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知っておきたい年金のはなし    第75号 2005年4月11日発行

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年金と言えば、なんといっても、気になるのは金額です。
どのくらいもらえるのだろうか、それで生活していけるのだろうかと心配になります。
年金相談でこんな話になります。
「年金って、こんなに少ないのですか! こんな少ない年金で、みんなどうして生活しているのですか?」
答に困りますね。あるだけのお金でなんとか生活しているということでしょうか。
こんな話も聞きます。
介護が必要で、介護保険からのサービスをもっと受けたいけれど、1割負担ができなくて、サービスを切り詰めていると。
これで豊かな国と言えるのかと思います。

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第75号 年金と最低保障
★★★ 少ない年金、なんとかならない? ★★★
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佳子さん夫婦は、マンションを購入することに決めました。
実は佳子さんは「家は賃貸がいい」と思っていました。一番大きな荷物になるのは家だと思います。離婚したいときにも、家が足かせになると思っています。
しかし、今のところ、離婚する予定もないし、気に入る物件があったので、いろいろ考えた結果、購入することにしました。
ローンはなるべく短期間で終わらせたいと思っています。そのために、現在の生活を見直し、節約できるところは節約しようと考えました。今まで、なんとなく入っていた保険も見直すことにしました。
保険の見直しで大切なことは、公的年金でどのくらいもらえるのか、不足するのはいくらぐらいかということです。
佳子さんは老後の年金、遺族年金の計算方法を調べてみました。
年金の計算には、会社員である夫の給与の平均が必要です。正確にはわかりませんので、だいたいこれぐらいだと仮定して計算しましたが、その結果、老後の年金も、遺族年金も思っていたより少ないものだということがわかりました。
死亡保障は今のままで充分でしたが、個人年金など、もう少し、老後の備えを検討したほうがいいということもわかりました。
でも、年金って、困ったときに生活を支えるためにあるものだよね、もっと少ない人はどうして生活するのだろう、年金には最低保障はないのかしらと、佳子さんは思いました。

●老後の年金はどのくらい?

これはとても難しい質問です。
老齢基礎年金は満額で794,500円、厚生年金に加入していた人は、上乗せがあるということです。
しかし、満額でも、月に66000円程度しかないのが、今の年金の実態です。

●満額は40年加入が必要

「もう25年加入したから年金の保険料払わなくてもいいね!」と言われる方がいますが、それは違います。
月に66000円ほどの年金は、40年保険料を払っての金額。期間が短ければ、もっと少なくなりますね。
●年金に最低保障はないの?

老後の年金についてはありません。
だから、年金をもらえる25年の条件を満たしていても、免除期間やカラ期間のある場合は、大変少ない年金額になってしまいます。
老後の年金については、最低保障するという考え方はないのです。

●遺族年金や障害年金は?

遺族年金や障害年金の1階部分(遺族基礎年金・障害基礎年金)は、年金に加入している期間の長短を問わず、同じです。もちろん、保険料をちゃんと納めているかどうか、その条件に合わないともらえませんが、40年加入していた人も、たった1ヵ月しか加入していない人も金額は同じです。

●25年分で計算する!

2階にあたる遺族厚生年金・障害厚生年金については、給与によって年金額が異なってくるのは老後の年金と同じですが、どんなに加入期間の少ない人でも、300月(25年)で計算されます。
300月が、月数としての最低保障といえますね。

●なぜ、そんなふうに計算するの?

遺族年金や障害年金は、若い人でも該当します。加入期間が少ないからいって年金額を少なくしたら、遺族年金や障害年金の意味がなくなるからです。
生活保障にならないからです。

●障害年金の最低保障

障害年金には、最低保障という考え方があります。
まず、3級の障害厚生年金です。
障害厚生年金は、一番重い障害の状態が1級で、3級まであります。(障害基礎年金は2級まで)
3級に該当する人は、1階の障害基礎年金がありません。ですから、300月で計算しても、給与の少なかった人は、年金額が少なくなってしまうことがあります。
それでは意味がありませんね。
そこで、596000円(平成17年度)が最低保障となっています。

●1、2級にも最低保障ができました

昨年の法改定で、1、2級にも、最低保障がもうけられました。
障害基礎年金に該当しない1、2級の人、つまり、2階の障害厚生年金しかもらえない人に限って、最低保障があります。
65歳以上の会社員(厚生年金に加入)で、65歳以降に初診日があって障害の状態になったケースです。
最低保障額は3級と同じです。

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老齢基礎年金・老齢厚生年金には、最低保障という考え方はありません。
年金額が少ないのは、保険料を払わなかったあなたが悪いのよという考えでしょう。
保険料を払っても払わなくても、最低限の年金がもらえるとなると、ますます保険料を払わない人が増えると思うし、「保険」である以上、払った保険料に応じて、年金額が決まるのは当然ですね。
しかし、国の年金制度としては、生活していけるだけの年金額であるべきだと思います。
では、財源はどうするのかということになり、国は財源がないといいますが、ほんとにそうなのでしょうか。
もっと検討する余地がありそうです。
憲法には「幸福で文化的な最低限度の暮らし」とありますね。私はその憲法の精神が最低基準ではないかと思います。
これからの年金制度をどうしたらいいのか、みんなで考えましょうよ。

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