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知っておきたい年金のはなし    第123号 2005年8月21日発行

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8月10日付けで、社会保険庁の「年金記録相談の特別強化体制について」という文書が出ています。
いろいろと不祥事があり、年金に対する不信が広がっているので、年金記録については、強化体制を組んで、間違っているという申し立てがあれば、徹底的に調査するというものです。
前回のメルマガに、退職日が1日違うだけでも1ヵ月損をするという話を書きましたが、申し立てがあれば調査するということです。ただし、証明になるものが必要です。

国民年金加入期間の場合、これまでは、領収書を持ってくるようにと言われてあきらめた人も多いようです。何十年前の領収書なんて、持っていない人がほとんどですね。

また、会社の給料から引かれる社会保険料に領収書はありません。
証明になるものとは、当時の給与明細でもよいそうです。家計簿でも「証拠」になる場合があります。
記録が間違っているという場合は、調査を依頼してみればどうでしょうか。
結果はわかりませんが、納得できるまで、動いてみるのもひとつの方法です。
自分のことですからね。
詳しいことは、社会保険庁のホームページをみてください。
http://www.sia.go.jp/topics/2006/n0810.pdf

さて、今日は、離婚時の年金分割について、少し詳しくお話しましょう。

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第123号 離婚時の年金分割
★★★ 共働きの場合 ★★★
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香奈枝さんは50歳になります。看護師として働いています。
これまでいろいろなことがあり、今、離婚の話合い中です。子どもはまだ高校生。香奈枝さんが引き取ることで話はついています。問題はお金のこと。
そのひとつが年金分割です。

離婚時の年金分割の話はいろいろなところで目にしますが、いつも例に出て来るのは専業主婦です。
香奈枝さん夫婦はずっと共働きでした。
香奈枝さんは数回を転職していますが、夫も転職しています。失業中、香奈枝さんは夫の扶養になったこともあります。
ふたりの給料を比べてみると、夫より妻が多かった期間も数年あります。

こんな夫婦が離婚すれば、年金分割はどうなるのでしょうか。
分割すればほんとに香奈枝さんの年金は増えるのでしょうか。

●年金分割とは保険料納付記録の分割

年金分割とは現金で年金を精算することではなく、保険料納付記録を分割することです。
保険料納付記録とは、毎月の保険料算定の基礎となる標準報酬月額と標準賞与額です。
ボーナスも対象になるのですよ。

●分割後は新しい標準報酬額に書き換える

分割の対象となるのは2階の年金(報酬比例部分)のみ。
その2階は、給料やボーナスの平均である標準報酬額で計算します。
分割するということは、その標準報酬額を書き換えて、分割後の新しい標準報酬額で年金を計算するということです。

●共働きの場合

共働きの場合は、お互いに収入があります。対象期間の標準報酬総額を計算してみて、
標準報酬総額の高い方から低い方へと分割することになります。
あるときは夫が高い、あるときは妻が高い、いろいろあるでしょう。しかし、すべてを合計するのです。合計してみて、どちらが高いかということですね。
結果として、高い方から低い方へと分割するというしくみです。
夫から妻へとは限りませんよ。妻から夫へとなることもあります。

●具体的には

まず、年金分割対象期間中の標準報酬額の総額を出します。つまり、対象期間の毎月の標準報酬月額や標準賞与額全部を足します。共働きの場合は、夫と妻、それぞれで、同じように計算します。
たとえば、夫の総額が6000万円、妻の総額が4000万円だとします。この場合、年金分割は夫から妻へとなります。

●次に按分割合を決めます

按分割合とは、年金をどのような割合で分けるかということです。
按分割合は最大50%です。
このように按分割合には上限もありますが、下限もあります。
収入のゼロである専業主婦の場合は、0%から50%の範囲内で按分割合を決めますが、共働きの場合は、それぞれ収入があるので、下限を決めておかないと、分割を受ける側の年金が、分割することによって減額されるというおかしなことになるからです。

●按分割合の下限

夫6000万円、妻4000万円とすると、二人合わせて1億円。妻の持ち分が40%となるので、按分割合の下限は40%です。このケースでは、40%〜50%の間で按分割合を決めるということになります。

●按分割合が50%に決まったら

相手の年金の半分もらえるのかといとそうではありません。自分の持ち分は40%あるのです。按分割合が50%となっても、50%−40%で残りは10%。実際には10%しか増えないということになります。
自分の持ち分が多い、つまり相手との差が少ないということは、たとえ、按分割合を50%に決めてもほんの少しだけということになります。

●それからどうするの?

按分割合で合意できたら、社会保険事務所に分割改訂の請求をします。
社会保険庁は按分割合から算定される「改訂割合」を計算の基礎として、対象期間中の標準報酬額の分割を行います。

●なんだか、複雑!

香奈枝さんの例でみましょう。問題は、夫と香奈枝さんの標準報酬額の総額に、どの程度の違いがあるかということです。
香奈枝さんの給料がずっと安かったというのなら、差が出ますね。
しかし、多かったり少なかったりすると、結局、総額では差が出ないかもしれません。
結果として、夫5000万円、妻5000万円と同額になれば、分割しても意味がないことになります。

● 按分割合50%、妻の持ち分を40%とすると

按分割合を50%としましょう。
しかし、香奈枝さんの持ち分がもともと40%あるとすると、50%と決めても、実際には10%しかありません。
按分割合を40%と決めても、もともと40%の持ち分を差し引くと、ゼロになり、結局、年金分割する意味がないということになります。

●大切なのはこれまでの記録

年金分割したらどうなるのか、データの提供がないと計算できません。
社会保険庁からデータを提供してもらうことになります。
専業主婦の場合は妻の収入ゼロで計算するので、わかりやすいのですが、共働きの場合は、だいたいどのぐらいになりますかと質問されても、資料がない限り、答は出せません。
その資料をみて、標準報酬額の総額に差がなければ、年金分割に期待できません。

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香奈枝さんも、年金分割にあまり期待しない方がいいでしょう。
せっかく来年の4月まで待っても、期待はずれになってしまうこともあります。
子どもを引き取って離婚するなら、しっかり養育費を請求するほうがいいかもしれません。
慰謝料や財産分与に力を注ぐほうが賢明かもしれません。
香奈枝さんのように夫婦の収入に、差があまりないような場合は、年金分割しても意味がないのです。
もし、妻の方が多ければ、年金を持っていかれるのは、香奈枝さんです。
これはたまったものじゃない!
資料を取り寄せてから、慎重にしましょう。
今年の10月から資料の提示を求めることはできますが、手ぶらで社会保険事務所へ行ってもだめですよ。夫婦の年金手帳、戸籍謄本を用意していきましょう。
何はともあれ、離婚を考えているのなら、今のうちに、夫の年金手帳のコピーをとっておいた方がよさそうです。

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