★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 知っておきたい年金のはなし 第154号 2007年7月21行 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 先日、社会保険事務所の年金相談の応援に行きました。ある町での相談会でしたが、来場者は1日で500人を超えました。みなさん、それだけ不安なのです。 もよりの社会保険事務所に行けばよいといっても、その「もより」が遠いのです。社会保険事務所へ行くのが不便な町です。 だから、出前相談には来場者が多いのですが、あまりに人が多くて、相談できずに帰った人もたくさんいました。 社会保険事務所に確認に行くのは大変だからと、インターネットで記録を確認しようと申し込みをした人がいました。 しかし、住所変更届を出していなかったので、住所違いで、申し込みは受け付けられませんでした。会社を通じて住所変更届を出し、また申し込みをしました。1ヵ月以上たって、やっとIDとパスワードが届きました。しかし、あまりに間が開きすぎて「お客様設定パスワード」を忘れてしまいました。忘れたからといって照会に応じてもらえません。また、一から申し込みのやり直しです。 いつまでたっても、記録の確認ができません。 さて、今日は、今年の4月から実施されている70歳以上の在職老齢年金のしくみについて、お話しましょう。 …………………………………………………………………………………………… 第154号 70歳以降も在職老齢年金 ★★★ 70歳以上被用者該当届 ★★★ …………………………………………………………………………………………… 会社の人事担当、恭子さんは、よくわからず、困っています。 役員の松田さんが今年の7月11日で70歳を迎えました。 役員報酬は15万円です。社会保険にも加入しています。 その松田さん、昨年の4〜6月、経営が大変だからと、役員報酬をカットしました。半額の75,000円。ちょうど、算定基礎届(9月から1年間の社会保険料を決定する届出)の時期でした。そのため、昨年の9月からの標準報酬月額は一番低い98,000円となっています。 ところが、今年の4月に健康保険の標準報酬月額の下限が下がりました。これまでの下限は98,000円でしたが、58,000に下がりました。松田さんの標準報酬月額は、健康保険が、78,000円、厚生年金が98,000円になりました。 ところが、今度は「70歳以上被用者該当届」を提出するように社会保険事務所から連絡がきました。 初めてのことに、人事担当の恭子さんはわからなくなりました。 ●70以上被用者該当届とは? 70歳以上も厚生年金に加入している場合、在職老齢年金のしくみで、年金がカットされるようになりました。今年の4月1日以降に70歳になる人が対象です。 4月1日以降に70歳になる人(厚生年金に加入している人)は、「70歳以上被用者該当届」を出さねばなりません。 ●年金を全部もらっているよ 松田さんは老齢厚生年金をもらっている人ですが、年金カットはありません。役員報酬は15万円です。年金は約20万円。両方合わせても基準以下なので、全額もらうことができます。 ●じゃあ、何もしなくていいじゃない? ところが、これから報酬が増えるかもしれませんね。賞与もあるかもしれません。 そういったことを考えて、給与(報酬)が多くなったら、きちんと年金をカットしないといけないので、70歳以上の人も、標準報酬月額や標準賞与額の届出が必要になりました。 ●厚生年金は資格喪失と同時に該当届 わかりやすく言うと、70歳で厚生年金の資格を喪失するけれど、同じ日にまた登録するということです。これまでの記録はいったん終わり、あらたな登録をするということです。 ●具体的には? 厚生年金はこれまで標準報酬月額が98,000円でしたが、現在は、役員報酬15万円全額が支給されます。だから、松田さんは15万円の標準報酬月額として届けることになります。 ●健康保険料も上がるの? 健康保険は変更ありません。健康保険は70歳になったからとって、資格を喪失することはありませんので、8月分までは、標準報酬月額78,000円のままです。 ●厚生年金の保険料は上がるの? いいえ、厚生年金の保険料については、70歳以降は徴収されません。実際に厚生年金は保険料を取らないので、標準報酬月額がいくらになろうと、保険料という点では関係ありません。 在職老齢年金のために、このような該当届けが必要なのです。 ●なんだか、複雑ですね そうです、年金法を改定するたびに、複雑になっていきます。 松田さんが社会保険から外れるときは、健康保険については資格喪失届を、厚生年金については、「不該当届」を出すことになります。 …………………………………………………………………………………………… 70歳以上も在職老齢年金のしくみで、年金をカットすることになるので、このように、70歳に到達した時点で、厚生年金はいったん喪失して、また登録するというような手続きをするのです。健康保険と厚生年金が別々の動きをするわけですね。 どちらにしても松田さんは年金カットされませんが、70歳時にこのような手続きをするので、70歳到達月から、年金カット額が変更する可能性もあります。 人事担当の恭子さん、理解できましたか? ※役員報酬に変更があれば、月額変更届が必要になるのではないかと考える方もおられるかと思いますが、固定的な報酬が変動したわけではないので、月額変更届には該当しないという前提でのことですので、ご了承ください。 …………………………………………………………………………………………… □■ お知らせ ■□■ ●きんざい「フィナン」に連載中 菅野美和子の年金教習所 http://store.kinzai.jp/magazine/AA/index.html ●高障協「ふくおか」に連載中 「人が伸びる! 会社も伸びる」 財団法人福岡県高齢者・障害者雇用支援協会 http://www.fukuoka-koushou.org/announcing.html#koushoukyou |