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知っておきたい年金のはなし    第103号 2005年1月21日発行

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私は社会保険事務所によく行きますが、順番待ちをしている間に、窓口でのトラブルも時々目にします。
先日も、「なぜ、こんなに少ない収入なのに、保険料を半額も払わないといけないのか」と男性がかなりの語気で詰め寄っています。国民年金保険料の全額免除、半額免除でもめているようです。
聞いていると、払えないというのも、無理のないような話。しかし、昨年の所得から、全額免除の基準にならなかったのでしょう。
「生まれて初めての手続き。わからないのがあたりまえ。もう少しわかるように説明してくれてもいいじゃないですか」
そういって、その男性は帰っていきました。
社会保険事務所の窓口の職員さんも、いろいろな人の対応で大変だと思いますが、どんな場合であっても「わかる」説明が大事ですね。自分はそれを専門にしているのだからわかっているのです。しかし、どのように相手に伝えるかが大切です。

今日は、58歳の伸一郎さんが登場します。

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第103号 60歳以降の働き方
★★★ 年金を全額もらうためには? ★★★
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伸一郎さんは、現在、定年後、どうするかを考えています。
まず、仕事をまったくしないつもりはありません。
会社は60歳で定年ですが、その後、嘱託職員として会社に残ることもできますし、何人かの先輩たちはそうしています。
しかし、一方で、自分で仕事を起こすということも考えています。
妻も反対はしませんが、収入はどうなるの、年金はどうなるのと言われますので、60歳以降の働き方によって、年金はどうなるのか、年金を全部もらって働くことはできないのか、調べてみたいと思っています。 さて、60歳以降の収入と年金、伸一郎さんの場合はどうなるのでしょうか。

●働き続けると?

伸一郎さんの年収は現在800万円ほど。嘱託職員になると、ボーナスなしで、毎月の給与は40万円ほどになります。
伸一郎さんの60歳からの年金(年金制度の2階にあたる報酬比例部分)は月に約10万円です。40万円の給料と10万円の年金では、年金は支給停止となります。60歳になったら年金の権利はできるけれど、まったくもらえないということになります。

●年金をもらう方法は?

伸一郎さんの給料がもっと低ければ、全額カットにはならないので、一部もらえます。
たとえば、20万円になったとしましょう。(ボーナスはないものとして計算します)
一部もらえる年金は9万円。ほんとは10万円のところ、1万円だけ少ないということになります。

●では給料下げればいいの?

手取りを考えましょう。
たしかに、20万円の給料では9万円の年金はもらえますが、合わせても29万円。
40万の給料では年金はもらえませんが、40万円のお金が入っています。
ですから、「いくらお金が必要なのか」「そのお金をどうして得るか」ということなのですね。
単に「年金が減るからもったいない」だけでは、決められません。

●短時間のパートになれば

社会保険に加入してなくていいような短時間で働けば、もちとん、年金のカットはありません。年金がカットされるのは、厚生年金に加入するからです。
時給の高い仕事であっても、労働時間や日数が基準以下であれば、厚生年金に加入できず、したがって、年金が減額されることはありません。
正社員が週に40時間働くとすれば、おおよそ30時間未満のパートであれば、社会保険に加入できないということです。

●委託・請負という契約では

会社に雇用されるのではなかく、委託・請負という契約であれば、厚生年金には加入できないので、したがって、年金カットにはならないということです。
しかし、委託・請負とは名ばかりで、実際には「雇用契約」と同じという場合は、法律に触れることもありますので、注意してください。

●個人事業主は

自営業はまったく年金カットには関係ありません。
どんなに収入が多くても年金はカットされません。ただし、今の法律では!
こういう人がどんどん増えてきたら、今後どのように「改悪」されるか、ちょっと心配ですね。

●自分で会社を起こす

会社(法人)を作ったら、社長ひとりの会社であっても、社会保険に強制加入です。
先日、あるところで、年金を全部もらえる方法として、とりあえず、会社を起こすが、しばらくは社会保険に加入しないという方法が書いてあって、びっくりしました。
少人数の会社で社会保険に入っていないところがあるのは事実ですが、これは違法です。
違法なことを選択肢に入れてはいけません。

●不動産収入があれば

自分でアパートを持っていて、不動産収入が入る、株で利益を得たなどというときに、年金が減るのではないかと心配される方もいます。
しかし、会社でもらう給与・賞与以外のものは、年金カットに影響しませんので、安心してください。

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定年とともに個人事業主となり、全部年金をもらい、自営業の収入もあるという人をみると、いいなあなんて思ってしまいますね。
しかし、自営業にはまたその苦労があり、どんなことであっても「楽」なことはないと思います。
年金のために人生を選ぶのではなく、自分のやりたいことを第一に考え、その次に年金で損をしないように対策をたてるということでしょう。
たとえ年金がカットされても、それ以上に収入が入ってきて十分暮らしていけるのなら、そういう選択もいいことですね。
「どちらがいいですか」というご相談を受けることもよくありますが、「あなたはどうしたいのですか」とお聞きします。
さて、伸一郎さんも自分がしたいことをよく考えて、そして損のないように、前にすすめていってくださいね。
雇用保険との関係にも注意してください。
60歳定年後すぐに自営業をはじめたら、雇用保険から基本手当はもらえません。自営業は「失業」ではないのですから。「仕事を探していることにして、雇用保険から基本手当をもらおう」というのは、不正受給になりますよ。

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■□■ お知らせ ■□■
●アサヒSR年金研究会 福岡会場 オープン参加募集
3月19日(日)13:30〜16:30 福岡市中央区赤坂 中央市民センター会議室
この研究会は、大阪の社会保険労務士 小林賢介氏が主催です
「人生いろいろ」と題して、離婚時の年金分割等について、詳しい情報でお話していただきます。
お問い合わせはメールにて kobayashi@tree.odn.ne.jp
非会員の方の参加費などはお問い合わせください。

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2月6日(月)開講 基本は週2回(月・木)
会場は福岡市城南区「ヘルパーステーションじょうなん」にて
福岡県高齢者福祉生活協同組合 福岡西南事業所が主催します
お問い合わせはメールで。詳しい内容をお知らせします
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