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知っておきたい年金のはなし    第142号 2007年3月1日発行

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たびたび「華麗なる一族」を持ち出しますが、あのドラマに登場する万俵家の主、万俵大介という人はおそろしい人物だと思います。(みていない人にはわからないと思います。すみません!)
妻と愛人が同じ家で暮らしているなんて、ドラマの中のこととは言いながら、気持ちのよくないものです。
執事であって、愛人でもある相子さんは、万俵家を取り仕切って、力の強さを発揮しています。いつでもどこでも、妻の寧子(やすこ)さんよりも力を出しますが、妻にかなわないのが年金です。
万俵大介が亡くなると、遺族厚生年金は妻の寧子さんのものです。莫大な財産を受け取るように仕組んでおけば、相子さんにとって遺族厚生年金は争いにならないくらいの金額かもしれませんが。
しかし、とにかく、妻と愛人、どちらとも生計維持関係がある場合は、年金制度では戸籍上の妻が強いのです。
そんなことをふと思いながらドラマを見ています。
今日は、夫の死亡と妻の年金について、お話ししましょう。

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第142号 振替加算
★★★ 死亡の時期によって異なる年金 ★★★
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昭和18年4月3日生まれの幸子さんは来月で64歳になります。
67歳の夫は現在入院中。
幸子さんは、退職した夫といっしょに、これから温泉めぐりなどの小旅行を楽しもうと思っていました。
「夫とは旅行もしたくない」という妻もいますが、幸子さんは友達と旅行に行くより、夫といっしょの方が気楽なのです。

そんなとき、夫が入院しました。
いろいろな心配とともに、お金の心配も生じてきます。
現在は夫の年金で暮らしていますが、入院が長引いたときのこと、万が一、夫が死亡したときのことも気になります。
夫が元気になって、また温泉旅行を楽しめるといいのですが・・・

●幸子さんの年金加入歴

幸子さんはずっと専業主婦でした。
昭和61年4月に法律がかわり、第3号被保険者になりました。年金加入歴は、それからの第3号被保険者のみです。44歳から60歳まで約16年間です。

●65歳になると老齢基礎年金

幸子さんにはサラリーマンの妻としてのカラ期間がありますので、年金をもらえる権利はあります。65歳になると、老齢基礎年金をもらえます。
ただし、16年分の年金ですので、約31万円ほどです。
しかし、それには、振替加算が加算されます。

●振替加算とは?

厚生年金に20年以上加入していた夫には加給年金がプラスされています。
その加給年金は、妻が65歳になればなくなってしまいますが、「その穴埋めに」というように、今度は妻の年金に加算がつきます。それが振替加算です。
ただし、金額は加給年金よりも少なくなります。
昭和18年4月3日生まれの幸子さんの振替加算額は124,700円です。

●振替加算は老齢基礎年金の一部

年金証書をみても、振替加算があるのか、ないのか、わからないでしょう。
振替加算と書いてあるわけではないのです。
老齢基礎年金の一部であるので、老齢基礎年金としてまとめて合計額が書いてあります。

●幸子さんにとっては大きな加算

もともとの年金が少ない幸子さんにとっては、124,700円の加算は大きいですね。

●もし夫が死亡したら

幸子さんが65歳になるまでに、つまり、自分の年金の受給権が発生する前に夫が死亡した場合は、振替加算はもらえません。
もし、幸子さんが64歳の今、夫が死亡したら、幸子さん自身の年金は、振替加算なしの老齢基礎年金となります。
しかし、65歳以降に夫が死亡すれば、幸子さんは終身、振替加算つきの年金をもらえることになります。いったん幸子さんの年金に加算された振替加算が減額されることはありません。

●遺族厚生年金の対象にもなる

幸子さんの夫は老齢厚生年金を受給している人なので、死亡した場合、妻の幸子さんは遺族厚生年金をもらうことができます。
では、自分の年金を含めて、年金額の合計はどうなるのでしょうか。
それは夫の死亡時期によって異なります。

●幸子さんが65歳になる前に夫が死亡した場合

幸子さんは65歳になるまでは、遺族厚生年金をもらえます。
その遺族厚生年金には中高齢寡婦加算(594,200円)がプラスされています。
そして、65歳以降は、老齢基礎年金(振替加算なし)と遺族厚生年金をもらえます。ただし、遺族厚生年金に加算されていた中高齢寡婦加算はなくなって、そのかわりに経過的寡婦加算(幸子さんの場合は257,600円)がプラスされます。
この関係はちょっとわかりにくいですね。

●65歳以降に夫が死亡した場合

65歳以降に夫が死亡した場合は、夫が死亡した翌月から、遺族厚生年金がもらえます。
つまり、老齢基礎年金(振替加算付)と遺族厚生年金(経過的寡婦加算付)の年金をもらうことができるのです。

●振替加算と経過的寡婦加算は両方ずっともらえるの?

ずっともらえます。
ということは、夫が死亡したときに、幸子さんが65歳になっているか、なっていないかで、年金額が異なるということです。
幸子さんが65歳以降に夫が死亡した場合には、振替加算も合わせてもらえて、結局、年金額が多くなるということです。

●2重にもらっているような気がするけれど?

そんな感じもしますが、法律はそうなっているのです。

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2重にもらっているような気がしても、このような法律は、改正されることはないと思います。
なぜなら、振替加算も経過的寡婦加算も、ゆくゆくはゼロになってしまうからです。
ほおっておいても、若い人は対象外です。
振替加算は昭和41年4月2日以降に生まれた人にはありません。経過的寡婦加算は昭和31年4月2日以降に生まれた人にはありません。

このようなしくみは、まず、改正されることはないと思います。
自然にだんだんとなくなっていくのであれば、わざわざ法律を改定することはありません。

第3号被保険者もそうですよ。
第3号被保険者のしくみを廃止するという案は今は出ていませんね。
パートタイマーも厚生年金加入に加入するようにすれば、第3号被保険者の数は減ります。
わざわざ波風立てずとも、自然に数が減っていくことを待っている、年金にはそういうしくみもあるのです。
とても頭のいい人が作ったのでしょうね。

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