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知っておきたい年金のはなし    第182号 2008年5月21発行

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1年ほど前、こんなことがありました。
64歳11ヵ月で退職したA子さんに、「65歳以降は、年金と雇用保険を両方もられます」と説明しました。ところがA子さんがハローワークへ行くと、「年金もらっている人は失業給付をもらえません」と言われるではありませんか。

あわてたA子さんから電話がかかってきました。
ハローワークの担当者が間違っていることはわかりましたので、ハローワークへ電話をかけました。
お詫びをする担当者に、「今までずっと間違ったことを説明していたのですか?」をたずねてみました。そうだったようです。

A子さんは手続できてよかったですが、もらえないままになっていた人もおられたことでしょう。

最近、また、同じことがありました。
今度は、社会保険庁でした。
「あなたは年金が多いので、失業給付を手続しても意味がないですよ」
64歳10ヵ月で退職し、今月65歳になる人が、相談に行っているのです。ハローワークへ手続にいくために、念のため、社会保険庁で年金相談すると、このように言われました。

これも間違いです。
私は間違ったことをとやかく言うつもりはないのですが、その後の対応があまりにもお粗末でした。
相談があったので、間違いであるとわかり、担当部署に連絡をとって間違いを訂正してもらいました。
しかし、相談担当者は、このしくみを知らなかったようです。「これまでも同じような間違いをしていたのではないですか」とたずねてみましたが・・・

担当者の問題ではなく、私は社会保険庁の相談体制の問題だと思います。中には知らないこともあるでしょう。十分に研修を受けていない相談員もいるでしょう。

社会保険庁にこのような問題をきちんと受けとめてほしくて、相談室の責任者とも話をしました。
しかし、「相談員の確認不足の問題で、相談員の知識にも、相談体制にも何ら問題はない」ということでした。言い訳だけをたくさん聞かされました。

いったい何が間違っていたかというと、老齢厚生年金と雇用保険から失業給付(基本手当)の調整についてです。

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第182号 65歳以降の年金と失業給付
★★★ 両方もらえる? ★★★
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由子さんは5月5日で65歳になりました。
60歳でいったん定年をむかえ、転職しました。1日もあけず、新しい会社に勤め、64歳まで働き、3月31日で退職しました。
60歳以降、給与がダウンしたので、高年齢雇用継続基本給付金ももらいました。
体力的にもきびしくなってきたので、仕事をやめました。働く気持ちはあります。もう少し、時間的にも楽な仕事に変わりたいと思っています。

退職するとき、65歳以降は、年金と基本手当を両方もらえると聞いていました。
誕生日の少し前に、手続をしたらよいと言われていました。退職後は、何かといそがしかったので、5月の連休明けに手続に行きました。

由子さんは、年金と雇用保険(基本手当)を両方もらえるのでしょうか。

●基本手当

65歳の前々日までに退職し、要件を満たした人は基本手当に該当します。
20年以上お勤めした人は150日分の基本手当となります。
ただし、働く意思がある場合です。働きたくない人はもらえませんので、念のため。

●高年齢求職者給付金

65歳の誕生日の前日以降に退職し人は基本手当はもらません。
高年齢求職者給付金という一時金となります。最大で50日分です。由子さんの場合は、3分の1に減ってしまいますね。

●退職日で違う?

そうです。退職日が問題なのです。
5月5日が誕生日の由子さんは5月3日に退職すれば基本手当ですし、4日に退職すれば、一時金です。

●基本手当は年金と調整

60歳から65歳未満は、基本手当と年金(老齢厚生年金のこと、以下同じ)は両方もらえません。
年金は高齢になって働くのが困難になってくるからもらうもの、基本手当は働ける人がもらうものであり、受け取る理由が矛盾するからと、両方はもらえないように調整されます。

●調整期間は65歳未満

65歳の直前に退職した場合は、退職したときは、64歳未満だけれど、実際に基本手当をもらうときは、65歳になっていることもありますね。
65歳以降については、このような調整はなく、両方もらえるのです。

●由子さんの場合

64歳で退職、基本手当が65歳以降にもらえるようなタイミングで手続すると、両方受け取れます。

●給付制限

自己都合で退職した場合は、給付制限があり、ハローワークで手続きしても、3ヵ月待ってから基本手当もらいはじめるということになります。
由子さんは自己都合退職です。
しかし、給付制限はありませんでした。
64歳以上で体力の低下による退職とみなされ、3ヵ月待たなくてももらえることになります。

●両方もらえる!

由子さんはすでに65歳を過ぎてから雇用保険の手続に行きましたので、問題なく、両方もらえます。
これが退職直後の4月に手続にいって、4月からもらいはじめると、まだ64歳なので、両方もらえない期間が出てくることになります。

●こんな方法もある

定年などに限ってですが、すぐ働かない場合は、受給資格期間を1年間延長することもできます。
通常は退職したあと1年の間に全部もらい終わらないと、給付日数が残っていても、もらえません。
しかし、延長の申請を出すと、2年の間にもらい終わればよいということになります。
延長申請して、65歳以降に基本手当をもらうようにすれば、少し早くに退職した場合であっても、年金と基本手当は調整されることなく、両方もらえます。

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今回の間違い事件で、個人的には怒りでいっぱいです。
誰でも間違うことはあります。間違ったことをとやかく言うつもりはないのですが、その後の対応があまりにもお粗末でした。
3回も間違ったお返事をお客様に返したり、間違いを正してほしいと電話をしても、忙しいからあとでと伝言さえ受け取ってもらえなかったり、担当者がお休みしているから対応できないと言われたり、いろいろでした。民間の会社ならありえません。

社会保険庁が年金相談するなら、間違いによるトラブル対応も、マニュアル化しておくべきです。
訂正、お詫びは「迅速に、ていねいに」というのが、当たりまえです。

こういうこともあるのです。
私たちひとりひとりの対策は、複数の相談窓口で確認することしかありません。
どこで相談しても答が同じであれば信用してもよいでしょうが、答が違ったら、要注意です。

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■□■ お知らせ ■□■
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7月13日(日)13:00〜16:30(開場15分前)
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