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知っておきたい年金のはなし    第149号 2007年6月1日発行

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年金記録問題… 社会保険庁もお粗末だと思います。
保険料を払った分が年金として受け取れないとなると、ほんとに怒りがこみあげてきますね。少ない年金でつつましく生活している人にとっては、本来もらえる分はすべて取り戻したいという気持ちになりますよね。

ニュースなどをみていると、年金は複雑でよくわからないという人にとっても、ふたつのことがわかってくると思います。
ひとつは、年金は加入期間が重要なのだということ。つまり、加入期間が長いほど受け取る年金も増えるしくみになっているということです。
だから、加入期間が抜け落ちていると、損をするのです。

ふたつ目は、年金をさかのぼってもらうことができるのは、5年前までであるということ。
手続きしなかったから年金の権利そのものがなくなるということはありませんが、実際に受け取ることができるのは5年前までの年金です。5年がすぎると、「時効」となって、5年以上前の年金については、泣いても怒ってももらえません。
こんなしくみがわかってきます。

損をしないように、しっかり期間を確認すること、それは大切なことです。
しかし、過去の期間がみつかって、かえって年金が減ってしまうことはないのでしょうか。

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第149号 宙に浮いた年金記録
★★★ 記録を探せ! ★★★
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美千代さんは65歳になりました。
夫は68歳です。夫婦ふたりで、ボランティア活動や趣味を楽しみながら暮らしています。
年金暮らしです。あまりぜいたくはできません。
国の年金だけでは生活できないので、個人年金とか、投資商品などで、準備はしてきました。
夫は老齢厚生年金と老齢基礎年金。企業年金もあります。
美千代さんは老齢基礎年金と老齢厚生年金をもらっています。
美千代さんは22歳から看護師(当時は看護婦)として働き続け、結婚後も働き続けてきました。子どもがいないので、仕事を続けてきましたが、40代で美千代さんは病気になり、退職。その後、療養後は、夫の扶養の範囲で、パートの看護師を続けていました。無理はできませんでした。その結果、60歳で年金を手続きするときに調べたら、厚生年金加入期間は19年でした。

美千代さんは何度も職場を変わっています。年金の手続きをするとき、19年の厚生年金加入期間を確認しましたが、実際に働いていた期間はもう少しありました。
しかし、小さな病院で厚生年金に加入していなかったかもしれないし、昔のことなので自分でもわかりません。証拠もありません。

そのまま月日が過ぎてきましたが、世間で、これほど年金のことが騒がれてくると、自分の加入期間が宙に浮いているのではないかと思ってきました。
あと、2年ほど加入期間が増えると美千代さんの年金は増えるのでしょうか。

●加入期間が長いほど年金も増える

原則は、加入期間が長いほど年金は増えるというしくみです。
厚生年金加入期間がみつかると、2階の年金(報酬比例部分)は増えます。
1階の年金(定額部分、65歳以降は老齢基礎年金)は上限までくると増えません。
しかし、厚生年金加入の場合、報酬比例部分(2階部分)が増えることになります。

●なんとしてでも年金を探そう

原則はそうですが、年金は複雑です。せっかくみつけても増えないことがあるのです

●どうして?

いくつか原因はありますが、加給年金・振替加算の問題です。

●美千代さん夫婦は?

美千代さんの夫は40年近くサラリーマンだったので、加給年金が加算されていました。
加給年金とは年金の配偶者手当のようなもの。
美千代さんが65歳になるまでプラスされていました。

●美千代さんが65歳になると加給年金はおしまい!

加給年金は妻が65歳までです。
美千代さんが65歳になったとき、夫の加給年金は消えてなくなりました。
そして、妻の美千代さんの老齢基礎年金に振替加算がプラスされるようになりました。

●振替加算の金額は?

これがまちまちなんですね。
美千代さんは昭和16年の5月生まれです。振替加算は136,700円。
生年月日によって決まっていて、若い人ほど少なくなり、昭和41年4月2日以降に生まれた人にはありません。

●加給年金にも振替加算にももらうためには条件がある

対象となる妻の条件として、20年以上厚生年金に加入していると、夫に加給年金はつかないし、妻が振替加算をもらうことはありえません。

●共働きの場合

20年以上厚生年金に加入期間のある妻に、60歳時など年金の受給権が発生したときから、夫は加給年金をもらえなくなってしまいます。
そんなことなら、60歳から手続きしないで、あとでしようと思って手続きを遅らせても、年金をもらう権利が発生したときにさかのぼり支給停止となってしまいます。

●美千代さんは19年の厚生年金期間

トータル20年未満です。しかも、若いときの19年です。だから、振替加算ももらえます。
しかし、ここで過去の宙に浮いた厚生年金加入期間がみつかって、20年を超えてしまったら?

●振替加算はもらえなくなってしまう!

今後、振替加算はもえらえません。
しかも、今まで振替加算をまちがってもらっていたことになり、返還しなければなりません。それは大変だけれど、「もらい過ぎたものは、必ず返してね」ということなのです。

●1年ほどの期間がみつかってどのくらい増えるか?

振替加算分136,700円も増えることはありません。
そうなると、たとえ、宙に浮いていた期間があっても、知らん顔していて、今までどおりもらっていた方がいいということになりますね。
探す努力をして、年金が減ってしまったなどとなると、何をしていることか、わかりません。

●中高齢の特例にご用心

20年未満なら加給年金・振替加算をもらえるというのは原則ですが、中高齢の特例というのがあります。女性の場合、35歳以降、15〜19年厚生年金加入期間があれば、中高齢の特例に該当し、年金では定額部分の計算では有利になりますが、振替加算はもらえません。
20年未満で安心とはいえませんよ。

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年金の記録を探し出して、不利益になることもあるのです。
みつけても、不利益になるとわかったら、手続きしないでしょう。
これまでにも、きっとそんな人もいたと思います。
強制的に照合し、年金の記録を変更したら、年金が少なくなった、過去の年金を返せといわれたなど、またまた、別の問題が起きるのが目にみえています。
でも、ニュースではそんなこと、少しも言わないですよね。
そんなしくみまで説明してほしいものです。

私のところに、テレビ局や新聞社から時々問い合わせがあるのですよ。
こんなことを取材していただけるのなら、お話するのになあ・・・
やはり、年金は複雑です。