★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

知っておきたい年金のはなし    第124号 2005年9月1日発行

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

2004年の年金制度改革では「見送り」となった「パート労働者の厚生年金への拡大の方針」は、ちゃんと生きているのですね。
読売新聞の記事によると、8月19日に「パート労働者への厚生年金の適用拡大に関する厚生労働省の試算」が明らかになりました。

モデルケースで試算されているのですが、現在41歳の女性が月8万円のパートを20年したら、保険料負担は約162.4万円増となりますが、年金は(平均余命89.3歳まで生きた場合)261万円増えるという試算でした。
この記事を読むと、「年金が増えるからいいですよ!」というように読みめますが、実は「取らぬ狸の皮算用」というふうにも読めます。
政府は、週20時間以上のパートタイマーを厚生年金に加入させる方針を持っていて、2009年にも実施したいということです。

これは、第3号被保険者を減らしていく方針だと思いますが、第3号被保険者がどんどん減っていくのなら、2008年から始まる離婚時の3号分割も、対象者が少なくなり、あまり意味のないしくみになってしまうかもしれませんね。

今日は、パートタイマーの厚生年金加入について考えてみましょう。

……………………………………………………………………………………………
第124号 パートタイマーの厚生年金加入
★★★ 加入でどうなる? ★★★
……………………………………………………………………………………………

50歳の昌子さんは、現在パートで働いています。結婚前に数年会社勤めをしましたが、結婚で退職。子どもが大きくなるにつれて教育費も大変になってきて、パートとして働いています。
夫の扶養の範囲を超えたら損をするというふうに言われるので、103万円を超えないように、働く時間を調整しています。
しかし、昌子さんはこのままでいいのかなと思います。
これからの自分の生活をどういうふうに考えたらいいのか、夫の扶養の範囲内で働いたほうがいいのかどうか、ほんとうはどうなのだろうと、心配になってきました。
これから、どんなことが起こるかわからないのが人生ですよね。

●103万円の壁とは?

103万円を超えると損をするというふうに思って、働き方を調整している昌子さんですが、いったい何が損だというのでしょうか。
103万円を超えると確かに所得税の課税対象となりますが、それで損をするということはありません。所得税を差し引きしても、手元の残るお金はプラスになります。夫婦の所得税を考えても、所得が逆転するということは、まず、ありません。
それに、103万円と超えても所得税のかからない場合もあります。
(ただし、個人個人、事情は違いますので、一般的な話です)

●気をつけておきたい家族手当(配偶者手当)

昌子さんの夫の会社には、配偶者手当があって、税法上、扶養となっている妻に対して、1万円の手当がありました。
しかし、給与の見直しがあって、今年から配偶者手当は廃止。
これまでは、昌子さんが103万円を超えて働くと、この手当の対象外になってしまいますから、調整も必要でしたが、今後は、どれだけ働いても関係ないので、心配する必要はありません。

●103万円は壁ではない

つまり、昌子さんにとっては、103万円は壁ではないのですよ。

●130万円の壁とは?

収入が130万円を超えると、健康保険の扶養家族や国民年金の第3号被保険者になれません。
つまり、自分で保険料の負担が必要になります。
だから、130万円を超えないように調整する人も多いのです。

●130万円を超えることはないけれど

昌子さんの現在の働き方では、130万円を超えそうにありません。
しかし、こういう人でも、法律が変わり、週に20時間以上働く人はすべて社会保険加入となれば、たとえ扶養の範囲内であったとしても、自分で社会保険に加入しなければなりません。

●保険料の負担

当然、健康保険料、厚生年金保険料の負担が発生します。40歳以上65歳未満の人は介護保険料も!
これまで、まったくゼロだったのに!

●何かいいことはあるの?

年金は増えます。
夫の扶養で第3号被保険者であれば、保険料を払うことなく老齢基礎年金はもらえますが、1階の年金だけです。厚生年金に加入すると、さらに2階の年金が上乗せされます。
払った保険料に見合っただけの年金が増えるのかという問題はありますが、年金が増えるということには間違いありません。
しかし、健康保険では、あまりメリットなし。扶養家族であっても自分で加入しても、病院での負担は同じですからね。(メリットは病気で働けないときの傷病手当金ぐらいです)
介護保険に至っては、まったくメリットなし。自分で保険料を払ったからといって、何らメリットはありません。

●離婚時の年金分割は?

2008年4月から離婚時の「3号分割」のしくみがスタートします。2008年4月以降の第3号被保険者期間については合意なしに年金分割できるというしくみですが、厚生年金加入で第3号でなくなれば、このしくみには該当しなくなります。

●遺族年金では?

もし、サラリーマンの夫が死亡したら遺族厚生年金ということになりますが、自分で払った厚生年金保険料が生かされないケースも出てきます。
遺族厚生年金と自分の老齢厚生年金は調整されるからです。両方、全部はもらえません。
来年4月から法律は変わりますが、全部もらえないということには変わりありません。

●障害年金では?

もし、厚生年金加入中の病気やケガがもとで障害年金に該当するようなことになれば、1階と2階の障害年金をもらえるようになります。第3号被保険者の場合は、1階の障害年金のみです。

●厚生年金加入期間20年以上になると?

お互いに加給年金(年金制度の配偶者手当)はもらえませんし、振替加算もつきません。

●入る? 入らない? どちらがいいの?

これはむずかしい問題です。

……………………………………………………………………………………………
政府は第3号被保険者を少なくしたいという意図を持っています。
第3号被保険者は、自分で保険料を払うことなく年金をもらえるのですからね。
ほんとは廃止したいぐらいでしょうけれど、そうなると反対も大きいから、第3号被保険者の数を減らすことにするのでしょう。

自分自身の年金はとても大切です。どんなことがあっても自分を守ってくれるからです。
しかし、パートタイマーの少ない収入から保険料を取るということは、少し違うような気がします。
ただ、パートタイマーから保険料を取ればいいというのには、賛成できません。

いかにして保険料を取ろうかという発想ではなく、いかにして年金制度を充実させていくかという発想から考えるべきです。
誰でも安心して暮らせる年金制度があってこそ、保険料を払う気持ちになれるものです。

この厳しい世の中、パートタイマーの社会保険加入は、会社の経営者にとっても一大事です。
社会保険料で会社が倒産するようなことになれば、本末転倒です。

……………………………………………………………………………………………
■□■ お知らせ ■□■ 
●アサヒSR年金研究会 勉強会を開催します
9月24日(日) 福岡市中央区 中央市民センターにて
講師は、大阪の社会保険労務士 小林賢介さんです
「年金分割について 平成18年10月から始まる情報提供と分割の実態」
離婚分割協議に必要な情報提供が10月から始まりますので、勉強したい方はぜひご参加ください。会員の勉強会ですが、オープン参加も募ります。定員30名ですので、オープン参加の方はお早めにご連絡ください。
会費など詳しいことはお問い合わせください。
連絡先 → kobayashi@tree.odn.ne.jp (アサヒSR年金研究会)

●おすすめサイト
離婚問題連絡協議会
離婚はとてもパワーのいる作業です。子どもがいればなおさら悩んでしまうものです。
誰にも相談できず悩んでいる方が多いのも事実。そんな方たちを救済すべく、立ち上げられたのが離婚問題連絡協議会です。

http://www.rikonnet.jp/

……………………………………………………………………………………………
女性に贈るみわ子さんの年金絵本 「年金、もっと知りたいな。」
全国の書店で好評発売中! 
ネット書店も便利です。送料無料で利用できるものもありますので、ご利用ください。
詳しくはこちらから → http://homepage2.nifty.com/miming2