★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

知っておきたい年金のはなし    第186号 2008年7月11日発行

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

昔、パソコンがなかったころ、原稿は原稿用紙に手書きで書いていました。
書き直しが大変です。
当時を思うと、今は便利になりました。
パソコンで文章を作成するのは、とても楽です。
しかし、文字の変換をしていると、思わぬ変換ミスに出会います。

たとえば、年金の請求手続である「裁定請求」。
まちがって、「最低請求」となりました。

ゆとりある老後を夢みて年金の「裁定請求」をしたところ、年金額が少なくて、「最低」な年金になってしまうこともあります。
笑うに笑えません。
「裁定請求」が「最低請求」にならないような年金制度にしていかなくてはなりません。

……………………………………………………………………………………………
第186号 年金額の損益分岐点
★★★ 年金を生きる希望に! ★★★
……………………………………………………………………………………………

59歳の華子さんは、60歳で老齢基礎年金を受け取るか、あるいは、通常どおり、65歳で受け取るか、迷っています。
その迷いの後ろにあるものは、年金制度への不信です。
華子さんは美容室を経営し、国民年金へ加入してきました。
現在は夫とふたりで暮らしています。

夫はまだ働いていますので、生活には困りません。
体力的にもきびしくなってきたので、美容室は、若いスタッフに引継ぎたいと思っています。

そして、年金を早くもらうかどうか、考えています。
というのは、年金制度への不信があって、今もらえるものは、もらっておいた方がよいように思えるからです。

第1号被保険者として保険料を40年納付してきた華子さん。
生きていれば自分の年金はもらえますが、死亡した場合は、夫が遺族年金をもらえるわけでもありません。
それを思うと、60歳から年金をもらい、自分のために使うのがよいのではないかと思いますが、さて、どう考えたらよいのでしょうか。

●早くもらうと

65歳以前に老齢基礎年金をもらい始めることを「繰上げ」といいますが、繰上げすると、減額された年金が一生続きます。

●60歳0ヵ月で請求すると70%の年金に

華子さんは7月20日生まれです。
7月に繰上げ請求すると、年金は30%減額です。

●損益分岐点がある

約80万円の老齢基礎年金を60歳からもらうと、年金額は約56万円。
65歳までの5年間で280万円受け取ることになります。
しかし、早くもらっても、一定の期間が経過すれば、あとからもらった場合と比べて総額が少なくなります。 それが損益分岐点です。
60歳で繰上げすると、76歳から77歳が損益分岐点となります。
(わかりやすくするために、端数を省略して説明しています。以下同様です)

●具体的には?

60歳で繰上げした場合、76歳までに死亡すると繰上げした方がよかったということになります。
しかし、77歳以上も生きるとすれば、繰上げしない方がよかったということになります。

●誰にもわからない

人の寿命は誰にもわからないのです。
ですから、繰上げがよかったのか、悪かったのか、結果でしかわかりません。

●繰上げの理由

繰上げしたいと思うのは、長生きしなければ年金を受け取れないので、損をしないように早くもらっておこうという気持ちから生まれるのかもしれません.

もちろん、そのお金がないと生活していけないという場合もありますが。

●遺族年金ものぞめない

死亡したあと、家族が遺族年金を受け取ることができるのなら、まだ納得できます。
しかし、国民年金は子どもの養育を主目的にしたものですから、子どもがいない人には、遺族給付はのぞめません。

子どもが一定の年齢になり独立すると、子どもがいないのと同じことになります。
●夫は対象外

夫は遺族基礎年金の対象外です。
華子さんが亡くなった場合、夫が受け取ることができるのは、死亡一時金のみです。
40年国民年金保険料を納めてみても32万円です。

●死んでしまうと損するね!

そうです。
保険料はみんなのために払ったことになります。
●損をしたくないのなら

年金で損をしたくないのなら、長生きすることなのです。
繰上げはむしろ消極的な考えかもしれません。
長生きして年金を受け取ろう、これだけ保険料を払ったのだから取り戻そうという強い気持ちになった方が、生きる力となるかもしれませんね。

……………………………………………………………………………………………
人それぞれですが、どちらかというと、私は「生きていくためのリスク」に備えたいと思っています。
生きていくのにはお金が必要です。生きていく限り、私らしい生活をしたいと思います。
そのためには、死んで年金で損をすると思うより、生き続けた場合に、お金で困らないようにと考えたいのです。

さて、華子さんは?
年金制度に不信はあるかもしれません。
繰上げしたい気持ちはわかりますが、長生きへの備えはできていますか?

……………………………………………………………………………………………
■□■ お知らせ ■□■
ハートフォード生命「セカンドライフの達人のマネー術」では、セカンドライフに役立つ情報を掲載しています。「かんたん年金計算」もご利用ください。
新コラムが掲載されました。(年金コラムを菅野美和子が担当しています)
http://money.hartfordlife.co.jp/index.html

……………………………………………………………………………………………
7月1日号は発行していませんので、お知らせしておきます。
あまりにも忙しくて書けませんでした。