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知っておきたい年金のはなし    第115号 2005年5月21日発行

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久しぶりで書店の年金本コーナーをゆっくりみました。
最近、本の注文はもっぱらネットですが、ゆっくり書店でみるものいいものです。
年金本のコーナーで気がつくことは、「わかる」「得する」「損しない」というキーワードです。
それは大事なことですね。
しくみをよく知って、得をしないまでもあたりまえにもらう、つまり損をしないことが大切です。
しかし、私はこのメルマガで、年金を通じてみえてくる世の中のしくみや人生について考えていただけたらなあと思っています。
目先の損得だけではない、制度への理解が、私たちにとってよりよい制度作りへと、つながっていくのだと思います。

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第115号 遺族厚生年金のしくみ
★★★ いくらぐらいもらえるの? ★★★
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直子さん夫婦は、夫の定年退職を前に、これからの生活設計を考えています。
夫が63歳になるまでは年金が少ないので、今年から始まった継続雇用制度で、60歳以降も働くことを希望しました。給料はダウンしますが、年金だけでは生活できないし、健康のためにも仕事をしたほうがいいと夫婦で話し合いました。
夫婦ふたりの間はそれでなんとかなりそうですが、もし夫に万が一のことがあれば、遺族年金はどうなるのだろうと、直子さんはひとりで考えています。
直子さんは専業主婦で収入もありません。

かなり心配です。

●遺族年金

直子さんの夫は59歳。現在厚生年金に加入中です。
大学を卒業してからずっとサラリーマンでした。
今、夫が死亡したら、妻は遺族厚生年金の対象遺族となります。

●遺族年金はいくらぐらい?

夫の2階の年金(老齢厚生年金の報酬比例部分)の4分の3です。
夫の年金全部の4分の3と勘違いしている人もおられますが、年金全部の4分の3ではありません。

●計算の方法は?

直子さんの夫は厚生年金に加入した年数が長いので、これまでの給料(標準報酬月額)の平均と、平成15年4月以降はボーナスも含めた平均額に実加入期間を掛けて計算します。
給料が多ければ多いほど、厚生年金に加入していた期間が長ければ長いほど、遺族厚生年金も多くなるということです。

●では若くて亡くなった人は少ないの?

遺族年金とは残された家族の生活保障です。
ですから、厚生年金加入期間の短い若い人が亡くなった場合、実際の加入期間で遺族年金を計算すれば、とんでもない少ない金額になってしまい、意味のない年金になってしまいます。
そこで、「短期要件」という計算式があって、どんなに短い期間の人であっても、25年加入していたものとして、遺族厚生年金は計算されます。25年の最低保障ということですね。

●直子さんの夫の場合は

直子さんの夫の場合は、「長期要件」に該当しますので、実際の加入期間で計算します。
なかには、短期要件にも長期要件にも該当するという人が出てきますが、あまりむずかしく考えないでください。有利な方法を選択できます。社会保険事務所の窓口で教えてくれますよ。

●中高齢寡婦加算

直子さんの夫は40年近く厚生年金に加入している人なので、いつ死亡しても、65歳未満の妻には、中高齢寡婦加算という約60万円ほどの加算があります。
2階の年金が120万円だとすると、遺族厚生年金は中高齢寡婦加算を加えて、約150万円です。
これが多いか少ないか?
●65歳になると

ちょっとわかりにくいのですが、中高齢寡婦加算はなくなります。
「約60万円も少なくなってしまうの?」とびっくりされるでしょう。
なぜなくなるかというと、自分の老齢基礎年金がもらえるようになるからです。
●自分の年金は少ないよ!

直子さんは、昭和61年3月までのサラリーマンの妻の時代に、国民年金加入していませんでした。加入してもしなくてもどちらでもよかったので、何も考えることなく、加入していませんでした。
ですから、その期間は自分の老後の年金額にはつながらす、65歳から自分の老齢基礎年金がもらえるといっても、60万円もありません。
結局、遺族年金をもらっていても、65歳以降はトータルとして年金が減ってしまうということなのです。

●そこで経過的寡婦加算

そんな妻への配慮として、65歳以降は経過的寡婦加算というプラスがあって、急激に年金が減ってしまうことを防ぎます。
だだし、経過的寡婦加算は生年月日によって異なり、若い人ほど少なくなり、昭和31年4月2日以降に生まれた人にはありません。頼りがいは弱いですね。

●遺族年金は終身

遺族年金は再婚でもしない限り、終身です。
再婚するときは、事実婚であっても権利はなくなりますので、あきらめてくださいね。

●平成19年4月から変わる遺族年金

平成19年4月以降は、子どものいない30歳未満の妻(夫死亡当時)の遺族厚生年金は5年間だけになってしまうとか、65歳以降の自分の老齢厚生年金と遺族厚生年金は調整されるとか、新たなしくみがスタートします。 どちらかといえば、もらう側からいえば、不利になることばかりです。

●あてにしていいけれど、それだけでは少ない

遺族厚生年金はあてにしてもいいけれど、それだけで生活するのには少ない金額です。
万が一の場合について、そのほかにどのような準備をすればよいのか、我が家のお金はどうなっているのか、調べておくことです。
直子さんにも必要です。夫の退職金や、これまでの貯蓄、生命保険などを調べてみてくださいね。

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離婚時の年金分割と遺族年金、関係ないようで関係あります。
離婚時の年金分割で離婚が増えれば、結果として、国は年金を出すのが少なくなります。
離婚しない夫婦の場合、もし夫が先に亡くなれば、妻に遺族年金を出すことになります。
しかし、離婚が進めば、遺族年金を出すのが少なくなるということです。

離婚時の年金分割は夫の年金をどのように分けるかという問題で、お金を出すほうのサイフには影響がありません。ひとりの人に出す年金をふたりに分けるだけですからね。
女性の平均寿命は男性より長いので、少し余分に出すことにはなるでしょうけれど。
しかし、遺族年金はその人が亡くなったあとも、4分の3のお金を出し続けるしくみです。
女性のほうが長生きすると考えると、国のサイフから出て行くお金は多くなります。

離婚が増えて年金分割が増えて、ちょっとらくになるのは「年金財政」ともいえるでしょう。
遺族年金として出すより、離婚時の年金分割して出したほうが、年金財政という国のサイフにとっては助かるはずです。

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