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知っておきたい年金のはなし    第55号 2004年9月11日発行

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年金はなんのためにあるのでしょう。
私は、歳をとって働けなくなったとき、ケガや病気で働けなくなったとき、一家の稼ぎ手が死亡して充分に働けない家族が残されたとき、つまり、困ったときに助けてくれるためにあるのだと思っています。
もし、困らなければ、助けてもらう必要はありません。
老後の年金は、「もし長生きしたら」という長生きリスクに備えるものだと思います。早くに死んでしまったら、それだけお金は必要ありません。
死んでしまう瞬間に「早く死んで、年金で損したなあ」と本人は考えないでしょう。
こういう話をしたとき、セミナーに参加していた方から意見がありました。
「私は国民年金課の窓口で受付をしていました。遺族の方は、よく言われるのですよ。こんなことなら、年金の保険料なんて払わなければよかった、早く死んで損をしたと。よく叱られました」
死亡した本人はそんなことを思わないでしょうけれど、残された家族はそうなのでしょうね。特に国民年金の場合は・・・
年金って、何のためにあるのでしょう。

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第55号 年金は何のため?
★★★ 保険料を払って得? 払って損? ★★★
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千恵美さんは、夫と2人で八百屋をしてきました。夫の両親から受け継いだ店で、結婚後は、夫婦ふたりでやってきました。
しかし、町の小さな八百屋は、大きなスーパーマーケットがまわりにできてから、経営が大変でした。細々とやってきたのですが、夫が65歳になって、国民年金をもらうようになって、店をしめました。ふたりの子どもたちは会社勤めで、あとを継ぐ人もいません。
夫はずっと自営業だったので、国民年金だけです。幸い、きちんと保険料を納めていたので、年間約80万円の満額の老齢基礎年金をもらっています。
もちろん、それだけでは暮らせませんが、これまでの貯蓄もあります。
2歳年下の千恵美さんも65歳になったら、年金がもらえます。ふたり分あれば、家も持ち家なので、なんとか、やっていけそうでした。
ところが、夫が亡くなりました。66歳でした。突然、倒れてそのままでした。
千恵美さんは1ヵ月たって、夫の年金には何も手続きしていなかったので、死亡の手続きをしにいきました。夫は、たった1年しか、年金をもらっていなかったので、残された遺族に何かもらえるものがあるだろうと思いました。
ところが、遺族年金は何ももらえないと言われました。千恵美さんがもらえるのは、夫が生きている間にもらえるはずだった1カ月分の年金を「未支給の年金」としてもらえるだけでした。
「まだ、ちょっとしかもらってないよ。保険料をあんなにたくさん払って損したよ」
と千恵美さんは思いましたが、ほんとにそうなのでしょうか。

●遺族基礎年金はもらえない

国民年金に加入していた夫がなくなれば、「遺族基礎年金」がありますが、これは、「子のある妻」か「子」のみが対象。
千恵美さん夫婦には、子どもがいるけれど、すでに20才以上で独立しているので、年金でいう「子」には該当しません。
千恵美さんは遺族基礎年金をもらえません。

●他にはないの?

寡婦年金というしくみがあります。
これは第1号被保険者として25年以上きちんと保険料を納めていた夫が死亡した場合、結婚10年以上の夫婦であれば、その妻が、60歳から65歳になるまでもらえるという年金です。
しかし、夫がすでに老齢基礎年金をもらっていれば、もらえません。
千恵美さんはこれももらえません。

●もっと他には

死亡一時金があります。これは、その名のとおり、1回限りのもの。
ただし、夫がすでに老齢基礎年金をもらっていれば、やっぱり、もらえません。
千恵美さんは、これももらえません。

●じゃあ、何もないの?

そのとおりです。遺族給付ととしてのお金は何も入ってきません。
ただし、年金はあと払いです。
死亡した月までは、本人の年金がありますので、当然本人がもらえる年金がまだ支給されないで、残ってしまう形になります。
それを「未支給の年金」というのですが、このケースでは、千恵美さんがもらえます。
千恵美さんの場合は、1カ月分でした。

●しつこいようだけれど、もうないのですね?

残念ながら、ありません。
これが、厚生年金加入の夫なら、遺族厚生年金があったのですが、ずっと自営業の夫、すっと国民年金だけの夫の死亡では、何もありません。

●まだ、ちょっとしかもらってないよ

千恵美さんの夫のように、やっと年金をもらいはじめるようになって、すぐに亡くなってしまえば、払った保険料と受け取った金額を考えると、とんでもない「損」になってしまいます。
●長生きリスク

千恵美さんの夫には結果として「長生きリスク」がおこらなかったといえます。
また、今の国民年金の遺族保障は、「子のない妻」に対しては、最初からそんなに手厚く考えていませんでしたので、千恵美さんには、遺族保障もないということになります。

●年金は積立預金ではありません

毎月積み立てする「積立預金」のようなものなら、お金がきちんと、積立られていて、たとえ本人が死亡しても、残された家族が残金を受け取ることができますね。
ところが、年金は積立預金ではありません。
ここを勘違いすると、支払った保険料分損したと思ってしまいます。
本人にとって「損」と言えば損なのですが、もともとのしくみが違うということです。

●ずっと面倒みてくれるのが年金です

死んでしまえばおしまいですが、生きている限り、その条件が続く限り、もらうことができる、それが年金です。

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千恵美さんは「夫はたくさん保険料を払ってちょっとしかもらっていない、しかも、ふたり分の年金でこれからの暮らしを考えていたのに、私に何もないなんて、これはとんでもないことだ」と思ったのです。
その気持ちはわかりますね。
しかし、だからといって、保険料を払わないほうがよかったと言えるでしょうか。
千恵美さんの夫がもっと長生きできれば、その暮らしを支えてくれるのが年金だったのです。
無年金になって長生きしたら、「保険料を払っておけばよかった」と思うでしょう。
「長生きのために備える」と考えてみることが大切だと思います。

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