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知っておきたい年金のはなし    第113号 2005年5月1日発行

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新しく社員を採用し、条件に該当すれば社会保険加入という、言ってみれば簡単なことですが、そのように簡単に思えることであっても、実にいろいろな問題が起こります。
3月20日に入社した人を、入社日から社会保険に加入する手続を取りました。ところが、その後給与明細をみて、抗議の一言。「10日しか働いていないのに、1月分の保険料が引かれている。4月からの加入にしてほしい」
答は「できません」

3月20日に加入した人を、3月はアルバイトということにして4月から加入とすると、「年金で損をする。入社当初からの加入にしてほしい」
いろいろなことがあって、結果としてさかのぼって加入することに。

また「社会保険に加入したくない」といって、会社が再三求めても、がんとして年金手帳を持ってこない人もいます。(こういう場合は年金手帳なしで強制的に加入することもできますが)
いろいろなケースをみて、大切なことは、最初の契約だということです。

ところで、最近、このような問題もありました。同じく、社会保険への加入をめぐっての問題です。
「雇用契約」と「委託契約」の違いから来る問題です。
当事者の芳郎さんは、大変困ったことになっています。
1年間、社会保険に加入できなかったのですから・・・

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第113号 雇用契約と委託契約
★★★ 厚生年金への加入は? ★★★
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芳郎さんは55歳。
22歳からずっと勤めてきた会社ですが、会社の経営が厳しくなったこともあり、昨年退職しました。退職後は、会社から「委託契約」で働いてほしいといわれました。
委託契約なので、雇用保険も社会保険もないと言われました。「それはしかたない、働けるのなら」と思いました。今から他の仕事を探すといっても大変です。健康保険は任意継続し、年金は国民年金の手続を取りました。
給料は半分ぐらいに下がってしまいました。ボーナスもありません。
しかし、毎日の仕事は、退職前と同じです。朝から夕方まで、上司の指示を受けての仕事です。
これでいったい何がかわったのだと思っていたところ、1年後に会社から言われました。
「やはり、社会保険に加入しなければなりません。今月から加入します」
加入についてはむしろ歓迎したいことですが、じゃあ、今までの1年分どうしてくれるんだという気持ちがだんだん強くなってきました。社会保険に加入できたのに、入っていなかったということなのかと、いろいろ考えてしまいます。

● 健康保険・厚生年金・介護保険

社会保険はこの3点セットです。
特殊な例はありますが、3点セットで加入します。もちろん、介護保険は、40歳以上65歳未満の人が対象です。

●社会保険に加入する人

「使用される人」という条件があります。「雇用契約」を結んでいる人です。
反対にいうと、使用されていない人は加入できません。
委託契約や請負契約です。

●具体的にいえば

たとえば、販売という仕事があるとします。
朝の9時から夕方の5時までは販売の仕事をし、働いた時間分の賃金を受け取るというのが「雇用契約」です。 しかし、売り上げに応じて報酬を出す、時間にもしばられず、個人の裁量で仕事をするということなら、「雇用契約」ではありません。
同じ販売の仕事だといっても、雇用契約として、一定の時間働いて賃金を得るのであれば、社会保険加入、どんなに長い時間仕事をしようとも、委託や請負であれば、社会保険には加入できません。

●芳郎さんはどうでしょう

委託契約だといっても、実は働き方は何もかわっていませんでした。
上司の指揮命令を受けて仕事をしていますし、勤務時間も決められているのです。

●実態をみて判断する

社会保険加入逃れのために、わざと委託契約にするという実態もあります。社会保険料が負担になるからだというのです。
芳郎さんのケースがそうだと断定はできませんし、慎重に対応しなければなりませんが、実質は雇用契約と同じようです。
それをどこかで指摘されたので、今になって芳郎さんに「社会保険加入」と言ってきたのではないかと思われます。

●芳郎さんの不利益は?

この1年間、芳郎さんは社会保険に加入できませんでした。
社会保険に加入できなかったということは、保険料の差以外には、どんな問題があるのでしょうか。
健康保険は任意継続していたので、給付において、不利益になっていることはありません。
問題は年金です。

●厚生年金と国民年金の差

保険料の問題はありますが、なんといっても、この期間分、2階の年金(報酬比例部分)が少なくなってしまったことです。

●長生きすればするほど

1年分の年金の違いは、給料によっても異なりますが、芳郎さんの給料では年間3万円ほどの年金額の差となります。
しかし、毎年3万円だとすると、65歳から85歳まで20年で考えても60万円です。
積み重なると大きな差になりますね。

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60歳以降、年金を全部もらえる方法として、「委託契約で仕事をしよう」と言う人もいます。
確かにほんとに委託契約なら厚生年金へ加入することはできませんし、在職老齢年金のしくみで、年金はカットされませんし、いい働き方といえるでしょう。
しかし、会社がお金のかかる社会保険には加入させてたくないとか、個人が年金をもらえないのなら厚生年金に加入したくないとか、本来「雇用契約」であるべきものを「委託契約」だとして、社会保険から逃れようとするのは問題です。
結局、芳郎さんも「社会保険加入逃れ」のための委託契約で、損をしてしまったと言えるのではないでしょうか。 ただ、「保険料で会社をつぶす気か・・・」と社会保険に加入したくないという会社の気持ちもわからないではありません。
保険料、高いです!

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