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知っておきたい年金のはなし    第156号 2007年8月10日発行

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日頃、なかなかできないサイトの更新。
お盆には少し時間が取れそうなので、女性のための年金相談室も更新しようと思っています。

最近、続いて、脱退手当金のご相談を受けています。
もらっていないものを、どのようにしてもらっていないと証明するか、これは大変難しいことです。それも何十年も前の話です。
昭和30年代の脱退手当金に関する書類は破棄されているようです。
いったい、どこへどのように送金したのか、今となっては、まったくわからないということなのです。
こんなことがあってもいいのでかと思いますが、このようなことを想定せずに書類を破棄してしまったのでしょう。

それでは、今回は脱退手当金についてお話ししましょう。

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第156号 脱退手当金
★★★ もらっていない証拠 ★★★
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公子さんには、どうしても納得できないことがあります。
18歳から23歳まで会社に勤め、厚生年金にも加入しました。結婚で退職しましたが、そのときには、退職金などもらった覚えがありません。「5年も働いたのに何もないのだ」と思った記録は鮮明です。
古い話ですので、記憶違いと言わればそれまでですが、何ももらっていないということだけは覚えているのです。

そして、結婚。ずっと専業主婦でした。
国民年金には加入ませんでしたが、昭和61年4月からは第3号被保険者です。
60歳になって、年金の手続きをしようと思って加入期間を調べたら、なんと、過去の厚生年金加入期間は脱退手当金をもらっていることになっていました。
ですから、60歳から年金はもらえませんでした。65歳からの老齢基礎年金だけです。
「記憶違いでしょ」と言われ、もらえないものはしかたがないと思いましたが、どうしても、まとまったお金をもらった覚えがないのです。
あきらめていましたが、ここへきて、年金問題が起こりました。
公子さんはどうしたらいいでしょうか。

●脱退手当金とは

厚生年金に加入したけれど、老齢厚生年金をもらえる資格がない場合に、受け取れる一時金です。年金をもらえないから、一時金で精算しようということなのです。

●結婚退職時にもらってしまった!

現在の年金制度は、国民年金と厚生年金を合算して25年以上の被保険者期間があれば厚生年金加入期間も老齢厚生年金としてもらうことができますが、かつてはこのような制度ではありませんでした。
厚生年金に20年加入しないともらえませんでした。
しかも、結婚するので、働く予定なしという人は、これまでの保険料がもったいないし、結婚で何かとお金もいるので、退職金がわりに脱退手当金を選ぶことも多かったのです。

●その選択は悪くない

当時の選択としては良かったのでしょう。
しかし、その後、年金制度が変わり、たった1月の厚生年金加入期間でも、年金としてもらえるようになったのです。

●もらわないほうがよかった!

こうなると、年金としてもらう方がお得で、脱退手当金をもらわない方がよかったということになります。

●脱退手当金を返したい!

いったんもらった脱退手当金を返還することはできません。

●もらった覚えがないよ!

公子さんのようなケースもあります。
もらった覚えがないのに、もらったことになっているケースです。
「あなたの記憶違いだ」と言われると、あきらめてしまいますよね。

●記録間違いもある

しかし、記録ミスもみつかっています。
記録はもらったことになっていたけれど、その記録が間違いであったこともあるのです。

●証拠はあるか?

もらっていない証拠とは難しいものです。
もらっていないから、何もないのですよね。

●書類は破棄されている

かつては、脱退手当金を申請すると、受取りは郵便局送金が一般的でした。
郵便局を指定し、そこで受け取るのです。
しかし、どこの郵便局へ送金したか、書類は破棄されていまい、わからないのが現実です。
昭和30年代の書類は破棄されているようです。

●徹底して調査を

マイクロフィルムではどうなっているか、ほんとに台帳は残っていないのか、徹底して調査をしてもらうしかありません。

●第三者委員会

納得できない場合は、第三者委員会へ審査を申し込みます。
もらっていないことを認めてもらうのは、かなり難しいことですが、あきらめないで、やってみましょう。

●今からでも脱退手当金をもらえる人はいます

昭和16年4月1日以前に生まれている人のみです
厚生年金保険の被保険者期間が5年以上あること、60歳に達していること 、被保険者の資格を喪失していること、厚生年金保険の年金を受ける資格がないことが条件です。

●私は昭和18年生まれ、年金をもらう資格がないけれど・・・

残念ながら、脱退手当金はもらえません。
これまで払った保険料は、掛け捨てです。

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結婚退職の際に、脱退手当金をもらわなければよかった、なぜ誰も教えてくれなかったのかという人もいますが、当時と現在では年金の制度が異なります。1ヵ月の厚生年金加入期間が年金につながるとは、思ってもみなかったでしょう。
ですから、一時金で受け取っても当然だったのですね。
しかし、運良く、脱退手当金を受け取っていない人は、年金につながります。

公子さんは第三者委員会へ審査を申し込むことにしましたが、脱退手当金をについては、かなり難しいと言われます。何も証拠になるようなことがなく、「もらった」「もらってない」になりかねません。
しかし、オンライン化するときに、入力間違いとなっているケースもあります。
納得いくまで、調べてみることが大切です。

脱退一時金というものもありますが、これは、外国籍の人が日本に滞在中に日本の年金制度に加入し、年金の受給権を満たさないまま、本国へ帰るという場合に、これまでの保険料が一時金として精算されるというしくみです。
脱退手当金と似ていますが、異なります。

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