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知っておきたい年金のはなし    第208号 2009年3月2日発行

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年金の給付水準が話題になっています。
厚生労働省が2月23日公表した「公的年金の財政検証」は、現役世代の手取り収入に対する公的年金の給付水準(所得代替率)が50%を維持する内容だということです。

しかし、私は、年金水準の出し方に問題があると思っています。
これは、会社員の夫(40年加入)と専業主婦のモデル世帯の年金です。
しかし、モデルはモデルです。
モデルに該当しない人は? シングルの人は?
夫婦単位でモデル年金を発表するから、誤解を生じるのです。

個人単位では、あまりにも年金額が低すぎるから、夫婦単位でごまかしているようにしか思えませんが、どうでしょう?
(あくまでも、私の感じ方・考え方です)

さて、今日は、複数の障害がある場合の障害年金のお話をしましょう。

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第208号 複数の障害がある場合
★★★ いったいどれだけもらえるの? ★★★
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孝之さんは現在59歳です。
子ども時代のケガが原因で、1級の障害基礎年金を受給しています。
障害はありましたが、会社勤めをし、厚生年金に加入してきました。
がんばって仕事を続けてきました。

ところが、会社の経営もきびしくなり、孝之さんは、いろいろとストレスをかかえるようになりました。
ストレスが重なり、うつ病を発症しました。
休業し療養しましたが、なかなかよくなりません。

定年まであと少しというところで、退職することにしました。
退職後も療養は続きます。
現在は、障害基礎年金だけが収入ですが、医療費もかかり、生活は楽ではありません。

うつ病は厚生年金加入中に発症し、それからずっと病院にかかっています。
うつ病で障害厚生年金を申請すれば、現在の障害基礎年金と合わせて受け取る額が増えるでしょうか。
安心して暮らしていけるように、よい方法がないものかと考えています。

●現在の障害年金

孝之さんは子ども時代のケガで、現在障害等級1級を受給しています。
1級の障害基礎年金は990,100円です。
孝之さんには子どもがいないので、年金には加算額はなく、990,100円です。
妻がいますが、障害基礎年金には配偶者に対する加算はありません。

●20歳前に初診日のある病気やケガ

20歳前に初診日がある病気やケガで、障害等級1級、2級に該当すれば、障害基礎年金をもらうことができます。
20歳前障害には、保険料納付要件はありません。

●所得制限があることに注意する

20歳前障害の場合は、一度も保険料を納付せずにもらうことができるしくみですので、所得制限があります。
孝之さんは、所得制限には該当しなかったので、年金を受給してきました。

●2番目の障害

孝之さんにとって、うつ病は「2番目の障害」です。
厚生年金加入中に初診日がありますので、その2番目の障害により、障害厚生年金を請求できます。

●ふたつの障害を併合

しかし、ふたつの障害年金を全部もらえるということではありません。
1、2級の障害基礎年金をもらっている人に、さらに1、2級に該当する障害が発生すれば、前後の障害を併合した障害の程度による障害年金が支給されます。

●1級となれば

孝之さんの場合は、併合後、1級に該当すれば、1級の障害基礎年金と障害厚生年金がもらえます。
つまり、年金額が増えるということです。

●2番目の障害が3級なら?

孝之さんの場合は、うつ病が3級であれば、1級の障害基礎年金と3級の障害厚生年金との選択になります。
(この内容は大変複雑です。省略していますのでご了承ください。必ず、個々のケースで確認してください。)
どちらの金額が多いでしょうか。

●等級が上がらない場合

前後の障害を併せても等級が繰り上がらない場合は、前後それぞれの障害年金から、有利なものを選択することになります。

●もうすぐ60歳!

現在、障害基礎年金を受給している孝之さんは、すでに退職していますので、60歳から障害者の特例による老齢厚生年金を受給できます。
60歳から1階と2階の年金(定額部分と報酬比例部分)を受給できるということです。
妻があるので、配偶者加給年金額(特別加算があり396,000円)も加算されます。

●仮に1級の障害厚生年金もらうようになったとすると

ふたつの障害を合わせて、1級の障害基礎年金と障害厚生年金をもらう場合を考えてみます。
同じように配偶者に対する加給年金はありますが、障害厚生年金には、配偶者に対する特別加算はありません。
つまり、227,900円が配偶者に対する加給年金額です。

●年金の選択

年金の選択では、課税、非課税も考えておくことが大切です。
老齢年金は雑所得として所得税の対象となりますが、障害年金は非課税です。
また、障害年金は在職老齢年金には関係ありませんので、働いていても、調整されることはありません。

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ふたつの障害がある場合は、大変複雑です。
いろいろなケースがあるので、必ず、社会保険事務所で確認してください。

また、障害年金の請求は、診断書が決め手です。
主治医と相談し、ていねいに診断書を書いていただけるように、よくお話してください。
障害年金に結びつかない場合であっても、障害者の特例により、60歳から定額部分と報酬比例部分の年金をもらえることもあります。
それも含めて、検討することがポイントです。

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