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知っておきたい年金のはなし    第64号 2004年12月11日発行

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「公的年金制度はあてにならない、他のことで老後や死亡に備えたほうがいい」
と言われる方がいます。
私は、きっと恵まれた人だなあと思います。
年金がなくても暮らしていければ、それでいいのでしょう。
でも、これから先どうなるかわからない。今ある財産だって、いつまでもあるという保障はないのです。
やはり、困ったときのための年金だし、また、困ったときに頼れるだけの制度であってほしいと思います。

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第64号 たよりになったカラ期間
★★★ カラ期間で年金をもらう! ★★★
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昭和14年4月3日生まれの真由子さんは今年(2004年)の4月に65歳になりました。
真由子さんは21歳で会社員の夫と結婚しました。それからずっと専業主婦です。昭和36年、真由子さん22歳のとき、国民年金の制度がスタートしましたが、真由子さんはサラリーマンの妻だったので加入しませんでした。それから年金のことなんて考えなかったので、そのままでした。
昭和61年、真由子さんが47歳のときに、「サラリーマンの妻は年金の手続きをしなさい」と夫の会社から言われて、真由子さんも手続きしました。つまり第3号被保険者になったのです。
そんなことも当時の真由子さんにはよくわかっていませんでした。
そして、1年後、夫が会社を辞めて自分で仕事を始めました。それから夫はずっと個人事業主でした。
自分で仕事を始めた当初は、いろいろ大変で、国民年金の保険料は払えませんでした。その後も、払わないままになって、真由子さんは60歳になりました。
友だちは65歳になって年金をもらいはじめています。真由子さんは、保険料を払っていないので、どうせもらえないとあきらめていました。
でも、ほんとうに、真由子さんはもらえないのでしょうか。

●老齢基礎年金をもらうには

真由子さんは勤めたことがないので、もらえるとしても65歳からの1階の年金(老齢基礎年金)だけです。
老齢基礎年金をもらうための条件は、保険料を納めた期間、免除を受けた期間、合算対象期間、学生の納付特例期間を合わせて、原則25年が必要です。
真由子さんの場合、保険料納付済期間は第3号被保険者となった1年間しかありません。

●合算対象期間ってなに?

合算対象期間とは、別名「カラ期間」ともいいます。保険料を納めた期間や免除を受けた期間だけで25年あれば、カラ期間を探す必要はないのですが、真由子さんの場合は、それだけでは年金をもらないので、カラ期間を探します。

●カラ期間がありました!

国民年金のしくみがはじまったのは昭和36年4月からなので、それ以降、サラリーマンの妻で、国民年金に加入しなかった期間は、カラ期間として、年金をもらえるかどうかの期間にカウントできます。
真由子さんには、カラ期間が25年ありました。
だから、年金をもらう権利はあるのです。
●よかったね!

しかし、もらえる年金は少ないです。
真由子さんにはたった1年の第3号被保険者期間しかありません。第3号被保険者期間は、自分で保険料を払っていないけれど、保険料を払った期間になります。
真由子さんの老齢基礎年金は、794,500円(2004年度価格)の38分の1です。
(正しくは月数で計算するのですが、わかりやすくするために、年数にしています。)

●なぜ38分の1?

国民年金がスタートしたときには、真由子さんはすでに22歳。60歳になるまでは、38年間です。
老齢基礎年金は40年加入して満額になるのですが、真由子さんの場合は60歳になるまで38年間しかないので、その間保険料をきちんと納めたら、40年なくても老齢基礎年金は満額になります。
真由子さんの場合は、38年のうち1年保険料納付済期間があるので、794,500円の38分の1となります。
●年金額は少ないね

もらえるといっても、年金額は20900円。1年間の金額です。これは少ないですね。

●振替加算が上乗せに

真由子さんの夫は、脱サラしましたが、20年以上厚生年金に加入していました。
現在老齢厚生年金をもらっています。
そして、妻がいるので、加給年金がプラスされています。
その加給年金は真由子さんが65歳になったら夫の年金から消えてしまいますが、その後変身して、真由子さんの年金にプラスされるのです。

●プラスはいくら?

真由子さんの場合、149300円(今年度の金額)です。
これは大きいですね。
保険料納付済期間が1年だけなので、それだけでは少ない年金額ですが、振替加算がプラスされることによって、年金額はずい分かわります。
●振替加算の意味

実は、真由子さんのように、昭和61年3月まで、国民年金に任意加入していなかったサラリーマンの妻の少ない年金を補う意味を、振替加算はもっています。
せっかく年金をもらえることになっても、真由子さんのようにあまりにも少ないと、年金の意味がないので、振替加算で救済するようなものです。
真由子さんの場合は、本人の責任で年金額が少ないのではなく、法律上、入ってもいい、入らなくてもいい、どちらでもよかったので、国民年金に加入しなかったのです。そのように法律どおりにしていて年金額の少ない人を救済する意味もあるのです。

●若い人にはなくなる振替加算

昭和41年4月2日以降生まれの人には、振替加算はありません。なぜなら、仮に20歳でサラリーマンと結婚したら、40年間ずっと第3号被保険者になれるからです。
つまり、一度も保険料を払うことなく満額の老齢基礎年金をもらえるので、もう振替加算は必要ないという意味です。

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現在、真由子さんは、年金の手続きをして、年金をもらっています。
カラ期間がものをいいました。もし、サラリーマンの妻としてのカラ期間がなければ、何ももらえないところでした。
そして、振替加算があったからこそ、年金額が増えました。
確かにこの年金だけでは生活していけません。
でも、全くないのとあるのでは、大きな違いです。
真由子さんは自分自身では一度も保険料を払うことなく、年金をもらっているのですから、ありがたいしくみだと思いました。
ありがたいということは、反対の立場からいうと「不公平」かもしれません。もし、真由子さんが自営業者の妻であれば、何ももらうことができなかったのですからね。

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