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知っておきたい年金のはなし    第179号 2008年4月21日発行

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国民年金の保険料をパートタイマーの給与から天引きすることを厚生労働省は計画しています。
これは大変なことになりそうです。

企業にとっても大変です。
国民年金保険料の控除などという事務が発生するわけですから。
もともとパートで働く人は賃金が少ないのです。1万円以下なんてこともあります。
保険料を引けないこともあります。

天引きが大好きなのですね!
取りはぐれがないし、未納率も改善されるでしょうけれど、国がすべき事務を押し付けられる企業もいい迷惑です。

さて、今日は、社会保険事務所の対応により、1ヶ月間厚生年金に加入できなかったというお話です。

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第178号 1ヵ月の未納期間
★★★ これは誰の責任? ★★★
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敏子さんは55歳です。
20歳から働き続けてきました。
ところが、年金記録を確認したところ、1ヵ月の国民年金未納期間がありました。
途中で一度、転職しています。3年前、3月末まで働いた会社を退職し、4月1日から別の会社で働き始めました。
その年の4月分が未納になっていたのです。

敏子さんは、「新しく会社を立ち上げるから、うちで働いてほしい」と誘われて、B社へ転職しました。
4月から働き始めたのに、厚生年金への加入は5月からとなっていました。
なぜ、1ヵ月空白ができてしまったのでしょうか。この空白をなんとかすることはできないのでしょうか。

●会社の厚生年金加入手続

会社(法人)を設立すると厚生年金(健康保険も含めて)に加入しなければなりません。
社長ひとりの会社でも強制加入です。

●すぐに加入するの?

新しい会社を設立した場合、「新規適用届」を設立から5日以内に提出しなければならないとなっています。

●ほんとに5日以内に手続をするの?

5日以内に手続する会社の方が少ないでしょう。

●敏子さんの転職先はどうしていたの?

3月に法人を立ち上げて、4月から社員を採用しています。
法律どおりなら、敏子さんは4月から新しい会社で厚生年金に加入できたわけです。

●会社が手続ミスしたの?

そうではなさそうです。
以前は、会社を設立しても、1ヵ月の給与の支払い実績がないと新規事業所の受け付けをしないと、社会保険事務所は対応していました。

●すぐに加入できなかった

敏子さんの会社もそうだったのです。
1ヵ月の実績がないとだめだと言われ、5月になって、新規適用届を出しました。

●空白の1ヵ月はどうなる?

確かに敏子さんは4月から新しい会社で働いています。
雇用保険はずっと継続して加入しているので、働いていたことを証明することはできるでしょう。

●では年金記録の訂正はできる?

現状ではそれはむずかしいでしょう。
なぜなら、会社が厚生年金に加入したのは5月からですし、4月は保険料を負担していなかったからです。

●間違っている場合は記録を訂正するのでは?

それは保険料を納付していた事実がある場合です。
会社が厚生年金に加入していない、本人も保険料を負担していないとなれば、厚生年金の加入期間ではありませんので、記録の訂正はありません。

●厚生年金給付特例法では?

企業が未納分の納付に応じない場合であっても、税金で補填することにより、従業員に年金を支給できるというしくみです。
ただし、給与明細等の証拠があって、保険料が控除されていることが明らかなケースが対象です。

●敏子さんの1ヵ月はどうにもならない?

これは無理でしょう。未納期間のままです。

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私が社労士業を開業したころ、事業所の社会保険(健康保険・厚生年金)への加入は、なぜかとてもきびしいものでした。

毎月、月初めしか受け付けしない。
社会保険事務所が忙しい7月は新規事業所の受け付けはしない
会社を設立しても、1ヵ月の給与支払いの実績がなければ受け付けしない

この3番目に該当して、敏子さんが転職した会社は4月から厚生年金に加入できなかったのです。
入りたいといっても入れてくれなかったのです。

その1ヵ月は国民年金に加入すべきでしたが、敏子さんは年金制度についてよくわからないまま、未納期間になってしまいました。

厚生年金の保険料を払っていないので、厚生年金の加入期間にしてほしいとはいえません。
しかし、社会保険事務所が受け付けてくれなかったから、1ヵ月、厚生年金の加入が遅れたのです。
全国の社会保険事務所の実態はわかりませんが、少なくとも私の地域ではそうでした。

繁忙期の7月は新規事業所の受け付けをしないのはおかしいと、当時から思っていました。
このようなことがあったということも知っておいてほしいと思います。
こんなうふうにして、国民年金の未納も発生しているのですから。

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