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知っておきたい年金のはなし    第120号 2005年7月11日発行

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毎週楽しみにしているのが、ドラマ「チャングムの誓い」
展開の速さと、次々に起こるできごと。こんな話を書けたらいいなと思いながらみています。年金の話とは関係ないようですが、はらはら、どきどきするような、年金の話を書きたいですね。
ほんとに複雑すぎる年金。その中でも、こんなしくみをよく考えたものだと思うのが、老齢基礎年金の一部繰上げです。

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第120号 老齢基礎年金の一部繰上げ
★★★ 年金が少ないと生活できない ★★★
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隆志さんはもうすぐ60歳。
会社を退職します。
今年の4月から継続雇用制度がスタートしましたが、希望しませんでした。なぜなら、隆志さんより若い妻が若年性認知症となり、介護が必要になってきたからです。
隆志さんだけでは介護できません。認知症専用型のデイサービスに通っていますが、介護保険の利用額には上限があって、毎日利用できません。
隆志さんは妻の介護のため、退職します。
しかし、心配なのは、お金のこと。

年金は60歳からもらえますが、63歳になるまでは、120万円ほどです。
63歳になれば、1階の年金と妻に対する加給年金がプラスされて、240万円ほどになりますが、それまでの3年間、これだけの年金ではきびしいです。
退職金は住宅ローンの返済にあてます。
また、妻の介護のために現金も残しておきたいと思います。

そんなとき、老齢基礎年金の一部繰上げというしくみがあると聞きました。
60歳からもっと多い年金を受け取ることができると聞きましたが、どうでしょうか。

●老齢基礎年金の繰上げ
65歳からもらいはじめる老齢基礎年金を、65歳に早くからもらい始めるのが通常の繰上げ制度です。
一番早くて60歳から。
60歳ちょうどでもらいはじめると、70%に減額されます。

●繰上げのデメリット

減額された年金が一生続くこと。
その後、障害年金に該当するような障害の状態になっても、障害年金はもらえないことなどがデメリットです。

●時代は変わり、厚生年金に加入している人は?

60歳から1階と2階の年金をもらえる時代はよかったのです。
厚生年金加入期間が長くある場合は、わざわざ繰上げなどする必要はありませんでした。

●支給開始が遅れていく

厚生年金の支給開始年齢は、若い人ほど遅くなっていきます。
今年60歳になる人は、60歳から2階の年金はもらえるけれど、1階の年金はもらえません。
となると、1階の年金がスタートするまで、少ない年金で生活していくことになります。

●一部繰上げ

どうしてもその年金だけでは暮らしていけないという場合、一部繰上げという方法があります。
しかし、実にこれはわかりにくいしくみです。

●2年間の年金を5年でもらう

隆志さんの場合、定額部分(65歳未満の1階の年金)は63歳からです。
定額部分が80万円としますね。
65歳までにもらえる定額部分の合計は、80万円×2年分で160万円です。
その160万円を60歳から5年でもらうということです。
つまり、ほんとは2年で160万円もらうところ、それを5年に分け、1年につき、32万円ずつもらうというわけです。

●それでは得も損もしないのでは?

しかし、同時に65歳以降の老齢基礎年金(1階の年金)の一部を繰上げしなければなりません。
隆志さんは定額部分の5分の2を受給しますので、5分の3は不足することになります。この5分の3は、65歳からの老齢基礎年金を先取りするというのです。
5分の3は老齢基礎年金の全部ではありませんので、一部繰上げといいます。

●減額される老齢基礎年金

先取りする5分の3の年金は70%に減額されます。残りの5分の2の老齢基礎年金は先取りしないで残しておくので、減額されることはありません。

●結局どうなるの?

隆志さんが60歳から老齢基礎年金の一部繰上げをすると、
報酬比例部分の年金 120万円
定額部分の年金 32万円
一部繰上げした老齢基礎年金 65歳からの額の5分の3の70%
仮に老齢基礎年金が75万円だとすると、31.5万円。
合計183.5万円になるということです。(60歳〜65歳未満)

●本来の年金と比べてみましょう

加入年金を計算に入れなければ、本来1階と2階の年金は200万円。
一部繰上げした場合は、183.5万円。
繰上げでそれほど少なくなってしまったという感じではありません。

●どうしても年金をもらいたいときに

一部繰上げも検討に入れてみていいですね。
しかし、障害年金、遺族年金、在職老齢年金が関係してくる場合は、繰上げしなければよかったということにもなりかねません。
繰上げを考えるときは、よく調べてみてくださいね。

※上記の計算例は、わかりやすい数字で示したものです。参考としてごらんください。実際には、経過的加算まで正確に計算しなければなりません。必ず社会保険事務所で試算してもらってください。

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人の寿命はわからないもの。
だから、年金もむずかしいのです。
よい選択であったかどうかは、その人の一生を終えてみないと、つまり結果が出ないとわからないでしょう。
ただ、大切なことは、自分でよく知って選択すること。
他の人がそうしているから、人にすすめられたからではなく、これからのライフプランをしっかりたてて、メリット、デメリットを考えて選択することです。
なにがあるかわからない人生、だからおもしろいのでしょう。

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