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知っておきたい年金のはなし    第211号 2009年4月1日発行

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当私が社会保険労務士試験に合格してから、何度か年金法改正がありました。

当時の資料、処分せずに持っていましたが、今になって必要になっています。
それは、年金時効特例法で、5年以上前にもさかのぼって、年金が支給されるようになったからです。
当時の法律、計算式が必要になるため、昔の資料がまだ必要です。

それを実感する事例がありました。
記録の間違いにより、約20年前から年金額が訂正されましたが、思ったより、年金は増えなかったのです。
それを調べるのに、当時の資料が役に立ちました。

増えなかった年金には、いろいろとわけがありました。

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第211号 中高齢の特例
★★★ 思ったより増えなかった年金額 ★★★
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昭和7年3月生まれの京子さんは、55歳から特別支給の老齢厚生年金をもらってきました。
当時、条件を満たした女性は55歳からもらえたのです。
京子さんは55歳当時、223月の厚生年金加入期間がありました。

現在、75歳です。
昨年、届いた特別便で確認したところ、19か月の記録が抜けていることがわかりました。
昭和30年代の若い頃の記録です。

幸い、すぐに確認できて、記録の訂正ができました。
そして、10か月後に、まず、5年分の年金がさかのぼって支給されました。

約40万円でした。

あとの15年分については、約半年後との説明に、ほんとうにもらえるのかと心配していましたが、最近、お知らせが届き、振込みがありました。
しかし、最初に受け取った直近の5年分は約40万円だったのに、過去の15年分は約65万円でした。

支払内訳書はありましたが、見てもわかりません。
なぜ、こんなに少ないのかと、京子さんは、不思議でたまりません。
計算が間違っているのではないでしょうか。

●女性は55歳から

京子さんは昭和7年3月生まれですので、厚生年金加入期間20年で55歳から特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができます。

●中高齢の特例がある

京子さんの年代の女性は、35歳以降に厚生年金加入期間が15年あれば、中高齢の特例に該当し、55歳から受け取ることができます。
(男性は40歳以降15年。支給開始は60歳から)

●京子さんの場合

京子さんは55歳時点で、223月の厚生年金加入期間がありました。
中高齢の特例で、老齢厚生年金をもらうことになりました。

●お得な計算方法

中高齢の特例では、女性は35歳以降に厚生年金の加入期間が15年あれば受給できるのですが、その際、定額部分を20年とみなして、計算します。
京子さんは実際には、223月でしたが、240月として定額部分(厚生年金の1階の年金)が計算されていました。
17月分お得だったということです。

●あとで記録がみつかった場合

あとで年金記録がみつかると、報酬比例部分は増えます。
しかし、定額部分はどうでしょう。
中高齢の特例に該当していた人は、もともと実期間より多く定額部分が計算されていたので、定額部分は増えないことになります。

●増額は2ヵ月分のみ

京子さんは、もともと、17ヵ月分、本来の期間より多く年金をもらっていました。
19ヵ月の記録が出てきても、定額部分が増えるのは、2ヵ月分だけということになります。
京子さんの定額部分は1年間に4500円程度の増額でしたが、実質的には2ヵ月しか期間が増えていないからでした。
当時の定額単価からみると、計算は合います。

●在職老齢年金

京子さんは、60歳以降、また働きはじめました。
在職老齢年金による一部停止に該当している人でした。
当時の在職老齢年金は、標準報酬月額により、2割、4割などという計算方式で、年金をカットしていました。

●年金が増えて、カットも増える

結局、年金額は増えましたが、在職老齢年金のしくみでカットされる年金も増えました。
ここでも、思ったより、増えない年金となるわけです。

●年金額の再計算

京子さんは、55歳時点、65歳時点で年金額が計算されていますが、その間にも、お勤めを変わったりしています。
60歳以降は、退職改定もありました。
(退職改定とは、退職して1ヵ月経過後、年金額が再計算されることです)

●当時の計算式で

その当時の条件で年金額が再計算され、そして、差額が支給されるので、過去分は、思ったより、少ない年金となってしまったのでした。

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京子さんは現在、293月の厚生年金加入期間があります。
現在の記録だけをみると、中高齢の特例など関係ないように勘違いします。
しかし、55歳で年金をもらいはじめたときは、中高齢の特例で計算されていたのです。

もれていた年金記録が見つかった場合、すぐに、新しい年金額は計算してもらえます。
ですから、どの程度増えるかは、すぐにわかります。

ただし、「増える金額 × これまでの年数」ではないのです。
当然、年金額は各年度によって異なりますが、それ以外に、年金をもらう条件は変化してきますし、法改正もあります。
総額でいくら受け取れるかは、簡単には言えないわけですね。

このケース。
以上のようにまとめてみればわかりますが、実は、私が理解できるまで、時間がかかってしまいました。

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