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知っておきたい年金のはなし    第157号 2007年8月22日発行

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「たけくらべ」と聞くと、何を思いますか。
私は、樋口一葉の「たけくらべ」です。
読んだことはありません。過去の受験勉強が今でも残っているのですね。
日本史、文学史で、樋口一葉は「にごりえ」「たけくらべ」と覚えただけなのです。
今日のお話の「たけくらべ」は、年金の「丈比べ」です。
丈比べをして多い額を支給するというしくみが年金制度にはあります。

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第157号 65歳以降の遺族厚生年金と老齢厚生年金
★★★ 年金額の「たけくらべ」 ★★★
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成美さんは64歳。
10年前に夫が死亡し、遺族厚生年金をもらっています。
夫の死亡後は、成美さんはフルタイムで働き、厚生年金に加入してきました。子どもも独立して、やれやれです。

現在は、遺族厚生年金と特別支給の老齢厚生年金の権利があります。両方はもらえないので、遺族厚生年金を選択しています。
遺族厚生年金の方が有利だからです。金額も多いのですが、何より、在職老齢年金でカットされないのです。

成美さんは看護師です。同世代の女性に比べると、給料も高いです。同僚は年金が減額されていることをぼやいていますが、遺族厚生年金は、どんなに給料が高くても、ボーナスをもらっても、減額されることはありません。

来年は、65歳。年金はどうなるのでしょうか。
夫死亡後、厚生年金に加入してきたのに、遺族厚生年金を選択すると、これまで加入してきた自分自身の厚生年金はまったく意味がないということなのでしょうか。

65歳からは、年金はどのようになるのか、成美さんは心配です。
看護師の仕事も辞めますので、これからは年金がたよりです。

●65歳までは

自分自身の老齢厚生年金(特別支給の老齢厚生年金、あるいは報酬比例部分の年金)と遺族厚生年金、両方の受給権を持つ人は、65歳までは、どちらかひとつ。
両方はもらえません。

●65歳以降は?

65歳以降は、1階の年金として老齢基礎年金、2階の年金として老齢厚生年金、遺族厚生年金の権利があります。
まず、1階の年金である老齢基礎年金は、全額受け取ることになります。

●2階の年金は?

成美さんのように老齢厚生年金と遺族厚生年金の権利のある人は、ここで「丈比べ」をします。
亡くなった夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3に相当する額
亡くなった夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)の2分の1と自分自身の老齢厚生年金の2分の1を合算した額

●多い方の金額

丈比べをして、多い方の金額とします。

●その上で、自分自身の老齢厚生年金が優先

まず、老齢厚生年金を優先して受取り、丈比べで定められた金額との差額を遺族厚生年金として受け取ります。

●例で考えてみましょう

亡くなった夫の老齢厚生年金の4分の3が75万円
自分自身の老齢厚生年金が30万円の場合、
丈比べをすると、
亡くなった夫の老齢厚生年金の4分の3の75万円が多い額です。
そこで、自分自身の老齢厚生年金として30万円、75万円との差額45万円を遺族厚生年金として受け取ります。

●金額は同じだけれど・・・

75万円という金額は同じですが、内訳が変わるのです。

●何が変わるの?

老齢厚生年金を優先してまず全額受け取るということは、課税対象が増えること。
老齢厚生年金は課税対象、遺族厚生年金は非課税です。
そして、在職老齢年金の対象となるということ
遺族厚生年金は在職老齢年金には関係ありませんが、老齢厚生年金は在職老齢年金の対象となります。

●成美さんはどうなるの?

成美さんも丈比べをした結果、65歳に到達した翌月から、変更となります。

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遺族厚生年金を受給すると自分の老齢厚生年金の一部または全部がもらえなくなってしまうことから、まず、自分の老齢厚生年金を優先させるというしくみに、今年の4月から改定されました。
女性から不満があり、その声を生かすということが改定の理由ですが、女性の不満の声を利用されただけかもしれません。
何もプラスになっていることはないのですからね!

※今回は、説明を複雑にしないため、あえて、中高齢寡婦加算や経過的寡婦加算は省略していますが、年金額を考えるときには必要です。

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