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知っておきたい年金のはなし    第60号 2004年11月1日発行

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先日、ある企業で、「シングルマザーのためのライフプラン」というテーマで、社員さんにお話しさせていただきました。
シングルマザーの社員が増えてきたから、役にたつことを知っておいてほしいという企業としての企画でした。
そこまで考えてくれる企業に、とてもうれしくなりました。
シングルマザーとして知っておきたいこと、いろいろあります。シングルマザーといっても、離婚や死別、最初からシングルなど、立場によって違ってきます。
今日は、夫の死亡で遺族厚生年金をもらっている里子さんのおはなしです。

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第60号 老後の年金と遺族年金
★★★ 遺族年金をもらいながら働くと ★★★
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里子さん、昨年夫を病気で亡くしました。夫55歳。里子さん53歳でした。
上の娘はすでに社会人、下の娘は県外の大学生で、夫婦ふたりのくらしでした。そして、夫が亡くなり、里子さんはひとりになりました。
当面、お金はなんとかなりそうです。生命保険からの死亡一時金があります。遺族厚生年金ももらっています。
しかし、ひとりの生活になってしまい、里子さんはがっくりきています。
夫が病気になったので、それまで、パートで勤めていた会社を辞めて、今は仕事もしていません。よけいに寂しく感じます。
そんなとき、知人から、声がかかりました。
「うちの会社を手伝ってほしい」
給料はそんなにたくさん出せないけれど、正社員として仕事をしてほしいという話でした。もちろん、社会保険にも加入します。
里子さんは、ひとりで元気をなくしていたので、自分のためにも、外で仕事をしようと思いました。
そのことを友人に話すと、「遺族年金、もらえなくなるんじゃないの?」と言われました。
そう言われると、里子さんは心配になってきました。遺族年金がもらえないのも困ります。お金より、生きがいだとは思いますが、さて、どうでしょうか。

●収入があっても大丈夫

里子さんが会社に勤めて、給料が入るようになっても、現在の法律では、遺族年金がもらえなくなるようなことはありません。
厚生年金に加入した場合に、カットの対象になるのは、60歳以降の自分の老齢厚生年金です。
遺族年金の場合は、関係ありません。だから、もらえなくなることはありません。

●でも、損するって聞くけれど?

確かに、そんなふうに言う人もいます。
それは、こういうことなのです。

●60歳以降の年金は?

里子さん自身の老後の年金は、これから会社で厚生年金に加入すると、1階にあたる老齢基礎年金と2階にあたる老齢厚生年金がもらえるようになります。厚生年金の加入期間があれば、2階付きの年金です。
自分の老齢厚生年金と遺族厚生年金、ふたつの権利ができることになります。
しかし、60歳から、65歳になるまでの間は、両方もらえません。どちらかを選択します。
会社勤めていると、確かに老齢厚生年金につながります。でも、遺族厚生年金のほうが多いなら、遺族厚生年金を選びますよね。そうなると、せっかくの老齢厚生年金は「掛け捨て」のような感じがします。

●ほんとに「掛け捨て」になるの?

自分の老齢基礎年金(1階)につながります。
里子さんは遺族厚生年金をもらっているといっても、60歳になるまでは、国民年金へ強制加入。ですから、国民年金の保険料を支払わなければなりません。(もちろん、生活が苦しいときは免除の申請もできます)
遺族年金をもらっていても、国民年金の保険料を払わないと、1階にあたる自分の老齢基礎年金は増えません。
厚生年金加入期間も老齢基礎年金につながるので、決して「掛け捨て」ではありません。
自分の老齢基礎年金を増やしていることになるのです。

●65歳をさかいに変わる!

65歳になるまでは、遺族厚生年金か、老齢厚生年金(定額部分・報酬比例部分、生年月日によってスタートラインが異なるので確認を!)か、どちらかを選択します。
そして、65歳になったら、自分の老齢基礎年金は全部もらい、2階にあたる部分を選びます。2階の選び方には3つの方法があります。

●2階の選び方は

遺族厚生年金か、自分の老齢厚生年金か、それとも、遺族厚生年金の3分の2と老齢厚生年金の2分の1か、 通常は、この3つのうち、一番、金額が多くなるものを選びます。
●遺族年金を選ぶと

夫の遺族年金が一番多くて、それを選ぶと、せっかく2階として存在する自分の老齢厚生年金がもらえない、というわけです。
だから、損すると、言われるのです。厚生年金に加入したのに、2階がもらえないなんて、損だということなのです。

●そういう声があったから

2004年の年金制度改革で、そんなことを言うのなら、全部自分の老齢厚生年金をもらってくださいというとになりました。(施行は2007年4月から)
全部もらっていいの? じゃあ、増えるんだね!

●ところが増えません!

増えるのならいいけれど、増えないのですよ。
自分の老齢厚生年金を全部もらうようになるけれど、その分、遺族年金は減らしますということなのです。

●結局、同じ?

そうです。計算方法がかわるだけで、金額は同じです。
しかし、結果が同じでも、中味が違います。

●何が違うの?

改定前の法律では、65歳になったら、3つの選択方法から、自分で選ぶということです。ところが、改定後は、自分で選ぶのではなく、老齢厚生年金が優先され、差額を遺族年金としてもらうということになります。

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里子さんが今から厚生年金に加入しても、結局、遺族年金のほうが多いので、もらえる年金にはかわりないでしょう。もちろん、老齢基礎年金はその分増えますが、これは、国民年金に加入していても、同じことです。
しかし、里子さんは、それでもいいと思います。
このまま仕事をしないでずっと家にいても、自分らしく生きていけないような気がするのです。
仕事がベストだとは限らないけれど、何かをすることによって、今の寂しさを乗り越えて、もっと元気に生きていけそうな気がします。
亡くなった里子さんの夫だって、いつまでも元気のない妻であってほしくないでしょう。
里子さんは、仕事をすることにしました。
年金も減るわけではないし、健康保険に加入するメリットもあるし、もっと前向きに生きていきたいと思いました。
※ 2004年年金制度改革の内容については、今後、政省令で定められることもありますので、ご注意ください。

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