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知っておきたい年金のはなし    第67号 2005年1月11日発行

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お正月にホームページの大更新をしようと1日パソコンの前にすわりました。なかなか大変で、見かけは小更新といった感じですが、いろいろ手を加えました。
変更のひとつは年金情報ページ。いろいろな情報にリンクするようにしました。
時々、開いてみてくださいね。

さて、年金などの相談を受けるときによくあることですが、
「どちらが得ですか。私はどうすればいいのですか」
と聞かれると、どちらが得とは、言えない場合が多いです。
何にでも、メリット、デメリットがあり、最終的に決めるのは本人です。私ができるのは、そのお手伝い。正しく、適切な情報提供です。
65歳からもらう老齢基礎年金を早くもらったらいいかどうかも、決定するのは本人です。
そして、65歳からもらう老齢基礎年金を遅くもらった方がいいかどうかも、やはり同じです。
今日は、老齢基礎年金の支給開始を遅らせる「繰下げ」についてお話しします。

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第67号 年金を遅くもらう
★★★ 繰下げはお得? ★★★
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武蔵さんは今年3月に65歳になります。小さな飲食店を経営する個人事業主です。
若いころは、他の店で働いていましたが、厚生年金には加入していません。修行をつんだ後、自分で店をはじめ、それから現在に至っています。
年金は国民年金です。そして保険料も最初からきちんと納めていました。
幸い店は現在も繁盛していて、武蔵さんはまだまだ元気で仕事をしています。息子たちが店を継ぐことはないので、そのうちに、店はたたむことになるでしょう。
しかし、できるだけ長く続けたいと思います。昔からの常連さんがよく来てくれます。
お店にくるお客さんからのアドバイス。
「65歳になったら、年金もらえるよ。年金もらいながら、無理しないように続けたら」
もうそんな年齢になったのかと思い、自分の年金額を調べてみました。すると、80万円にもならない金額です。
今はまだ年金がなくても収入があるからいいけれど、まったく収入がなくなったら、これだけでは食べていけない、もちろん、今までの貯蓄や自分で準備した生命保険もあるけれど、長生きすればするほど、きびしいなと思います。
妻の美千代さんともいろいろ相談しました。美千代さんがこんなことを聞いてきました。
「遅くもらったら年金は増えるっていうよ」
そこで、武蔵さんと美千代さんは、年金を遅くもらうことを考え始めたのですが、どういうしくみでしょうか。

●繰下げとは?

「繰下げ」とは、本来65歳からもらう老齢基礎年金を65歳からもらわずに、遅らせてもらうことです。
繰下げできる期間は、66歳以降70歳までです。
●繰下げすれば年金は増えるの?

増えます。どのくらい増えるかというと、それは、生年月日によって違います。
昭和16年4月2日より後に生まれた人は、1月遅らせると、0.7%ずつ、増えていきます。
66歳からもらい始めると、8.4%増の年金、70歳からもらい始めると、42%増の年金です。
●武蔵さんは?

今年65歳になる武蔵さんは昭和15年生まれです。昭和16年4月1日以前に生まれた人は、法律が変わる前の支給率です。
この場合は年齢で支給率が決まっていて、66歳からもらうと12%増、70歳からもらうと、なんと88%増。70歳まで待てば、2倍近い年金額になるわけです。

●お得ですね

年金額を増やす方法としては、ひとつの有効な方法です。
特に昭和16年4月1日以前に生まれた人は、ずいぶん、増えますね。

●繰下げはおすすめですか

これは難しいです。
つまり、何歳まで生きるかということですね。
割増しのついた年金をもらえるようになって、すぐに死亡するようなことだってあるわけです。

●繰下げを待っている間に亡くなれば

もし武蔵さんが70歳からもらうつもりで、待ったとします。
69歳で死亡してしまえば、どうなるのでしょう。
そのときは、妻の美千代さんが、65歳から死亡した月まで当然もらえるはずだった武蔵さんの老齢基礎年金を「未支給の年金」としてもらうことになります。
このとき割増しはつきません。100%です。
65歳から69歳までの4年分をまとめて美千代さんがもらうことになります。

●繰下げ直後に死亡したら

たとえば、繰下げ請求したあと、1ヵ月後に死亡したとしますね。
そのとき、武蔵さんがもらえる年金は、たった1ヵ月分。しかも、本人は亡くなってしまったので、残された妻が「未支給の年金」として1ヵ月分をもらうことになります。
繰下げ請求する前に死亡した場合と、繰下げ請求した後に死亡した場合とでは、夫の死亡後に妻が受け取る未支給の年金額には大きな違いがあります。

●亡くなった本人はわからないけれど

もちろん亡くなった本人にはもうわかりませんが、こういうケースでは、残された妻から不満が出ます。
「せっかく長いこと待ったのに、少なすぎるよ!」
しかし、どうしようもありません。
繰下げの注意点として、知っておくべきことですね。

●請求する月にも注意

武蔵さんは66歳以降に繰り下げ請求できます。
しかし、請求は誕生月にしましょう。
66歳になった月に請求した年金は112%。66歳と11ヵ月で請求しても同じ112%です。請求月の翌月分から年金は支給されますので、誕生月に請求しないと、損します。
66歳と11ヵ月月で請求するのなら、あと1月待って、67歳になって請求するのがいいです。126%になります。
だたし、誕生月に請求しないと損をするというのは、武蔵さんのように、昭和16年4月1日以前に生まれた場合です。昭和16年4月2日以降に生まれた人は、月ごとに繰下げの支給率が増加しますので、誕生月に請求しないと損だということはありません。

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この繰下げのしくみを利用して年金額を増やそうと、上手に考える人はいました。
例えば、60歳から70歳になるまで10年間受け取れる個人年金に加入しておいて、公的年金を繰下げ支給で増やすという方法です。
ただし、188%の時代ならこれもよかったでしょうけれど、これからの若い人は、70歳まで待っても142%。年金額がだんだん下がっていけば、ほんとに長生きしないと、繰下げ支給の効果は期待できません。
武蔵さんは、繰下げをすることにしました。
今は年金がなくても収入があります。店をたたむ時点で年金をもらおうと思いました。
あとしばらくは、健康や生きがいのためにも、仕事を続けたいと、夫婦ふたりで話し合いました。

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