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知っておきたい年金のはなし    第76号 2005年4月21日発行

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雇用保険料が4月から上がりました。また負担が増えるのです。
介護保険料は3月から上がったし、「健康保険や厚生年金の保険料は高い!」と感じます。
社会保険(健康保険・厚生年金)は高いから加入しないという会社もあります。
しかし、株式会社や有限会社と名のつくところは、たとえどんなに不満があろうとも、社会保険には入らないといけません。社長ひとりの会社であったとしてもです。
でも入っていないところがあるのも現実。
今年からそういった「会社」に対してはきびしくなります。強制的に加入になることも。
しかしながら、私たちもお金を払って加入するのですから、しっかりしくみを知って損しないようにしたいものですね。
複雑すぎる年金のしくみも問題ですが、年金に関しては、勘違いで損をしている人、損をしそうになった人って、意外に多いのですよ。

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第76号 老齢厚生年金によくある勘違い
★★★ 待てば増える? ★★★
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63歳の春夫さんと秋男さんは同級生。ときどき、いっしょに飲みにいきます。
ふたりとも、会社の社長です。
ただ、違うところは、春夫さんはそろそろ引退を考えて、実際には息子が中心になって会社の仕事をしています。
自分の報酬も少なくしています。現在は、25万円。妻も役員報酬として20万円受け取っているので、生活はやっていけます。
ところが秋男さんは、違います。70歳までは現役で仕事をするつもり。役員報酬は80万円です。
今夜もいっしょに飲んでいて、年金の話になりました。
ふたりともまだ年金の手続きはしていません。
「70歳まで待てば年金は増えるよ。70歳までは仕事をして、それから増えた年金をもらうよ」と秋男さん。
「うちの女房が早く手続きに行けと言うけれど」と春夫さん。
「会社をやっている間は、年金はもらえないし、早くもらえば、年金は少ないよ」
と秋男さん。
ちょっと待って、秋男さん。それは違いますよ。春夫さんにはあてはまらないかもしれませんよ。

●60歳以降も会社で働いている場合

在職老齢年金は「給料があるから、年金は少なくてもいいよね」というしくみです。
60歳以降も会社に勤めていて、厚生年金に加入しながら老齢厚生年金をもらっている人は、年金が減額されるしくみです。

●どのくらい減るの?

2005年3月まではどんなに給料が少なくても、年金は必ず2割がカットされていました。(60歳〜65歳未満) でもそれでは、働く意欲がわきませんね。
そこで、一律2割カットは4月から廃止になりました。給料や年金の少ない人は「全部年金あげるから、がんばって働いてね!」ということです。

●4月からどうなったの?

簡単にいうと、給料と年金(月額)の合計が28万円を超えると、超えた金額の2分の1だけ、年金を減らすというしくみです。
ただし、気をつけてくださいね。「給料」と言っていますが、正確には「総報酬月額相当額」といって、ボーナスも12等分してプラスされたものが基準となります。また、年金月額は「加給年金」を除きますので、単純にもらえるはずの年金総額を12で割ったものではありません。

●具体的には?

年金月額が10万円。給料が20万円だとします。ボーナスはないことにします。あわせて30万円。
28万円を2万円超えているので、その半分、1万円が減額されます。
つまり、ほんとは10万円もらえる年金が9万円になるということです。
このような考え方です。(65歳未満の場合)

●秋男さんは?

毎月の役員報酬が80万円。
この場合は、年金は全額支給停止。もらえません。

●では、手続きしてもしなくても同じ?

結果としてはそうなります。手続きしなければ当然もらえないし、手続きしても全額支給停止、年金はゼロです。

●春夫さんは?

役員報酬が25万円。春夫さんの年金額が仮に20万円だとすると、全額支給停止にはなりません。20万円全部の年金はもらえないけれど、減額された年金はもらえます。
●すぐに手続きしましょう

春夫さんは年金をもらえるのです。すぐに手続きしましょう。
今はまだ必要ないからと言って待っていても、増えません。
60歳から65歳になるまで、当然もらえる年金はもらっていいのです。

●手続きしなかったら?

65歳をすぎても手続きしなかったらどうなるか? 
年金は5年前にしかさかのぼれません。
60歳から当然もらえる年金があったとしましょう。
たとえば66歳になって手続きしたら、さかのぼれるのは61歳時点まで。それ以前にもらえたはずの年金は、どんなにお願いしてももらえません。1年分損をすることになってしまいます。

●繰下げする場合

老齢基礎年金を繰下げて、年金を増やすこともできます。
しかし、その場合でも、65歳になるまでの間は、当然もらえる年金は受け取っていいのです。
65歳になるまでに当然もらえるはずの年金をもらって、何も損をすることはありません。

●秋男さんも手続きを

そのままにしておかないで、早めに手続きをしておきましょう。今はもらえないのですが、もし、仕事を辞めたり、報酬をもっと少なくした場合は、ストップしていた年金が支給されます。
一度手続きしておけば、あとは自動的に計算されるので、条件が変わったら、年金が振り込まれるようになります。
老齢基礎年金の繰下げを希望する場合でも、手続きはしておきましょう。

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これもよくある勘違いなのです。
働いていたら年金もらえないよ、社長なら年金もらえないよ、ということではありません。
報酬と年金額でそれそれ違ってくるのです。
もらえるのに手続きしていない人もおられます。
65歳までにそのことに気がつくといいですよ。
しかし、65歳をすぎてから気がついても、取り返しのつかないことになります。
「私の年金」はお隣りの人とは違うのです。
「自分の年金はどうなるの?」と、しっかり確認してください。

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