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知っておきたい年金のはなし    第102号 2005年1月11日発行

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先日、ある新聞で「年金移民」という記事を読みました。
年金が少ないので、物価の高い日本では暮らしていけない、だから、物価の低い海外で暮らす日本人が増えているということです。
実際に、年金生活者の海外暮らしを支援することがビジネスになっています。
確かに「年金移民」は年金だけで生活していくためのひとつの方法でしょう。しかし、これは誰もが選択できる方法ではないと思います。
言葉の問題、食べ物や習慣の違い、健康の問題。
現地の言葉が話せて、しかも健康であって、海外暮らしが苦にならない、むしろ楽しみだという人にはいいでしょう。しかし、そんな人ばかりではありません。
考えてみれば、自分の年金で暮らしていけないから「移民」するというのは、悲しいことだと思いませんか。
長い間住みなれた自分の街で、自分の家で、最後まで暮らしたい、それが自然な気持ちだと思います。また、そんなふうに暮らせる日本の国であってほしいと思います。
それにしても、お金は必要です。定年まぎわになってあわてることなく、準備が大切です。
今日は、20歳代の美由紀さんのお話です。

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第102号 学生の納付特例
★★★ こんなことなら払えばよかった! ★★★
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もうすぐ30歳になる美由紀さん。大学卒業後、就職しましたが、勉強を続けたくなって退職。現在は大学院生です。
OL時代に貯蓄したお金を学校の費用にあてています。アルバイトもしていますが、勉強時間が必要なので、そう多くは働けません。
美由紀さんは、自分が勉強を続けられるのは、両親のおかげだと思っています。実家にいること、父親に十分な収入があって、生活費を入れなくていいことです。
いつまでも親に頼るのもどうかと思っていますが、あとしばらくは、勉強を続けるために、親を頼るつもりです。
美由紀さんは学生時代、学生の納付特例を利用し、国民年金の保険料を払っていません。ところが、最近、社会保険庁から通知がきました。「払うように」という内容でした。払わなくてもよいという手続きをしたのにと、美由紀さんにはよくわかりません。
そんなある日のこと、公民館で開催された「年金セミナー」に参加したお母さんが言いました。
「あなたの学生時代の国民年金、払ってあげたわよ」
お母さんが言うのには、「年金の保険料には割り増し(加算金)がついていて、当時の保険料よりも高かった」
払わなくてもいいはずの保険料に割り増しがつく! いったいこれはどういうしくみなのか、美由紀さんにはわかりません。
「ちゃんと払っておかないと、老後の年金が少なくなるのよ」とお母さんは美由紀さんに説明しますが・・・

●保険料を払うのが大変!

学生生活は勉強が中心。そうでない人もいますが、一般的には収入がないものです。アルバイトで働くといっても、学生なので、やはり「アルバイト」程度の収入です。
親は大変。授業料や生活費を負担しなければなりません。
国民年金の保険料まで払うゆとりがないよね!ということで、「学生の納付特例」というしくみがあります。

●どういうしくみ?

一言でいうと、申請により保険料の納付を猶予し、社会人になってから納めることができるしくみです。
「自分で稼ぐようになったらあとで納めてね」という意味です。ですから、納付特例期間については、あとで納めない限り、老後の年金額にはつながりません。

●ゆとりがない人のため

つまり、保険料を払うゆとりがない場合に、学生の納付特例を利用すれば、今は払わなくてもいいということになるのです。
ですから、ゆとりがあれば、学生であっても、保険料を払っていいのです。
美由紀さんの学生時代、確かに本人に収入がありませんでしたが、親には充分な収入があり、美由紀さんの保険料を払うことは可能でした。
払えるのなら払ったほうがいいのです。

●あとで払うことができる

納付特例を受けた期間は「追納」といって、あとで保険料を払うことができます。
たとえば、2005年4月から2006年3月まで、学生の納付特例期間であるとします。
2005年4月分の保険料は10年後の2015年5月末までなら、払うことができます。
2005年5月分は、2015年6月末というふうに、順番に期限がきます。
期限がすぎると、保険料を払いたいと思っても、払うことはできません。

●払わないといけないの?

払わなくても「法律違反」ではありません。きちんと、納付特例の承認を受けているからです。しかし、払わないままにしておくと、自分の老後の年金が少なくなります。
これを承知で払わないのなら、問題はありません。

●あと払いには割り増(加算金)がつく

2年間は割り増しなしです。たとえば、2005年4月分を2007年5月までに払うと加算はなし、2007年6月以降に払うと、加算があります。
現在、13580円の保険料を10年後に納めるとしたら、さて、いったいいくらになっているでしょうか。

●美由紀さんの場合

「いつまでたっても親がかり」というような話は別として、結局、親が国民年金の保険料を払いましたね。 しかも、2年を越えていたので、割り増しのついた保険料です。
当時保険料をゆとりのなかった人が、やっとゆとりができたので払ったということであれば、「払えてよかったね」いうことになりますが、もともと払うゆとりがあった場合はどうでしょうか。制度をよく知らないために、あとで割り増しのついた高い保険料を払うことになったのです。

●最初から払っておけばよかった

このような場合は、そうですね。
最初から払っておけば、余分な割り増し分は必要なかったのです。

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親が子どもの国民年金保険料を払うのがいいことだと言っているのではありません。
その家庭によって事情は違います。
だから、それぞれで考え判断すればいいことですが、一見、有利にみえる学生納付特例のしくみも、そうとはいえない、よく制度を知って判断することが必要だということを言いたいのです。
納付特例期間分をあとで払えない人の方が、多いのではないでしょうか。払えるほどの収入を得るようになれば喜ばしいことですが、なかなか厳しい時代です。
就職したとしても、少ない給料の中から、過去の国民年金保険料を払うということを、どのくらいの人ができるでしょうか。
結局、あとでまとめて払うというのは、よけいに大変です。そのままになってしまい、老後に受け取る年金が少なくなるという事態を引き起こします。
それが「年金移民」を作っていくのでしょう。
払えるのならその時に払ってしまう、あたりまえですが、これも良い方法だと思います。

口座振り替えを利用すると、保険料は割引されます。
一番割引率が高いのは、1年分まとめて銀行口座から振り替えるという方法です。
私自身は国民年金の第1号被保険者ですが、どうせ払うのなら少しでも安くと、1年分まとめて払っています。
しかし、こういう方もいます。口座振替は利用しない、こんなにたくさんの保険料を払っているのだということをしっかり意識するために、毎月納付書で納めると言うのです。
これも、考え方ですね。

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■□■ お知らせ ■□■
事務所を移転しました。
新事務所については、HPでご確認ください。電話・ファックスも変更になりましたので、お間違いのないようにお願いします。
http://homepage2.nifty.com/miming2/

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無料相談はメール相談のみです。メール以外は有料です。

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