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知っておきたい年金のはなし    第117号 2005年6月11日発行

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1人の女性が一生の間に平均何人の子供を産むかという「合計特殊出生率」が1.25人に下がったということが「大きな問題」として取り上げられています。
より子どもを生み育てやすくということから、年金のしくみも変わってきました。育児休業中の保険料免除などのしくみもそうですね。児童手当もそうです。
しかし、保険料を免除したり、児童手当を少しぐらい増やしても、それぐらいでは、出生率は上がらないでしょう。
教育費にかかるお金、いろいろな事件、働く環境、子育てしにくい世の中です。保育所も順番待ちですぐに入れないと聞きます。
それでは、子どもを生めないですね。
もっと根本的なことを考えて、男も女も働きやすい環境を作っていかないと、出生率は上がらないでしょう。
さて、話はがらっと変わりますが、今日は、遺族年金にかかわるお話です。

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第117号 事実婚の妻の場合
★★★ 遺族年金は誰のもの? ★★★
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75歳の幸子さん。15年前に夫がなくなり、ひとり暮らしです。子どもはいません。最近は身体も弱くなり、何かと気弱になっています。
介護保険を利用して、ヘルパーさんに来てもらっています。しかし、そんなふうにして暮らしていけるのも、遺族年金のおかげです。幸子さんは自分自身のわずかな老齢基礎年金と亡くなった夫の遺族厚生年金で暮らしています。

亡くなった夫はサラリーマンでした。
実は、幸子さんは戸籍上の妻ではありません。
夫との結婚生活は長かったのですが、夫には戸籍上の妻がいて、子どももいました。戸籍上の妻がどうしても離婚に応じなかったため、幸子さんは長い間入籍できず、とうとう最後まで入籍することなく、夫は亡くなりました。

夫が亡くなったとき、夫の一人息子はすでに成人していました。幸子さんが遺族年金をもらうことになりました。夫と本妻とは音信もありませんでした。実際に長い間いっしょに暮らしていた幸子さんが遺族年金をもらえる妻だったのです。
相続のこともあったので、夫の死亡後、幸子さんは本妻と話し合いましたが、遺族年金で争いになることはありませんでした。

ところが、最近、本妻が、生活保護を受けていることを知りました。そして、海外で暮らしていたひとり息子がもうすぐ帰国し、生活保護を受けているおかあさんを引き取ることもわかりました。
幸子さんはその話をきいて、急に心配になってきました。
遺族年金を取られたらどうしよう… 
幸子さんは遺族年金でなんとか生活しています。

●誰が遺族年金をもらうのか

サラリーマンの夫が在職中に死亡した場合、誰が遺族年金をもらえるのでしょう。
法律上、遺族厚生年金をもらえる遺族には順番があります。第一順位は配偶者と子どもです。
夫が死亡した場合は、残された妻と子が遺族厚生年金の対象者となりますが、子どもには年齢制限があります。18歳の年度末までの子、あるいは、障害のある場合は、20歳未満です。
すでに成人している子どもは対象になりません。
妻には年齢制限がありません。

●妻の条件

妻であるといっても、「生計維持関係」がないともらえません。生計維持関係とは、死亡した夫の援助があって生活をしていたということです。
なんらかの事情で別居していても、仕送りをしていたなど、経済的な援助があったのなら、生計維持関係を認められます。
いっしょに暮らしていない、お金も送っていないということでは、妻であるといっても、遺族年金はもらえません。

●戸籍上の妻と事実上の妻

遺族年金は事実上の妻であっても対象となります。
幸子さんの場合は、単に事実上の妻ということだけではなく、戸籍上の妻がいるから、「重婚的内縁関係」ということになります。
もしどちらの妻も亡き夫の援助をうけて生活していたのなら、戸籍上の妻が優先されることになります。(個々のケースによっては異なりますので、一般的な話です)

●幸子さんの場合

幸子さんの場合、夫は戸籍上の妻とは長い間何の関係も音信もありませんでした。幸子さんが「妻」として認められて、遺族年金をもらうことになったのです。

●決めるのは誰?

時々、遺族年金をもらう人を遺言で指定できるか、話し合いによって決められるかという質問もありますが、遺族年金とはそういうものではありません。
誰が遺族年金もらうかということは、話し合いや遺言で決めることではなく、法律に従って決定されるのです。
●幸子さんの心配はどうなる?

幸子さんは、無年金で生活に困った本妻が、遺族年金は私のものだと取り返しに来ないかと心配しています。息子が帰ってきたら、親子で取り返しに来ないかと、それが心配です。
本妻が遺族年金の受給権者は自分だと主張するのなら、夫死亡の当時、生計維持関係があったことを証明しなければなりません。
15年前の話、それは大変なことになります。
そういう事実もなければ、無理な話です。幸子さんは心配することはありませんし、もし、そんなことで乗り込んで来られても、相手にしなければいいのです。

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高齢、しかも年金だけを支えに暮らしている幸子さんの不安な気持ち、わかります。
幸子さんの話のとおりであれば、幸子さんは法律にしたがって遺族年金をもらっているのですから、何の問題もありません。
しかし、こういったことが争いになることもあります。
戸籍上の妻か、事実上の妻か。
裁判になったケースもあります。
遺族年金は、再婚でもしない限り、終身もらえる年金です。この年金があるかないか、残された妻の生活がかかってきます。
遺族年金をもらえてそれで生活している事実婚の妻。遺族年金をもらえず、今では生活保護を受けている戸籍上の妻。
年金をもらっていると言っても、少ない年金でつつましく生活しているもの実態です。
どちらも同じ女性です。
複雑な気持ちになりますね。

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