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知っておきたい年金のはなし    第100号 2005年12月21日発行

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「知っておきたい年金のはなし」も100号をむかえました。
これまで支えてくださったみなさんに感謝します。
正直言うと、ネタに悩むこともあるのですよ。
しかし、これからも、続けていきますので、どうぞ、おつきあいください。

さて、年金制度は何のためにあるのでしょう。
簡単に言うと、困ったときの手助けのためにあるのです。高齢で収入がなくなったとき(老齢年金)、ケガや病気で働けなくなったとき(障害年金)、一家の大黒柱が死したとき(遺族年金)、そんな困ったことが起きたときに、年金という「お金」で手助けする制度です。
ですから、困らなければ必要ないし、保険料を払っている分、取り戻さないと損をするというふうに考えるものではありません。
(取り戻したいという気持ちも、よくわかりますが)
つまり、困ったときの支えあいで、積立貯金ではないのですね。
積立貯金と保険の意味を勘違いすると、本質が見えなくなってしまうこともあるのです。
今日の話題も、よくある相談事例からです。

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第100号 パートからフルタイムに
★★★ 年金はどう変わる? ★★★
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悦子さんは55歳。
夫はサラリーマンです。昨年、夫の会社が倒産しました。新しい仕事はみつかり、現在もサラリーマンですが、収入はかなり減りました。収入ダウンで今後の生活設計が狂ってしまいました。
子どもはまだ大学生でお金が必要です。住宅ローンも残っています。
悦子さんはこれまでパートで仕事をしてきました。夫の扶養内で働いてきました。
しかし、それでは、お金が足りません。これでは暮らしていけそうにないので、悦子さんもフルタイムで働こうかと考えています。
しかし、心配なのは、悦子さん自身の年金です。
これまでずっと夫の扶養で、第3号被保険者でした。
自分で厚生年金に加入したことは一度もありません。結婚する前は、実家の店を手伝っていたので、厚生年金には加入していません。
今から60歳まで厚生年金に加入したとしても、厚生年金の加入期間は5年ほど。
5年しか加入しなくても、厚生年金分はもらえるのでしょうか。国民年金へはずっと加入しています。

●25年を満たしていれば

国民年金の保険料納付済期間が25年あれば、老後の年金は問題なくもらえます。
悦子さんは第3号被保険者として加入してきましたし、第3号被保険者の制度ができるまでは自分で国民年金の保険料を支払ってきました。年金をもらえるかどうかという点では、問題ありません。

●1階の年金はもらえる

25年で年金をもらえる権利ができ、なおかつ、20歳から60歳までの40年間、保険料納付済期間(サラリーマンの妻である第3号被保険者期間も含む)であれば、1階の年金(老齢基礎年金)は満額で、794500円(2005年度)となります。
年金の金額は毎年見直しされるので、悦子さんが65歳になったときのことまでは誰にもわかりませんが、満額もらえるということにはかわりありません。

●今から加入する厚生年金は?

厚生年金加入で上乗せ(2階部分の年金)を準備することになります。
たった1月の加入であっても上乗せされますから、5年加入すれば、その分、自分の年金が増えるということになります。
だから、悦子さん、自分の年金は厚生年金に加入して働くことによって多くなると考えましょう。

●どのくらい増えるの?

5年間といっても、その間の給料によって年金は決まります。
上限はありますが、給料が多ければ多いほど、年金は増えると思ってください。

●夫の年金が減ってしまう心配はしなくていいの?

気をつけておきたいのは加給年金。夫婦共働きの場合、お互いが加給年金をもらえるようになれば、どちらももらえないということになります。
ただし、20年(特例15年〜19年)以上働かないと加給年金は関係ありませんので、悦子さんのように今から厚生年金に加入しても5年ほどだという場合は、まったく問題ありません。
自分が働くことによって、夫の年金が減るのではないかという心配は無用です。

●では安心して働いていいよね

保険料を払うことになりますが、老後の年金は増えます。第3号被保険者のままでいるよりは年金は多くなります。
ただし、知っておきたいことがあります。それは遺族年金との調整です。

●もし夫が亡くなったら

サラリーマンの夫が死亡したら、残された妻は遺族厚生年金をもらえます。
ただし、悦子さんが60歳になり、自分の老齢厚生年金と夫の遺族厚生年金の両方をもらえるようになると、どちらかを選択することになります。両方はもらえないということです。

●65歳以降はどうなるの?

自分の1階の年金(老齢基礎年金)は必ずもらえます。問題は2階をどうするか、何を選択するかということです。
悦子さんの場合は、自分自身の老齢厚生年金が少ないので、夫の遺族厚生年金を選ぶ方が金額的に多いでしょう。夫の遺族厚生年金を選択すれば、せっかく加入した自分の老齢厚生年金をもらえないことになってしまいます。
●07年4月からは自分の年金をもらえるようになる?

法律は「改正」されました。悦子さんのようにふたつの年金を権利が発生した場合(65歳以降)、自分の老齢厚生年金を優先してもらうようになりますが、これは、金額的には増えているわけではありません。
自分の老齢厚生年金をもらえますが、もらった分、遺族厚生年金は減額されるので、結局、トータルの金額は同じ。もらえないのと同じです。

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このように、悦子が今からでも厚生年金に加入すれば、自分自身の老齢厚生年金が増えることになりますが、夫死亡となると、厚生年金に加入したメリットがないということになります。
さて、あなたが悦子さんならどうしますか。
どちらがいいですかときかれても、私に答は出せません。
メリットとデメリットを考えて、最終的には自分で決めるしかないのです。私はその選択をするための情報の提供しかできません。
しかし、夫が死亡するかもしれないことを考えて、そのときは年金でメリットがないからといって、働くことをやめる必要はないと思います。
働けば、それだけ収入も入ってきます。
働いて収入を増やすという前向きな選択をしてもいいのではないでしょうか。もちろん、働きたいという場合です。 年金のために人生をマイナスに考える必要はないと思います。
それは年金の本来の目的でもありません。

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みなさんにとって、今年はどんな年でしたか。
私は仕事ばかりしていたように思います。
来年は創意工夫をこらして、新しいアイデアで仕事をしていきたいと思っています。
年明けに、自宅兼事務所を移転します。年末年始は引越しの準備で大変になりそうです。
問題はたくさんのものを捨てきれるかどうかです・・・
次回のメルマガは1月4日に配信します。(今月のみ、4日です)
では、みなさん、よいお年を。

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