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知っておきたい年金のはなし    第150号 2007年6月11日発行

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先週の社会保険事務所は、座る場所もないくらいの人でした。加入記録を照会しに来た人たちであふれていました。
入り口では、新聞社やテレビ局の取材。社会保険事務所から出て行く人にインタビューしていました。私も聞かれました。
「年金の加入記録の問い合わせですか?」と。
なんだか、事件が起こった時のように、ものものしい感じがしました。

年金記録の照会をするのに、待ち時間は1時間半とか、2時間とか。
このような光景をみていると、年金に不安を感じている人が多いということがわかります。

さて、今回は、前回に引続き、年金の加入記録がみつかっても、年金額が増えないケースを紹介します。

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第150号 宙に浮いた年金
★★★ みつかっても増えない年金 ★★★
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美穂さんは45歳。夫が亡くなって、遺族厚生年金をもらっています。
夫は厚生年金加入中に、事故で亡くなりました。
学生時代やアルバイト時代が長かった夫は、死亡当時、厚生年金加入期間は15年でした。
しかし、美穂さんは、25年加入したものとして計算された遺族厚生年金をもらっています。

消えた年金記録のニュースで、亡くなった夫も該当するのではないかと思いました。
アルバイトなどで職を転々としていたようですし、現在の会社に勤める前にも、厚生年金に加入していたことがあったかもしれません。
もし、亡くなった夫の記録が出てきたら、遺族厚生年金はどうなるのだろうかと思いました。記録を探してみた方がいいのでしょうか。

●遺族厚生年金額は?

遺族厚生年金は、死亡した人の標準報酬月額の平均と加入期間で計算します。
(平成15年4月以降はボーナスも含めます)

●若い人が亡くなった場合

美穂さんの夫は45歳で亡くなりました。厚生年金加入期間は15年でしたが、25年間加入していたものとして遺族厚生年金は計算されています。(短期要件の計算式です)

●過去の期間がみつかったら

25年とみなして年金をもらっている人は、亡くなった夫の加入期間がみつかっても、年金の増加は期待できません。
美穂さんの場合、たとえば2年ほどの期間がみつかったとしても、プラスにはなりません。もともと加入期間が15年のところを25年で計算しているのですから。

●それどころか年金が減ることもある

年金は標準報酬月額の平均で計算します。過去の給与の低い期間がみつかると、結局平均が下がるので、年金も減ることになります。
給与の高い期間がみつかれば、平均は上がるので、年金は増えます。
しかし、若い時代の給与は、低いことが多いですね。

●みつからない方がいい

美穂さんのもらっている遺族厚生年金は、増える見込みはないので、過去の給与の低い期間がみつかって減額されるくらいなら、みつからない方がよいのです。

●その他にはどんなケースがある?

第4種被保険者となっていた人も、過去の期間がみつからない方がいいのです。

●第4種とは?

昭和60年の改正で第4種被保険者の制度は廃止されましたが、昭和16年4月1日以前生まれの人など、一定の条件を満たしている人は第4種被保険者になることができました。
第4種被保険者とは、簡単にいうと、厚生年金の任意継続制度。退職後も厚生年金を継続して、老齢厚生年金の受給権につなげていくという制度でした。

●過去の期間がみつかったら

これも賃金が低い期間がみつかると、平均標準報酬月額平均が下がることになってしまい、減額となります。(詳しい説明は省略します)
第4種として加入した期間の保険料は返還されますが、過去の給料の低い時代の期間が入ることになるので、平均標準報酬月額が下がり、結局、年金額が下がるということになってしまいます。
みつからない方がよいケースです。

●脱退手当金を受け取った期間

脱退手当金をもらった厚生年金加入期間がみつかっても年金は増えません。すでに、その期間については、一時金で受け取って精算が済んでいるからです。

●その他にも、かなり古い話ですが

旧令共済(旧海軍共済組合、旧陸軍共済組合など)に加入していた人は、その後厚生年金に1年以上加入した場合、加入期間については、定額分部の年金としてもらえます。(これも詳しい説明は省略します)
しかし、旧令共済期間がみつかっても、年金になるのは定額部分だけで、しかも、定額部分には加入月数に頭打ちがあるので、みつかっても増えない場合もあります。

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こんなふうに、いろいろなケースがあるので、記録がみつかれれば必ず増えるというものではありません。

それにしても、社会保険事務所の職員さんも大変なことだと思います。
残業や休日出勤が続くでしょう。
そこへ、昨日のニュースでは、労働組合との覚書がみつかって、その内容が問題にされていました。
労働組合が悪いといわんばかりでしたが、問題の本質をしっかりみなければならないと思います。

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