっているのかなあと思います。
今日は、突然、海外赴任することになった、恵美さん一家のお話です。

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第53号 外国で暮らします
★★★ 年金はどうなるの? ★★★
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恵美さんは大学を卒業して就職した会社を2年で辞めました。
「しっかりしたところを就職できてよかったね」と言われたものですが、実際に入社してみると、毎日、残業の連続。体調が悪くなって残業を断ると、今度はいやがらせにあいました。
このままでは身体をこわしてしまうと思って、「自己都合」で退職しました。
恵美さんは、両親と3人で暮らしています。ちょうどそのとき、いっしょに暮らしているお父さんが、ロンドンへ赴任することになりました。突然の海外赴任となって、みんな、あわてました。ロンドン行きを断るわけにはいきません。
お父さんは慣れない海外暮らしに不安をもっているようでしたが、お母さんは乗り気でした。お母さんはパートで働いていますが、その仕事を辞めて、いっしょに行くと言います。
ロンドンで暮らせるなんてめったにないことだし、いいチャンスだと、いつも行動的なお母さんは考えました。それにお父さんを一人で行かせたら心配です。
恵美さんも考えました。私もいっしょに行こうかしらと。
大学では英文科にいた恵美さん。英語を生かす仕事がしたいと思っていましたし、もう少し勉強したい気持ちになっていました。ロンドンで学校に行くことにしました。
みんなでロンドンに行くことに決めたのです。
いつまでも、親と住むのも、親の経済力に頼るにもいやでしたが、自分の貯金も少しはあるし、期間を決めてロンドンで勉強してみよう、その間は親に世話になろうと、恵美さんは思いました。しばらくは「パラサイトシングル」に決めました。
ところで、恵美さんの両親は50代です。
「外国へ行ったら、年金はどうなるのかしら」
とお母さんが言いました。
さて、恵美さん一家、年金の加入は、海外赴任でどうなるのでしょう?

●厚生年金はそのまま加入

お父さんは会社員で、厚生年金年金に加入しています。
海外の支店へ勤務となっても、日本の会社に勤めているのは同じこと。厚生年金には今までと同じように加入し続けます。
ですから、何の問題もありません。

●お母さんは?

お母さんの収入は100万円ほど。だから、お父さんの扶養に入っています。
国民年金の第3号被保険者です。
お母さんの場合も、変化はありません。
第3号被保険者としてそのままです。

●日本に住んでいなくても厚生年金には加入できるのですね?

「国内に住んでいなければならない」という条件は、厚生年金にはありません。
日本の会社に在籍して海外赴任ということもあるので、そうなっています。
第3号被保険者も、「国内に住んでいなければならない」という条件はありません。

●恵美さんは今、どうなっているの?

恵美さんは現在、国民年金の第1号被保険者です。会社を退職してしまったので、厚生年金ではなくなり、国民年金に加入です。
失業中なので、免除申請をしてみようかなとも思いましたが、「払えるのなら払っておいたほうがいいよ」とまわりから言われて、自分で保険料を払っています。

●海外へ行ったら?

恵美さんのように国民年金の第1号被保険者は、海外に住むと、強制加入ではなくなります。
つまり、国民年金に入ってもいいし、入らなくてもいいし、どちらでもいいよということになります。任意加入です。

●国民年金に入らなかったら?

入らなくても法律違反ではないし、入らない期間は「カラ期間」として、年金をもらえるかどうかをみるときには、有効です。
しかし、年金額にはつながりません。
入らないと、老後の年金をもらうときに、その期間分、年金が少なくなってしまいます。
海外暮らしが長くて任意加入していないと、年金はもらえるけれど、ちょっとしかないなんていうことにもなります。

●障害年金は?

国民年金に入っていない間に、事故などにあって障害の状態になっても、障害年金はもらえません。

●国民年金に加入するのには、どうすればいいの?

海外に行く前に、市区町村役場で、自分で手続きできます。しかし、その場合、協力者(同じ市区町村に住んでいる親族など)が必要です。
協力者がいない場合は、日本国民年金協会に依頼します。
日本国民年金協会に電話をしたら、手続き書類は送ってくれますよ。

●海外に行ってからでも手続きできるの?

すでに海外に住んでいる場合も大丈夫です。日本国民年金協会に連絡してください。手続き書類を送ってくれます。(連絡は電話でもファックスでも郵送でもOK)
日本国民年金協会のHPに詳しいことが載っています。  http://www.nenkin.or.jp/

●任意加入したほうがいいの?

言えることは、加入しないと、将来もらう年金額が減るということです。
あとは自分の判断ですね。
保険料の負担ともらえる年金額、どう考えますか。どちらにしても、長生きしてしっかりもらわないと、年金ではお得になりません。

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恵美さんは、国民年金に任意加入することにしました。
13,300円は大変ですが、将来どうなるかわからないし、払えるときには払っておこうと思ったのです。
20代の若い世代は年金なんてどうなるかわからないよとよく言いますが、どんなことがあっても最後に残るには「国の制度」ではないかと思います。
恵美さんはそう思って任意加入することにしましたが、それにしても、お母さんはいいなあと思いました。保険料を払わなくても払ったことになるのですからね。しかも、もらえる年金はいっしょだなんて!
不公平な気がするけれど、親の年金はたくさんなければ困ると思います。今、親のすねをかじっておきながらいい気なもんだと言われるかもしれませんが、将来、親から、お金がないので援助してほしいと言われても、そのときに援助できるかどうかわからないですものね。そこまで収入があるかどうか・・・
親の年金は、若い世代の問題でもあるのです。

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