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知っておきたい年金のはなし    第114号 2005年5月11日発行

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国民年金の保険料1年分、銀行口座から引き落としされました。
口座振替で1年分をまとめて支払うと割引率が一番高いので、そのように手続きしていますが、まとめて引かれるとずっしり重みを感じます。
会社で厚生年金に加入している人は毎月の給料から保険料が引かれ、会社も毎月納付します。
社会保険料は毎月ですが、労災保険料と雇用保険料(労働保険料)は毎年この時期にまとめて申告納付することになります。(保険料の額によっては3回に分割して納付します)
今年は5月22日が締切りです。この時期に依頼先の会社から言われるのは、「保険料が高い」
そうですよね、1年分を計算するので、まとまった金額になります。
ここでもやっぱり聞こえてくるのが、「保険料で会社をつぶす気か」というため息です。
しかし、会社を経営するということは、また人を雇うということは、当然、必要な保険料も発生するということです。その覚悟がいるということです。
「保険料がこんなに高いなんて思わなかった」ということもよく聞きますが、その「高い」保険料を考えに入れておくべきですね。
そんなことを思いながら、今日は労働保険の申告書を書いていました。

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第114号 夫婦の年金
★★★ なぜ夫の年金が減ったの? ★★★ ……………………………………………………………………………………………

60歳になった玲子さん、実は心配なことがありました。
玲子さんは会社勤めをしていますが、このまま働いていると、年金が減らされるかもしれないと。
そこで、年金相談を利用しました。
玲子さんの年金は月に8万円ほど、会社の給料は15万円ほどです。
「まったく年金カットの心配はありませんよ」という回答に安心しました。給料が安くて安心というのは変な話ですがね。
ボーナスが年金に影響するという説明もありましたが、これも残念ながら、影響するほどのボーナスはもらっていません。
玲子さんの場合は、ボーナスのために年金が減る心配ないもないとわかりました。
玲子さんは今の給料に年金がプラスされると考えていいのだなあと思い、安心して年金の手続をしました。
ところが玲子さんが年金をもらうようになって、なんと、夫の年金が減ってしまったのです。
毎月3万円ほど減っています。
これなら、玲子さんが8万円の年金をもらうようになっても、夫婦では実質5万円ほど増えただけだということになります。
もう少しあとで手続をしたほうがよかったのかしらと玲子さんは思いましたが、さてどうでしょうか。

●まず、玲子さんの年金加入期間は?

玲子さんはずっと共働きです。給料は低かったのですが、厚生年金加入期間は30年ありました。
同じ世代の女性としては長いほうでしょう。

●夫の年金は?

夫も厚生年金加入期間が長く、約40年。すでに退職しています。
現在は64歳で、1階の年金と2階の年金、両方もらっています。
そして、さらに、加給年金がついていました。

●加給年金とは?

年金の家族手当のようなものです。配偶者加給年金には特別加算があります。
その加給年金がプラスされなくなくなったのです。
玲子さんの夫は、妻が年金をもらうようになり、加給年金をもらえなくなってしまったのです。
●厚生年金20年以上加入している妻

厚生年金に20年以上加入している妻が年金をもらい始めたら(受給権が発生したら)、夫の加給年金は支給停止となります。妻も一人前の年金をもらえるのだから、年金の家族手当は必要ないというのです。
玲子さんの場合、30年以上加入しているので、年金の権利が発生したときから、加入年金はストップです。それで月に3万円ほど年金が少なくなってしまったのです。

● 給料が安かったので年金は多くない

たくさんの年金をもらえるのならいいけれど、パートで働いていたので給料も少なかった玲子さん。年金は給料に比例します。加入した年数は長くても、それなりに年金は少ないのです。
そんなに少ない年金なのに、夫の加給年金がなくなったらたまりません。
せっかく年金を楽しみにしていたのに、なんだか、がっかりです。
でも、これは法律で決められたことです。

●こんなことならもっとあとで手続したほうが?

いえいえ、いつ手続きしても同じです。
受給権が発生したときまでさかのぼって計算し直されますので、もらいすぎていた年金を返さなくてもはりません。
いったんもらってしまった年金をあとで返すほうが大変です。

●2階の年金(報酬比例部分の年金)だけの期間であっても?

加給年金は1階の年金(定額部分)と手をつないでいます。1階の年金が始まらないと、加給年金はもらえません。 玲子さんの場合は、60歳から1階と2階の年金がもらえますが、今後は、女性であっても60歳から1階の年金をもらえない時代がやってきます。
では、妻の2階の年金(報酬比例部分)は60歳から、2階の年金(定額部分)が62歳からという場合、夫の加給年金が支給停止になるのは、いつからでしょうか。
やはり、妻60歳からです。

●2階の年金しかもらってなくても?

そうです。妻が2階の年金しかもらっていなくても、加給年金はストップします。

●失業給付を受けている間

玲子さんは働き続けますが、会社をやめて雇用保険から失業給付を受けている間はどうなるでしょう。
雇用保険からの失業給付(基本手当)と年金は両方もらえません。
基本手当をもらっている間は年金がストップします。
その間は、また、夫に加給年金がプラスされるという、これまた複雑なしくみです。

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年金制度は夫婦単位に考えられているので、こんなことになるのです。
ときどき質問があります。
妻の厚生年金加入期間が20年になって加給年金がなくなってしまうのなら、19年11ヵ月で妻は会社を辞めたほうがいいのかと。
確かに加給年金をもらえるかどうかで判断したら、19年11ヵ月の方がいいでしょう。
でも、問題は何を大切にするかということだと思います。
年齢にもよりますが、私は、加給年金のために自分のやりたいことを断念する必要はないと思います。自分の夢を大切にしたいです。
加給年金のために「働かない」選択をしなくてもいいのではないでしょうか。
自分の人生ですものね。
玲子さんは、ホームヘルパーの仕事をしています。介護という仕事に生きがいをもっています。これからも、できるかぎり、仕事を続けたいと考えています。
たとえ、19年11ヵ月だったとしても、働き続けただろうと、玲子さんは思いました。
私も、働き続ける人を応援してくれる年金制度であってほしいと思います。

ここでは、厚生年金加入20年というお話をしましたが、生年月日によっては特例があって、15年〜19年であっても、玲子さんのようなことが起こる場合があるので、自分の生年月日で調べてみることが必要です。

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