★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 知っておきたい年金のはなし 第182号 2008年5月21発行 ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ 1年ほど前、こんなことがありました。 64歳11ヵ月で退職したA子さんに、「65歳以降は、年金と雇用保険を両方もられます」と説明しました。ところがA子さんがハローワークへ行くと、「年金もらっている人は失業給付をもらえません」と言われるではありませんか。 あわてたA子さんから電話がかかってきました。 ハローワークの担当者が間違っていることはわかりましたので、ハローワークへ電話をかけました。 お詫びをする担当者に、「今までずっと間違ったことを説明していたのですか?」をたずねてみました。そうだったようです。 A子さんは手続できてよかったですが、もらえないままになっていた人もおられたことでしょう。 最近、また、同じことがありました。 今度は、社会保険庁でした。 「あなたは年金が多いので、失業給付を手続しても意味がないですよ」 64歳10ヵ月で退職し、今月65歳になる人が、相談に行っているのです。ハローワークへ手続にいくために、念のため、社会保険庁で年金相談すると、このように言われました。 これも間違いです。 私は間違ったことをとやかく言うつもりはないのですが、その後の対応があまりにもお粗末でした。 相談があったので、間違いであるとわかり、担当部署に連絡をとって間違いを訂正してもらいました。 しかし、相談担当者は、このしくみを知らなかったようです。「これまでも同じような間違いをしていたのではないですか」とたずねてみましたが・・・ 担当者の問題ではなく、私は社会保険庁の相談体制の問題だと思います。中には知らないこともあるでしょう。十分に研修を受けていない相談員もいるでしょう。 社会保険庁にこのような問題をきちんと受けとめてほしくて、相談室の責任者とも話をしました。 しかし、「相談員の確認不足の問題で、相談員の知識にも、相談体制にも何ら問題はない」ということでした。言い訳だけをたくさん聞かされました。 いったい何が間違っていたかというと、老齢厚生年金と雇用保険から失業給付(基本手当)の調整についてです。 …………………………………………………………………………………………… 第182号 65歳以降の年金と失業給付 ★★★ 両方もらえる? ★★★ …………………………………………………………………………………………… 由子さんは5月5日で65歳になりました。 60歳でいったん定年をむかえ、転職しました。1日もあけず、新しい会社に勤め、64歳まで働き、3月31日で退職しました。 60歳以降、給与がダウンしたので、高年齢雇用継続基本給付金ももらいました。 体力的にもきびしくなってきたので、仕事をやめました。働く気持ちはあります。もう少し、時間的にも楽な仕事に変わりたいと思っています。 退職するとき、65歳以降は、年金と基本手当を両方もらえると聞いていました。 誕生日の少し前に、手続をしたらよいと言われていました。退職後は、何かといそがしかったので、5月の連休明けに手続に行きました。 由子さんは、年金と雇用保険(基本手当)を両方もらえるのでしょうか。 ●基本手当 65歳の前々日までに退職し、要件を満たした人は基本手当に該当します。 20年以上お勤めした人は150日分の基本手当となります。 ただし、働く意思がある場合です。働きたくない人はもらえませんので、念のため。 ●高年齢求職者給付金 65歳の誕生日の前日以降に退職し人は基本手当はもらません。 高年齢求職者給付金という一時金となります。最大で50日分です。由子さんの場合は、3分の1に減ってしまいますね。 ●退職日で違う? そうです。退職日が問題なのです。 5月5日が誕生日の由子さんは5月3日に退職すれば基本手当ですし、4日に退職すれば、一時金です。 ●基本手当は年金と調整 60歳から65歳未満は、基本手当と年金(老齢厚生年金のこと、以下同じ)は両方もらえません。 年金は高齢になって働くのが困難になってくるからもらうもの、基本手当は働ける人がもらうものであり、受け取る理由が矛盾するからと、両方はもらえないように調整されます。 ●調整期間は65歳未満 65歳の直前に退職した場合は、退職したときは、64歳未満だけれど、実際に基本手当をもらうときは、65歳になっていることもありますね。 65歳以降については、このような調整はなく、両方もらえるのです。 ●由子さんの場合 64歳で退職、基本手当が65歳以降にもらえるようなタイミングで手続すると、両方受け取れます。 ●給付制限 自己都合で退職した場合は、給付制限があり、ハローワークで手続きしても、3ヵ月待ってから基本手当もらいはじめるということになります。 由子さんは自己都合退職です。 しかし、給付制限はありませんでした。 64歳以上で体力の低下による退職とみなされ、3ヵ月待たなくてももらえることになります。 ●両方もらえる! 由子さんはすでに65歳を過ぎてから雇用保険の手続に行きましたので、問題なく、両方もらえます。 これが退職直後の4月に手続にいって、4月からもらいはじめると、まだ64歳なので、両方もらえない期間が出てくることになります。 ●こんな方法もある 定年などに限ってですが、すぐ働かない場合は、受給資格期間を1年間延長することもできます。 通常は退職したあと1年の間に全部もらい終わらないと、給付日数が残っていても、もらえません。 しかし、延長の申請を出すと、2年の間にもらい終わればよいということになります。 延長申請して、65歳以降に基本手当をもらうようにすれば、少し早くに退職した場合であっても、年金と基本手当は調整されることなく、両方もらえます。 …………………………………………………………………………………………… 今回の間違い事件で、個人的には怒りでいっぱいです。 誰でも間違うことはあります。間違ったことをとやかく言うつもりはないのですが、その後の対応があまりにもお粗末でした。 3回も間違ったお返事をお客様に返したり、間違いを正してほしいと電話をしても、忙しいからあとでと伝言さえ受け取ってもらえなかったり、担当者がお休みしているから対応できないと言われたり、いろいろでした。民間の会社ならありえません。 社会保険庁が年金相談するなら、間違いによるトラブル対応も、マニュアル化しておくべきです。 訂正、お詫びは「迅速に、ていねいに」というのが、当たりまえです。 こういうこともあるのです。 私たちひとりひとりの対策は、複数の相談窓口で確認することしかありません。 どこで相談しても答が同じであれば信用してもよいでしょうが、答が違ったら、要注意です。 …………………………………………………………………………………………… ■□■ お知らせ ■□■ ●アサヒSR年金研究会からのお知らせ 年金相談員研修「年金相談(遺族編)の相談手順」 7月13日(日)13:00〜16:30(開場15分前) 福岡市立中央市民センター 会員は無料です。会員以外のオープン参加も募集します。 非会員の方の参加費用は5,000円(10冊のレジュメ付き) 申し込みは、アサヒSR年金研究会(代表 社会保険労務士 小林賢介氏) info@asahi-sr.com 全国各地でも開催していますので、詳しいことはメールでお問い合わせください。 ●福岡県高齢者・障害者雇用市園協会 啓発支援課の「職業生活設計セミナー」 5月24日10:00〜12:00 (福岡市博多区博多駅前) 退職後の生活設計・ライフプラン実践編 安心セカンドライフのための対策、病気や介護への備え、保険に見直しなど 講師は菅野美和子です。 受講料は無料です。お申込は092-433-1068 福岡高齢期雇用就業支援コーナー |