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知っておきたい年金のはなし    第116号 2005年6月1日発行

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社会保険事務所の国民年金保険料不正免除が大きな問題となっています。
多くの社会保険事務所で、申請書なしに国民年金保険料免除の手続をしていました。滞納率を減らすために、つまり、成績を上げるためになされたようです。
納付率を上げるのなら、支払うべき人からは保険料を徴収し、収入が少ないなどで苦しい人にはきちんと免除制度を利用してもらう、そんなことをすべきです。
しかし、成績を上げるために、手っ取り早い方法を選んだのなら、そういう社会保険事務所のあり方が大きな問題です。
年金制度への信頼を崩す問題です。

それにしても、苦しいときに利用できるのが免除制度です。自分を守るためにも、知っておきたいことですね。 今回は国民年金の免除制度についてお話しましょう。

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第116号 国民年金保険料の免除
★★★ 苦しい時には手続を! ★★★
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FP(ファイナンシャルプランナー)の勉強を始めた紀美子さん。勉強を始めてみると、自分の生活に役立つことばかりで、とても興味深いです。仕事をしながら日曜日に学校に通うのは大変ですが、がんばって資格を取りたいと思います。
ライフプランからはじまってリタイアメントプラン、年金の授業がありました。
それにしても、年金はむずかしい!
興味はあるけれど、「○○加算」などがたくさん出てきて、頭の中がごちゃごちゃしてきます。
20歳後半の紀美子さんは現在正社員として働いていますが、友達にはフリーターもいます。国民年金には無関心で、保険料を払っていない人も多いです。
「未納のままではいけないよ」と思うのですが、「私たちが年金世代になる頃には年金なんてもらえないし、関係ないよ」と言われて、なかなかうまく説明できません。
勉強したからには友達にも、年金の大切さを教えてあげようと思います。そして、生活が苦しい時は免除制度・納付猶予制度(30歳未満)を利用できることも、教えてあげたいです。
しかし、ちょっとため息も。
今年の7月からこれまでの全額免除、半額免除に加えて、4分の1免除、4分の3免除が加わると授業で聞いて、また覚えることが増えたなあと思います。ただでさえ、たくさん、覚えることがあるのに・・・

●保険料を納めるのが苦しい時

国民年金の保険料は定額です。つまり、どんなに所得の多い人であっても、所得がゼロの人であっても、払う保険料は同じということです。
厚生年金の保険料のように、給料(標準報酬)に対する率ではありません。率であるなら、給料の多い人がたくさん払って、少ない人は少なく払うということになりますが。
国民年金の保険料は誰でも同じ定額なので、生活が苦しいときには、保険料を免除できるというしくみがあります。

●法定免除とは?

生活保護を受けている場合や、障害年金をもらっている場合は、「法定免除」といって、当然、保険料は免除になります。

●申請免除とは?

生活が大変だから免除してほしいと申請し、認められた場合に免除となる、それが申請免除です。
あくまでも、本人からの申請です。
今回の問題は、申請書なしに免除していたということですね。

●所得によってふたつの免除

申請免除には、保険料をまったく払わなくてもよい全額免除と、半分だけ保険料を払う半額免除があります。
所得によって、全額免除はできないけれど、半額免除ならできるという場合があります。

●どう違うの?

全額免除はまったく保険料を払わなくてもいいのですが、老齢基礎年金(65歳以降の1階の年金)を計算するときに、免除を受けた期間は保険料を払っていないけれど、3分の1保険料を払ったものとして年金額を計算します。
たとえば3年間免除を受けたとしますね。年金の計算をするときは、その3分の1、つまり、1年は保険料を払ったものとして、年金を計算するというしくみです。

●苦しい人にはうれしいしくみですね!

そうですね。滞納のままなら年金はもらえないのです。

● 半額免除とは?

半額免除を受けた期間の3分の2が年金につながります。
たとえば、3年間半額の保険料を払ったとすると、3年のうち2年は全部保険料を払ったものとして老齢基礎年金を計算します。

●半分払ってどうして3分の2なの?

それは国庫負担が3分の1あるからです。
つまり、年金の3分の1は国の財政でまかなわれています。半分の保険料を払うということは、残りの3分の2のそのまた半分に当てはまります。
ですから、半分の保険料を払うことによって、3分の2の年金が準備されるということなのです。

●多段階免除制度が始まる!

7月から、全額免除、半額免除に加え、4分の1免除、4分の3免除が始まります。
4分の1免除とは、保険料の4分の3を払うということです。
ですから、国庫負担3分の1と、残りの「3分の2」のうちの「4分の3」、合わせて「6分の5」は保険料を納めたものとして計算されます。
言葉で書くとわかりにくいですが、図に描いてみると、簡単ですよ。

●4分の3免除とは?

4分の1の保険料を払うということです。
国庫負担3分の1と、残りの「3分の2」のうちの「4分の1」、合わせて「2分の1」は保険料を納めたものとして計算されます。
これも図に描いて確認してみましょう。

●所得に応じて

どの段階の免除制度が利用できるかは所得によって異なります。市町村の国民年金課や社会保険事務所で調べてください。

●一番いけないのは滞納のままにしておくこと

滞納のままにしておいてよいことはありません。
困ったときに助けてくれるのが年金制度ですが、保険料を滞納していると、助けてもらえないことになってしまいます。
苦しい時は、まずは、免除できるかどうか、調べてみましょう。

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年金を理解するのための一番の早道は、しくみを理解するということです。
FPの勉強をしている紀美子さん。当然、試験対策もあります。
この免除制度を数字で覚えようとすると大変ですが、数字を覚える必要はありません。
しくみが理解でれば、簡単です。

国庫負担は今後2分の1へと引き上げていくことが決まっています。
2分の1になれば、また計算が変わります。
国庫負担2分の1の場合、半額免除となれば、2分の1のそのまた半分という計算になりますので、結局、4分の3として年金が計算されることになります。

それなら国庫負担が増えれば有利になるのではないかと思いますね。
しかし、それはちょっと待って!
国庫負担とは、税金で負担をするということなのです。
その財源をどうするかが必ず問題となり、なんらかの形で「増税」です。
税金がほんとに私たちのために使われているのならまだしも、一人数万円の国会議員の「料理代」に使われている一方で増税だとなると、これは納得できないですよね。

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