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知っておきたい年金のはなし    第63号 2004年12月1日発行

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「年金」いう、とても大きな木があったとします。
どんな木か知ろうとしたときに、細かい枝葉ばかりをみていると、全体の木の姿が見えなくなってしまいます。
「幹の太いしっかりした、葉っぱのたくさんある木だな」と、木の姿をよくみてから、それから、枝分かれのしかた、葉の大きさや形をみていきます。
そうすると、全体の姿がわかってきますね。
実は、年金もそういうものです。
最初から、細かいところばかりをみると、全体像がわからなくなってしまいます。
まず、しくみを知って、それから特例を!
でも、枝分かれの先(特例)も大切です。
今日は、特例を取り上げます。

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第63号 長い間働いた人のために
★★★ 老後の年金、1階のはじまりは? ★★★
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珠美さんのお父さんは、来年の3月で60歳になります。
お父さんは、中学校を卒業してからずっと会社で働いてきました。
16歳からですので、なんと、44年間です。
お父さんは時々言いました。ほんとは、進学したかったと。しかし、当時、家計が苦しかったので、長男であるお父さんは進学できなかったのです。
自分は学校へ行けなかったから、子どもたちにはのぞみどおりさせてあげたいというお父さん。珠美さんはあたりまえのように大学へ行きましたが、自分が就職してはじめて、働くことの大変さがわかりました。
44年間も辞めないで仕事を続けたお父さんはすごいなと思います。
そのお父さん、定年後はどうしようか、迷っていました。
「長い間働いてきたのだから、もう仕事やめてもいいよ」という家族の声もあって、お父さんは会社を辞めることにしました。再雇用の道もあったのですが、辞めることにしました。他にしたいこともありました。
しかし、気になるには年金でした。
62歳になるまでは、年金が少ないと聞いていました。
退職金や貯蓄があるとはいっても、できるだけ、取り崩したくないと思いました。
さて、珠美さんのお父さんの年金はどうでしょうか。

●昭和20年3月生まれの男性は

珠美さんのお父さんは来年の3月に60歳になります。
昭和20年3月生まれです。
この生年月日の男性は、60歳から2階の年金(報酬比例部分)をもらい、62歳から1階の年金(定額部分)をもらいます。

●62歳なるまでは年金が少ない!

そうですね。62歳になってはじめて、1階と2階の年金、両方がもらえます。

●44年も働いた!

ところが、「長期加入者の特例」というものがあります。
これは、44年以上厚生年金に加入していた人。
44年も長い間、よく働いたね! 
そういう人には、特別に年金をあげますよということです。

●1階が60歳からスタート

「特別」とは、44年以上ある人が60歳になると、60歳から1階の年金も2階の年金も両方もらえるということです。

ただし、条件あり!
退職していることが条件です。
珠美さんのお父さんが60歳以降も会社に勤めている場合は、もちろん、厚生年金にも加入し続けることになりますので、1階はもらえません。

●加給年金もいっしょ

珠美さんのおかあさん(現在57歳)も元気でいっしょに暮らしています。
年金には妻に対する家族手当のような「加給年金」がありますが、お父さんの場合も、加給年金はもらえます。
本来は、62歳になってからですが、長期加入の特例に該当する場合は、60歳で1階がスタートするので、それと同時に加給年金もプラスされます。

●約40万円は大きいね

加給年金というしくみがよいのか悪いのか、それはここでは問題にはしませんが、1年間 で約40万円という金額は大きいです。
それが60歳からプラスされるのです。
●特例は長期加入者だけ?

この特例は、44年以上の長期加入者だけではなく、3級以上の障害の状態にある人も対象になります。
厚生年金に1年以上加入していたことがあって、ちゃんと老後の年金をもらえる人で、障害の状態が3級以上という条件にあてはまると、同じようになります。
3級というのは、障害厚生年金の3級に該当する障害の程度ということです。身体障害者手帳の3級とは異なりますので、注意が必要です。

●もし、60歳でもらわなければ年金は増えるの?

いいえ、増えません。
これはよくある勘違いです。
60歳から当然もらえる年金をもらわなくても、何も得することはありません。
珠美さんのお父さんが、仮に62歳で年金の手続きをしたとしても、本来の金額が増えるわけではありません。

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珠美さんのお父さん、こういう特例にあてはまるとわかって安心したわけです。
年金額も社会保険事務所で計算してもらいました。同じ時期に定年退職する人たちよりも、年金額は多いのです。
長い間働いたのでこれからは、今までできなかったことをしたいとお父さんはいいます。
野球が好きなお父さんには、地域の少年野球の指導をしてほしいという話もあって、乗り気です。ずっと機械を相手に仕事をしてきたので、これからは、人と向き合えたらなあと思っています。家庭菜園も本格的にしたいことのひとつです。
しかし、この特例、老齢厚生年金の支給開始年齢が遅れていくからできたのです。
みんなが60歳から1階と2階の年金をもらえる時代には、必要なかった特例です。

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