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知っておきたい年金のはなし    第87号 2005年8月11日発行

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7月末のことですが、朝日新聞に社会保険庁長官のインタビュー記事が掲載されました。
民間会社の取締役から社会保険庁長官になった方で、社会保険庁の改革をこころみているという話です。
確かに社会保険事務所は変わってきたと思います。
「社会保険労務士が昼休みに事務所の窓口へ書類を持ってくるのはとんでもないことだ」と言われた時代もありますが、今ではそんなことはないようです。
年金相談の時間帯も延長され、窓口の対応もよくなっていると感じます。
でも、先日の保険料決定のように、おかしなこともたくさんあります。今回の新聞記事に書いてあることにも、疑問を感じることがありました。
社会保険庁長官に、このメルマガ読者になっていただけるといいかもしれません。

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第87号 保険料と年金額
★★★ 元を取るものではないけれど・・・ ★★★
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俊彦さんは、今月60歳になります。定年は、会社の就業規則ではその年の年度末です。ですから、来年の3月31日が定年退職日になります。社内には、定年退職になる社員が数人います。
再雇用制度があって、希望者は給料が下がるけれど、働き続けることもできます。
定年退職予定者への説明会もありました。
しかし、よくわからなかったのが、年金です。
60歳で年金をもらえるのはわかりますが、働き続けると、厚生年金に加入しなければなりません。年金が一部カットされるというしくみはわかりましたが、60歳以降も厚生年金に加入して、いったい年金はどのくらい増えるのだろうかと、俊彦さんたちはわからなくなってしまいました。
さて、1ヵ月厚生年金に加入すると、どのくらいの年金額になるのでしょうか。
(これから出てくるすべての数字は、現在の年金額及び従前額保障の計算式です。)

●1ヵ月厚生年金に加入して増える年金は?

65歳から支給される1階の年金、つまり、老齢基礎年金は、1ヵ月の保険料を払うことによって、約1655円増えます。(794,500円÷480月)
これは、誰でも同じ。国民年金、厚生年金、共済年金、どの制度に加入していても同じです。ただし、60歳以降の加入期間が老齢基礎年金に直接つながるわけではなく、経過的加算という差額でプラスされます。

●同じ1階でも65歳になるまでの1階は

これは、1月あたり、1676円×物価スライド0.988で計算します。1656円。厚生年金でも共済年金でも同じです。ただし、生年月日によって、乗率が異なりますので、金額が異なる場合もあります。

●1階の年金には上限がある

1階の年金には上限があって、480月以上加入しても増えません。たとえば、高校を卒業して60歳の定年までずっと働いた場合、厚生年金の加入期間は42年となりますが、1階の年金を計算するときは、最高でも40年として計算します。
だから、すでに60歳時で40年以上ある人は、それから厚生年金に加入しても、1階の年金は増えないということです。

●俊彦さんはすでに40年以上あり

20歳からずっと今の会社で働き続けた俊彦さん。40年の加入期間があります。つまり、今から厚生年金に加入しても、1階の年金は増えません。

●2階の年金は

2階の年金には加入月数に上限はありません。加入期間が長くなれば長くなるほど、年金も増えるしくみです。

●給料10万円の人は

話がややこしくなるので、再評価率は無視して計算してみると、6828円(本人負担)の保険料を払って約576円年金につながります。2階だけしか増えない人は、元を取るのに約12年かかり、1階も合わせて増える人は、約3年で元が取れます。
「元を取る」とは、払った保険料と同じだけ、年金を受け取るという意味です。

●給料100万円の人は

同様の方法で計算すると、43195円の保険料を払って、約3643円の年金になります。
2階だけしか増えない人は、元を取るのに、約12年かかるのは同じ。
1階も合わせて増える人は、元を取るのに約8年です。

●比べてみると

細かな数字は考えるだけでめんどうですが、ここでわかることは、払っている保険料が多くなればなるほど、元を取るのに年数がかかるということです。

●どうして?

2階の年金は保険料に比例して多くなるのに、1階の年金は定額だからです。どんなにたくさん保険料を払っていても、1階の年金はいっしょだからです。

●給料の少ない人にとって有利なしくみ?

1階の年金はそうですね。

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確かに年金制度は悪くなっています。だから加入したくないという人もいます。
少ない給料からこれ以上引かれたくないという気持ちはよくわかります。
しかし、具体的に数字をあげて比べてみると、給料の少ない人にとって、年金はお得なしくみです。
国民年金と比べると、厚生年金はお得です。13580円の国民年金保険料を払っても、一番低い報酬で6828円という厚生年金の保険料を払っても、1階の年金は同じだけ増え、厚生年金の場合は、2階分もプラスされるのですから。
ここでは、「元を取る」ということで、数字の比較をしましたが、ほんとうをいうと、年金のしくみからすると、「元を取る」という考え方はふさわしくありません。
保険であって、積立貯金ではないのですから、元を取るものではありません。困ったときに助け合うものなのです。
しかし、払った保険料と増える年金額の関係をみるために、あえて、このように表現しました。

社会保険庁長官の話で、気になったのはこんなこと。
これから社会保険庁による加入期間や年金額のお知らせサービスが今より充実していくと思いますが、窓口にくる年金相談の件数を半減させたいからだそうです。そうなると、人件費などの経費も浮きますね。
しかし、今のような複雑な年金のしくみでは、自分で行動し調べないと、どこで損するかわかりません。年金相談はしっかり活用しましょう。年金相談の経費を削減したいなら、もっとわかりやすいしくみにするべきです。

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