★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

知っておきたい年金のはなし    第106号 2005年2月21日発行

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

老後の年金とは、退職後の生活、つまり、仕事ができない老後の生活を支えるものです。ですから、老齢厚生年金には、在職中(厚生年金加入中)は給料と年金の額によって、全額あるいは一部を支給停止するというしくみになっています。
一方、雇用保険からの失業給付(基本手当)は、仕事を探しているけれど仕事がない人の失業中の生活を支えるものです。
両方同時にはもらえないというしくみ、「今まで保険料をたくさん払ってきたのに!」という気持ちもわかりますが、まだ、理解できるような気がします。

しかし、ここまで制限する必要はあるのかと疑問に思うことがありました。
年金と児童扶養手当の関係です。
今日は、よくある事例ではないのですが、孫を育てる智子さんのお話です。

……………………………………………………………………………………………
第106号 年金と児童扶養手当
★★★ こんなに少ない年金でも? ★★★ ……………………………………………………………………………………………

智子さんはわけがあって、小学生の孫を育てています。
智子さんの夫はすでに亡くなりました。
夫は自営業だったので、国民年金加入でした。亡くなった当時、子どもはふたりとも20歳を過ぎていました。ですから、国民年金からの遺族基礎年金はありません。わずかな死亡一時金を受け取りました。寡婦年金の対象にもなりませんでした。
その後、事情があって、孫を育てることになりました。
孫を育てることになった智子さんは、現在、児童扶養手当をもらっています。
ところが、智子さんはもうすぐ60歳。60歳から老齢厚生年金をもらえる人です。
厚生年金に加入していた期間が短いので、非常に少ない年金額です。
その智子さん、年金をもらうようになったら、児童扶養手当はもらえないと聞いてびっくり。
年金は児童扶養手当より少ないのです。ひとりで孫を育てている事実には変わりありません。
こんなことってあるのでしょうか。

●児童扶養手当とは?

児童扶養手当の対象は、18歳の年度末までの子を育てている母、または母に代わってその児童を養育している人に支給されます。
ただし、支給要件がいろいろあります。(詳しいことは、ここでは省略します)
所得制限もありますので、たとえ条件に当てはまる人であっても、一定の所得以上の人はもらえません。

●年金をもらっていると、もらえない!

国民年金(老齢福祉年金を除く)厚生年金、共済年金などの公的年金給付を受けることができるとき児童扶養手当はもらえないとなっています。老齢年金や遺族年金、障害年金などの公的年金をもらっている人はもらえません。 ● 具体的には 夫が死亡して、妻が残された子どもを育てる場合を考えてみましょう。
幼い子どもがいれば、遺族基礎年金の対象となりますが(保険料納付要件を満たしていることが条件)、遺族基礎年金をもらえる場合は、児童扶養手当はもらえないのです。
夫が国民年金を滞納していたなどの理由で、遺族基礎年金をもらえない場合は、児童扶養手当をもらえることになります。
(ただし、その他、支給要件を満たしていることが条件です。以下同様)

●智子さんの場合

59歳の智子さんがもらっている年金は、今のところありません。
しかし、60歳になると、自分の老齢厚生年金の権利が発生します。
となると、児童扶養手当をもらえない人にあてはまることになり、そこで、児童扶養手当はストップします。

●でも、年金は少ないのでしょ?

年金の多い、少ないには関係ありません。
また、年金との差額を支給するようなしくみはありません。
少ない年金のために、年金より多い児童扶養手当がもらえないということにもなります。

●では、年金の手続をしなければいいのでは?

智子さんが年金の手続をしなくても、智子さんには老齢厚生年金の権利が発生しています。
権利が発生すると、たとえ手続をしていなくても、もらえないのです。

●年金が支給停止の場合は?

60歳以降も仕事を続けていて年金が全額支給停止になることもありますし、雇用保険からの失業給付を受けていて、年金が支給停止になりこともあります。
しかしながら、年金が支給停止になっている場合であっても、児童扶養手当はもらえません。

●年金の権利が発生したらもらえないと考えていいの?

そのとおりです。

●黙っていれば?

年金をもらっていることを言わないで黙っていても、60歳という年齢なので、年金の有無が調査されることになります。
事実がわかれば、返還することになります。

●申し出による年金の支給停止制度

平成16年の年金制度改定でこんなことが決まっています。
受給者の申し出により年金給付の支給を停止するというしくみです。自らの意思で、「その年金はもらいません」と申し出ることができるという、ちょっと変わった制度です。(平成19年4月からの施行) ただし、このしくみは、政令が出されていないので、詳しいことはよくわかりません。
智子さんのようなケースで、児童扶養手当を受けるときに有効かどうかはわかりません。
今後、注目しておく必要がありそうです。

……………………………………………………………………………………………
年金の額にかかわらず、年金の権利が発生したら児童扶養手当がもらえなくなるというしくみには、やはり納得しがたいものがあります。
子どもを育てている事実にはかわりないのですからね。
遺族基礎年金の場合、子どもひとりを育てる妻は、年間約100万円の年金をもらうことができますが、老齢厚生年金額には、最低保障はありません。年金をもらえるけれど金額が大変少ないというには、よくあることです。
60歳以上の方で18歳の年度末までの子どもを養育しているというケースは、年齢的に考えてもそう多い話ではないのですが、智子さんのような事例もあるのです。
納得できない智子さんの気持ちは、伝わってきますね。

……………………………………………………………………………………………
■□■ お知らせ ■□■ 
おすすめメルマガです! ★ 感性豊かな経営者・人事担当者はもう読んでいる! ★
会社にケンカを売った社員たち (毎週水曜日・好評配信中)
「社員から訴えを起こされない会社作りのヒントは社員の言い分にある!」
題材は実際の判例。ノンフィクションだから、読み物としても楽しめます。
詳細・ご登録はこちらから  → http://www.mag2.com/m/0000116175.htm
最新号の内容はこちら → http://blog.mag2.com/m/log/0000116175

セミナーの案内です
★ 「高年齢者就業支援セミナー」 ★
3月6日(月)14:00から16:00 北九州市小倉北区 小倉リーセントホテル
@「よくわかる! 60歳以降のくらしと年金」 菅野美和子が担当します
A「雇用情勢と高齢者の再就職」
申し込みは 福岡県北九州労働福祉事務所 就業支援課 093-592-3507

……………………………………………………………………………………………
女性に贈るみわ子さんの年金絵本 「年金、もっと知りたいな。」
全国の書店で好評発売中! 
ネット書店も便利です。送料無料で利用できるものもありますので、ご利用ください。
詳しくはこちらから → http://homepage2.nifty.com/miming2