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知っておきたい年金のはなし    第61号 2004年11月11日発行

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時々、私の仕事に関して、こんな質問を受けます。
「年金相談を中心に仕事をして、生活しているのですか」
年金の本を出したり、年金のセミナーをしたりしていると、「年金」で食べていると思われるようですが、私の仕事の半分は、通常の社会保険労務士業務です。
平日の昼間は、社会保険事務所やハローワーク、仕事先の会社などを、ミニバイクに乗って走り回っていることが多いです。(なぜか、ミニバイクです!)
手続き業務のほか、給与計算、就業規則の作成など、いろいろしています。
その仕事先に、介護事業所があります。介護事業所の主力は、登録ヘルパーさんたち。
しかし、登録ヘルパーの労務管理はむずかしいし、雇用保険、社会保険への加入も、判断がむずかしいです。
何時から何時と、決められた時間、働いているわけではないですものね。利用のある時間だけです。今月は働く時間が多くても、来月は少ないかもしれないのです。
しかし、もともとがそういう契約です。
今回は、登録ヘルパーとして働いている晴美さんのおはなしです。

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第61号 老後の年金と遺族年金 その2
★★★ それでも厚生年金に加入するの? ★★★
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晴美さんは62歳。登録ヘルパーとして働いています。
夫は病気で亡くなりました。現在は、遺族厚生年金をもらいながら、登録ヘルパーとして働いています。
最初は働く時間数も少なかったのですが、ここ数ヵ月、働く時間が多くなっています。
夫が亡くなるまでは、専業主婦でした。
晴美さんの得意は料理です。ヘルパーの仕事でも、その料理の腕が生かせます。
おいしいねと言って食べていただけると、とてもうれしく思います。ヘルパーの仕事は大変だけれど、やりがいもあります。
気がつけば、先月は130時間ほど、働いていました。
会社から言われました。
「この調子なら、社会保険に加入することになりますよ」
社会保険とは、健康保険と厚生年金です。晴美さんは、介護保険もです。
晴美さんは質問しました。 「私は遺族年金をもらっているのですが、今から厚生年金に加入して、何かメリットはあるのですか?」
さて、晴美さんのこの疑問にどう答えたらいいでしょうか。

●遺族年金のほうが多いから

晴美さんは60歳になったとき、自分の老齢厚生年金の手続きをしました。若いころ、会社で働いていた期間が数年ありました。でも、金額はわずか。
遺族厚生年金のほうが多いので、遺族年金を選びました。

●今から厚生年金に加入しても・・・

晴美さんは60歳以上なので、もう国民年金に加入しなくてもいい人です。
しかし、厚生年金加入の条件にあてはまると、強制加入となります。
しかし、今から厚生年金に加入しても、老齢基礎年金は増えません。
これが60歳未満なら、老齢基礎年金につながりますよといえるのですが、それもいえません。
老齢厚生年金の2階部分(報酬比例部分)は増えますが、もともと遺族年金のほうがはるかに多いので、少しぐらい増えたって、意味がありません。結局、遺族年金のほうが多いのですからね。

●全然、意味がないの?

晴美さんが選ばなかった老齢厚生年金の金額にもよりますが、自分の老後の年金がはるかに少なくて、今さら少しぐらい加入期間が増えて年金額が多くなっても、比較にならないぐらいになら、加入しても意味がないということです。
障害厚生年金をもらうようなことになれば、意味がないとは言えませんが。

●健康保険は?

社会保険に加入するということは、健康保険にも加入するということです。
晴美さんは現在どうしているのでしょうか。
国民健康保険に加入していて、その保険料が高いのなら、社会保険に加入することによって、保険料が下がるというケースもありますね。

●晴美さんは子どもの扶養家族です

息子と同居している晴美さん。会社員の息子の扶養家族として、健康保険に入っています。
今後、収入が増えると、扶養にも入れませんが、これまでは扶養に入ってきました。
扶養家族なので、保険料も負担していません。
ということは、保険料においても、メリットはないということです。

●どうしても入らないとだめ?

社会保険へは、1月の勤務日数と1日の所定労働時間が、正社員のおおむね4分の3以上あると、加入となります。
勤務時間が日によって変わる場合は、1週間をならして判断します。
登録ヘルパーの場合は、その判断がむずかしいのですが、実態をみて、判断します。
登録ヘルパーだから、社会保険に加入しなくていいということはありません。

●でも、メリットがないなら、入りたくないよ!

損をするからいやというのなら、働く時間を少なくするしかありません。
社会保険に加入しなくてもすむような時間数にしないかぎり、強制加入なのですよ。

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でも、なんだか、すっきりしませんね。
もらえる年金が増えないとわかっているのに、厚生年金に加入しなければならないなんて! 遺族年金があるからいいでしょと言われても、すっきりしませんね。
本来、年金は得だ、損だというものではないのでしょう。困ったときに助けてくれる制度であればいいと思っています。
しかし、生活がきびしい中、保険料という少なくないお金を払うので、払っただけのことはあってほしいと思います。結果としてもらえないのと、最初からもらえないとわかっているのとでは、また、気持ちも違います。
晴美さんのようなケースでは、ほんとに、厚生年金の保険料を払っただけで、手取りは増えません。
前回のメルマガで書いたように、自分の老齢厚生年金が優先されるように、法律は変わりましたが、(実施は2007年4月から)手取りは同じですものね。

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